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パズドラの隆盛と売り切りゲームの敗北。ゲームで振り返るiOSの2012年(前半)

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半年でサイクルが変わると言われていた2011年のiPhoneゲーム業界。
しかし、昨年はそれどころではなかった。
3ヶ月で前のゲームが古くなる異常な改革期。

2013年はどうなっていくのか。
過去を知ることで未来もわかる。
ということで、激動の2012年iOSゲーム業界を発売順で見ていき今年のiOSゲームの行方を占ってみたい。
2月:激動のiPhoneゲームを予感させる2タイトルがリリース
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1月こそ動きのなかったゲーム市場だが、2月はじめに2012年最初の大作『ダライアスバーストSP』がリリースされる。
単に専用機からの移植ではなく、完全なアップグレード移植。

このゲームを見てiPhoneゲームのクオリティとしても全体に抜け出ており「今年のiPhoneゲームは専用機並みにすごくなる」という予感を抱いた方も多かったのではないだろうか。
レビュー:これがゲーム機クオリティだ!ダライアスバーストSP iPad持っている人は全員買え。 


しかし、「今年のiPhoneゲームは家庭用機並」という流れは同じく2月にリリースされた『パズル&ドラゴンズ』によって変わる。
既存のカードバトルの「ポチポチ」と揶揄されていた部分をパズルに置き換え、より実力が反映されるゲームとしての形をとった。

基本無料+単調なカードバトルに飽きていたプレイヤーの心を捉え、一気にヒット。
有料で出すつもりが、あまりにヒットしたので無料から動かせなくなったというが、アプリの作りから見て最初から無料にするつもりであったのは間違いないだろう。

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パズドラのインパクトはプレイヤーにも大きかったが、なにより開発現場でも大きかった。
「あ、ゲーム要素を組み込んでも大丈夫なんだ」
という事をパズドラが立証したので、これ以降はゲーム要素を加えた企画が通るようになった。
現在は度重なるアップデートで様々な欠点が改良されており、下記のレビュー記事は必ずしも当てはまるものではない。
レビュー:マッチパズル+RPGの黄金パターンをきっちり作ったハマりゲー パズル&ドラゴンズ だが…。


3月:『CHAOSRINGSII』の敗北宣言
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続いて3月に発売された、国産買いきりゲームの大作『CHAOSRINGS II』。
iPhone3GSまで対応しているくせに、前作をはるかに上回るグラフィックで「さすがのスクエニ」を魅せつけてくれた。

内容的にも申し分なかったが、売上を見ると発売と同時に値下げした初代『CHAOSRINGS』に売上本数では勝てず、売上額では『パズル&ドラゴンズ』に及ばなかった。

プロデューサーの安藤氏はファミ通Appのスマゲ革命上で、こう語っている。

一瞬でも1位は取れると思っていました。この一件は、“ものの売り方”について、今まで以上に考えさせられる良い機会となりました。

そして、『CHAOSRINGS』の次回作は無料ベースとなることを宣言。
売り切りゲームの王と言っても過言ではないスクエニのRPGが、基本無料には届かない。
「リッチな売り切りゲームがくる!」という流れに影がさす。

レビュー:CHAOSRINGS II 全てが前作以上…もう褒めるしかない


4月:スクエニからポチポチゲー。
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4月にリリースされたスクウェア・エニックスの拡散性ミリオンアーサー。
「スクエニがつくればソーシャルゲームもRPGになる」という安藤氏の発言と裏腹に、結局ゲーム内容は既存のポチポチゲーと変わらず、音楽と見た目が豪華なだけで終わってしまった。
運営はかなりひどく、課金者を馬鹿にした対応がスクウェア・エニックスという大ブランドとは思えないもの。
かなり残念と言わざるをえない。
しかしながら、今でも売上上位を走るアプリでもある。
売上を考えれば、スクエニですらポチポチゲーを作らざるをえないのか。

レビュー:拡散性ミリオンアーサー 期待はずれの話題作 メディア・業界の方へ『拡散性ミリオンアーサー』の不誠実な運営に私は怒っています。
ソーシャル・基本無料ゲーム時代に対応していくということ〜ミリオンアーサー運営批判記事を書いた理由〜


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あと記録しておきたいのはゲームロフトの完全オリジナル新作『SHARKDASH』。
物理パズル系として、かなり練られた面白いパズルなのだが思ったよりも振るわなかった。
かなり良くできているので、気になったらDLしてみて欲しい。
このころから「ブランドのない買い切り完全新規タイトルは難しい」ということが日本だけでなく、海外でも言われ始めていた。
レビュー:SharkDash 軽くAngry Birdsは超えた。物理パズルの新定番。


5月:クソゲーでメディアに衝撃が走る
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そして5月、「元スクウェアエニックスのスタッフによる豪華RPG!」という謳い文句で『ボーダーウォーカー』リリース。
各メディアで前評判を煽りまくった(これはゲームキャストも含む)が、ストーリー以外はさっぱりだめ。

ゲームメディアの中には発売後も予定調和的に「おすすめ」などと記事がでるものもあり、ネットユーザーの間でメディアの対応に疑問の声が上がった。
このなかで「元スクエニスタッフ」という看板に致命傷を与え、各メディアがスタッフだけで高評価を与える流れに待ったをかけた。
スクエニ坂口氏の『PARTY WAVE』も、この事件がなければもっと扱いが大きかっただろう。

特にイチオシしていた(発売後もおすすめとして取り上げていた)ファミ通Appのレビューには、その後マイナス点が書かれるようになる。
これはある種歴史的事件と言えただろう。
レビュー:ボーダーウォーカー ありえない豪華スタッフによる、ありえないゲーム

また、『ボーダーウォーカー』ショックの後でインパクトが薄まったが、スクウェア・エニックスの『アナタ図書館』もかなりひどい。
レビュー:アナタ図書館 アプリの質以前に、小説がひどすぎた


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捨てる神あれば拾う神あり(?)。
クソゲーで激震が走った5月に、ゲームロフト渾身の1作『N.O.V.A.3』がリリース。
最高峰のグラフィックとオンライン対戦で好評を博した。
レビュー:N.O.V.A. 3 - Near Orbit Vanguard Alliance 堂々のモダンコンバット3超え!


6月:ガーディアンクルスが出た
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これはゲームキャスト関連だが、ちょこちょこと良作がリリースされていた中で、スクエニ第2のソーシャルゲーム『ガーディアンクルス』がリリース。
まだポチポチが圧倒的に主流のなかでゲームっぽさを前面に押し出し、運営も比較的良心的と『ミリオンアーサー』と対照的であり、パズドラほどでないが業界が変わっていることを予感させた。

課金についても実質ガチャのハントがメインとはいえ、1ハントに2分弱かかるのでアツくなった湯水のごとく瞬間的に金を消費することは難しい設計。
随所でゲームとして守るべきところを守っており、ゲームメーカーの意地を見たためガークルの連載記事が現在まで続くに至る。
レビュー:ガーディアン・クルス 高い完成度、ゲームメーカーの心意気を感じるソーシャルカードバトルゲーム


1月は動きがなかったが、2月から5月まで次々と話題・問題が持ち上がった2012年。
特に2月と3月はその後を決める事件だったと言ってもいいだろう。
総括と、後半はパズドラの隆盛と売り切りゲームの敗北。ゲームで振り返るiOSの2012年(後半)へ。

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