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新たなインディーゲーム展示会『東京ゲームダンジョン』はゲーム開発者のための「締め切り」にしたい。主催・岩崎匠史さんインタビュー

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2022年5月、突然に発表されて始まった新たなインディーゲームのイベント「東京ゲームダンジョン」。
東京産業貿易センターで開催されたこのイベントには、80サークル、一般来場者650名、出展者などを含めて計800名が参加し、盛況だった。
このイベントはなぜ始まり、どこを目指して進むのか。
インディーイベントが増えてきた昨今、何をもって差別化していくのか。
イベントの主催の岩崎匠史さんに伺ってきた。

さて、インタビュー本編に入る前に少しイベントの様子をレポートしておこう。
現地で感じたのは、広い会場を生かした快適な環境づくり。
出展側のテーブルは幅・奥行きともに広く、PCを配置して十分にスペースの余裕がある。また、背後のサークルと余裕を持った距離を保っており、後ろのスペースのサークルと接触する事故も起きづらい。
通路も広く、他のゲームを試遊しているプレイヤーが邪魔になるようなことはなかった。
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▲まさに、コロナ下に立ち上がったイベント。 
 
会場の巨大モニターでは各サークルのPVが定期的に流れている。
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そのほか、会場には参加サークルのペーパーを集めたチラシ置き場があり、気軽にゲームを探せるのもうれしかった。
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ホワイトボードに参加サークルや一般参加者がメッセージを残す落書きコーナーも。
現地でしか味わえないアナログ感もまた面白かった。
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そろそろ本題に入ろう。
今回は、始めての開催と思えないほど快適なイベントの主催となった岩崎匠史さんに東京ゲームダンジョンを立ち上げた理由、目指すところをうかがってきた。
 
岩崎匠史さんプロフィール
 ゲーム作りが趣味で、Unity開発者が自主的に集まって同じ場所で、黙々と開発する「もくもく会」という開発イベントを5年ほど主催。
さまざまなインディーゲーム展示イベントに「もくもく会」名義での出展も行っており、1ブースでもくもく会メンバーによる多彩な展示が楽しめることで親しまれている。
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寺島:
早速ですが、「東京ゲームダンジョン」を立ち上げた理由についてうかがえるでしょうか。
 
岩崎:
ゲームを作ったら、発表の場があると楽しいじゃないですか。
誰もが気楽に参加できて、安心して発表できるハードルの低い場所を作りたかったんです。
安心感というのは、あとはイベントが中止になったら連絡があって出展料が帰ってくるということも含めて(笑)
そしてなにより、それを目指して開発すると締め切りができるというのが理由ですね。
 
寺島:
締め切りですか。
 
岩崎:
人によると思うのですが、インディーゲームの開発はダレてしまうことも多くて、外部の圧力による締め切りで開発が進むことがあると思うんです。
イベントに出展するから作らないといけない、すると開発が進む。
少なくとも自分はそういうところがあって、締め切り=イベントが欲しい(笑)
 
寺島:
なるほど、ゲームイベント=締め切り。
過去、私が岩崎さんにイベント取材したときも「イベントに無理やり間に合わせました」というようなことをおっしゃっていましたね。
岩崎さんは今年から始まったKONAMIさん主催のインディーゲーム展示会「Indie Game Connect」も手伝ってらっしゃいますが、締め切りを増やすために「東京ゲームダンジョン」も同時に立ち上げたのでしょうか。
 
岩崎:
流れですかね。
最初は自分自身がインディーゲームの展示会をやる考えはまったくなくて、「どこか企業の人と一緒にできたらいいなあ」っていう考えがあったんです。
それでコナミさんに「我々(インディー開発者)は展示会を求めているのです」と話をして、「やろう」ってなって「Indie Game Connect」のお手伝いをさせていただきました。 

寺島:
岩崎さんが主催している開発イベント「もくもく会」では、銀座の会場がKonamiさんのビルでしたから、その流れでしょうか。

岩崎:
そうです。
そして、それを手伝っているなか、「同人的なインディーゲームイベントもやりたいなぁ」という気持ちになってきまして、やってしまえと。 

寺島:
イベント1つじゃ足りなくなってしまったんですね。
同人的な、というのはどのようなものでしょうか。

岩崎:
インディーゲームは自由と言われますけど、イベント主催やスポンサーが望む形があって、作品のクオリティチェックが入っている展示会も増えているじゃないですか。 
いずれにせよ、イベント主催側がクオリティチェックして良し悪しを判断し、出展可否をきめることをしたくなかった。
インディーゲームなんだから、他人の評価を気にせず好きに作ったものを気軽に出す場というのも増やしたかった。

寺島:
同好の士で集まる草の根活動な同人ですね。

岩崎:
そうかもしれません。
とにかく「みんな、好きに作ればいいじゃない」っていうことを最大限に尊重したかった。
当然、法律や会場の規則に触れるようならダメですけど、ルールの範囲内で表現の自由は最大限に尊重したいというところです。

寺島:
KONAMIさんのイベントは審査があったように見えますが、まさか方向性の違いなどで喧嘩別れした……などということはないですよね。 

岩崎:
KONAMIさんとは関係も良好ですし、イベントは今後もあれば手伝っていくと思います。
ご安心ください(笑)
締め切りはいくらあってもいいし、いろいろなイベントがあって困ることはないじゃないですか。

寺島:
ちょっと安心しました(笑)
方向性について、同じインディー・同人ゲーム展示即売会であるデジゲー博に似ていると感じました。デジゲー博に近い形の展示会を目指すのでしょうか。 

岩崎:
デジゲー博には触発されていますし、似ていると思います。

寺島:
「東京ゲームダンジョンならでは!」というところ、目指すところはありますか? 

岩崎:
独自色ではないですが、ゲームという表現を発表する場所として努力をしたいと思っています。今回は80サークルの申し込み枠に対して、145の申し込みがありまして。
結局、手続きに問題があったサークルからさらに抽選などで4割ほどを落とすことになってしまって、すごく心苦しいというか。
まさか、初めてのイベントそこまで集まると思ってなかったんですよね。
次回は落とさなくても済むように、もう1つスペースを借りたので広さが2倍になります。

寺島:
倍ですか、ワクワクしますね! 

岩崎:
ぜひ、開発者の皆さんに参加していただけたらいいな、と思っています。
あとは、締め切りとしての存在ですね。今回はビットサミットやコミックマーケットなどとかぶっているという意見が多かったのが反省点でした。
この時期の締め切りはもう足りていたんです。
なので、8月、9月はやめます。だらだら開発しがちな年末年始に1つ締め切りを作って追い込むために、次の開催は1月と決めました。

寺島:
開発者の締め切りとしてのイベントを目指し、空白期間を埋めていくイベントというわけですね。
しかし、イベントを主催している岩崎さんは締め切りをもらってもゲームを作る時間がなくなってしまうでは……。

岩崎:
今回は初めてだったので私自身は作品を出展してないんですけども、来年の2回は自分も出展したいなと思って、主催が自分の作品を展示していることを締め切りとして設定したいと思っています。

寺島:
来年に2回ですか!?

岩崎:
デジゲー博、ビットサミット、TOKYO GAME SHOW、締め切りは年に何回あってもいいと思うんですよね。
今回初めてなので試行錯誤でしたが、コミュニティの力を借りて効率化できると考えています。手伝ってくれる人の負荷もかからないようにできる。
表現の自由を尊重した同人的なイベントを行い、締め切りにしてもらうのがイベントとして目指すところ。
運営を効率化して、自分のゲームを作り切るのが個人としての目標です。

寺島:
なるほど。ご自身が開発者だから、自分が出展したいと思えるイベントをやる。
そこに出展したい。筋が通っていて納得感があります。

岩崎:
それにデジゲー博があって、ビットサミットがあって、Indie Game Connectがあって、Tokyo Game Showがあって、それぞれの締め切りに向けて開発すればみんな開発速度も上がるはず(笑)
そうなるといいと思っています。

寺島:
ありがとうございました。
イベント、岩崎さん個人のゲーム開発も、ともに今後を楽しみにしています。

以上。

岩崎さんの話を聞いていて、また1つ安心して参加できる楽しいインディー・同人ゲームの展示即売会ができたのだな、ということが感じられた。
「東京ゲームダンジョン」は、低廉な料金と充実した設備で、気軽に作品を出展・試遊できるイベントを目指して次回は2023年1月中旬に開催予定となっている。
詳細は2022年9月に発表予定となっているので、ここを締め切りに開発するのもよさそうだ。

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