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レビュー:ボーダーウォーカー ありえない豪華スタッフによる、ありえないゲーム

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タイトル ボーダーウォーカー
ジャンル アドベンチャー
価格 900円
アプリ内購入 なし
日本語対応 あり
販売元:Crunge Products Co., Ltd. この開発者による他の App を見る | Version:1.0 | GameCenter:なし | 対応機種:iPhone / iPod touch | レビュアー:トシ
評価:1.5(ひどい)
素晴らしい音楽
独特の世界設定と先が気になるストーリー
ストレスのたまる戦闘、しかもやたら回数が多い
ダンジョンが複雑かつわかりづらい
システムが設定を生かしきれていないというか殺している
いにしえの魔法使いによって昼と夜に分断された世界を行き来する、ファンタジックな世界観を持つアクションアドベンチャー。
元スクエアの豪華スタッフが集結して作ったということで、発売前後にはGame Watchファミ通などでインタビュー記事がこれでもかと華々しく載っていた。

作曲の 植松伸夫 氏(『ファイナルファンタジー』シリーズなど)を始めとして、どこを見渡してもスクエア・エニックスで活躍された「どこかで見たことあるぞ?」というドリームチーム。

最初にある、世界背景を昔話調で語るムービーの雰囲気も良く、盛り上げる音楽はさすがの一言。
なお、このあたりがゲームの頂点であとは下り坂。
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この世界は昼と夜の2分されており、昼の住人は夜になると消えてしまい、夜の住人は逆に昼には消えてしまう。
月食の日に生まれ、どちらの世界でも生活できる特別な存在である「闇の子」を主人公にゲームは進んでいく。
ストーリーはアドベンチャー仕立てでキャラクター同士の会話によって進む。
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一区切りする度に地図上から行きたい場所を選び、場所によってはまたストーリーが進行するという昔なつかしのアドベンチャー形式。
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会話が発生しない場合は「クエスト」か「コロシアム」での戦闘を繰り返しすと、画面右上の「クエストゲージ」を貯まり、「メインシナリオ」が選択できるようになる。
ストーリーを進め、移動して、ゲージを貯める、というのがゲームの基本。

時には3Dのダンジョンを探索したり戦闘になることもあるが、レベルアップなどの要素はなく、アドベンチャーとしての要素が強いといえるだろう。
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で、このゲームの何が良いかというと、ストーリーと音楽。
そして、悪いところはそれ以外のゲームシステム。
タイトル画面からして「はじめから」と「始まりの物語」と2つあり、最初にどれを選べば良いのかわからない。
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ゲームを始めれば「クエストゲージ」が本当にだるい。
コロシアムで戦って稼ごうにも、そもそも戦闘が本当にだるい。
擬似リアルタイムバトルで左右に敵とプレイヤーのHPが緑のゲージで表示され、その下の白ゲージが満タンになると行動開始。
ゲージがたまるまでは常に間があり、無意味に待つ時間があってテンポが悪い。
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9つに区切られたマス目に対し、タッチやスライドでコマンドを入力するとそれに応じた技が出る。
入力受付時間がそれなりにあるため余裕を持って技を入力できるが、入力完了のサインがなぜか「四本指で同時に画面タッチ」。
難易度が高すぎるのでときおり失敗するし、入力完了をしないと無駄に待つしで理不尽感漂う。
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そして、技の演出が微妙に時間を食う上に飛ばせないので、やはりテンポを損ねている。
なお、コロシアムでの戦闘はクエストゲージが上昇する以外にメリットがない。
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そこでもう1つの「クエスト」で貯めようにもゲージは雀の涙ほどしか増えない。
何よりも突っ込みたいのはその反応のなさ。
ほとんどの場合何をするでもなく完了し、「いまどきソーシャルゲームのボタンを押してももっとマシな反応があるぞッ!」というぐらい味気ない。
そして、なぜか現実時間で3分間またないと再度受けられない。
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とはいえ、コロシアムでバトルするぐらいなら現実時間で3分待つ方が精神的苦痛は少ないので、待ってゲームを再起動することになる。
メインシナリオを進めるために、護送されている最中の主人公が方々移動して「酔っぱらいの話し相手」をしたり、「草むしり」したり…雰囲気ぶち壊し。
お分かりのとおり、この時点でゲームへの没入度は最悪のレベルである。

それを超えて何よりも苦痛なのが、ダンジョンパート。
大昔の3Dダンジョンばりに複雑で、マッピング必須(もちろんオートマップ機能はない)。
しかも、移動の位置関係もわかりづらい。
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なによりも、前述の面倒な戦闘が2〜3歩ごとに発生すること。
誰がオモシロイと思ってこれを出したのか、まったく理解に苦しむ。
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昼と夜を移動する「時境を超える」という能力も「総当りで正解の場所を探すとき、昼夜2つ分さがすので2倍面倒になる」程度にしか役だっておらず、有効活用されているか疑問。
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全体としてはコマンド総当り式で、無駄に難しくて不親切だったPC98時代のゲームを思い出す内容。
ドリームチームが集まって、なぜこんなゲームが出てきてしまったのか。
これは予想だが、そもそもすごいゲームを作る気がなく「退社した仲間が集まったから好きにやるか」と好きに作ったら彼らの青春時代にあったPCゲームっぽいものができ上がったのではないだろうか。
そう思うと、選択肢があるようでドラクエのように一本道なのも納得できるし、古臭いのも納得できる。
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だが、巨匠が集まってしまったのでインタビューなどメディア露出が激しくなり、こうやって大勢の目の前に現れてしまったような印象を受ける。
本来、作って満足して終わりで、ひっそり陽の目を見ないべきゲームとして作られたような気がする。
そもそも、FFのようなゲームは大勢で作るもので「あの名作を作ったチームが全員で作りました」ことでもない限り、同じような面白さは担保されないので、スタッフの一部を抜き出して騒ぐこと自体がもう時代にそぐわないのだろう。
とは言え、これだけ話題になってしまったし「買うな!」という警告を発する意味でも評価は1.5にしておきたいと思う。

とりあえず、サントラが1000円とかで出たら買い!で。

ボーダーウォーカーの詳細・DLはこちら(itunes)

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