Polygonの記事 によって明かされたところによると「Appleは有料アプリが売れないことに苛立ちを感じ」ており、iOSに移植中のゲーム『The Banner Saga』の Stoic に高価格帯でリリースすることをアドバイスしているようだ。
『The Banner Saga』は美しいアニメーションとストーリー性、作り込まれたゲームの内容が評価されている戦術シミュレーションで、iOS版は今夏発売予定となっている。
(ゲームの紹介はこちら:The Banner Saga - プレイヤーの選択でストーリーと難易度が変わる戦術シミュレーション、今夏リリース。)
開発インタビュー記事の中で、Stoic の創立メンバーの John Watsonさんは Apple からアドバイスを受け、ゲームを高価格の売りきりでリリースすることを指示されたことを明かしている。
「Appleは、モバイルアプリに対して「お金を払いたくない」という考えが根付いていることにいらだっています。」
「AppStore のユーザーは可能な限り少額の支払いですませたいと思っている。
彼らは$4(約400円)のゲームについて、法外なほど高価であると考えています。
これは彼らの生活スタイルを考えればおかしなことです。
彼らはiPadに$600を支払い、コーヒーに$4を支払い、ランチに$20を支払います。
しかし、ゲームに$4、$5を費やすのは命がけの決定なのです。
私もそれがいらだたしい」
『The Banner Saga』のPC版の定価は$25だが、この価格帯のアプリの移植は$3〜$6程度でリリースされるのが通例だ。
それは『The Banner Saga』の価値が低いからではなく、AppStore では高額アプリがほとんど売れないからだ。
昔は低価格でも利益が出たが、今はそうはいかない。
スマホの性能が高くなるにつれて開発費も高騰しており、より売上げを増やさなければ開発費が回収できないのだ。
iPhoneが発売された頃は、開発費の増加する以上にスマホのユーザー数が増え、売上げを伸ばしてくれていた。
しかし、今やスマホは普及し尽くし、ユーザーが増えつつある新興市場の中国は違法コピーが多い。
その多さたるや、有料アプリが商売にならないほどだ。
(参考記事:Dead TriggerのAndroid版、違法コピーの多すぎたため基本無料アプリへ)
しかも、ユーザーもだんだんと有料よりも広告付き無料を好む傾向が出てきており、有料アプリの売上げも年々減少している。
(参考記事:スマホ有料アプリ市場、2012年から2013年の1年で25%以上減少していることが判明)
基本無料ですべてをカバーすればいい、と思う方もいるかもしれない。
しかし、基本無料では作れないアプリもある。
例えば『Monument Valley』のように短く終わる映画のようなゲーム、『Chaos Rings』のようにストーリー主導でドラマチックに終わるRPG、プレイヤーの腕がすべてを決めるアクションゲームは基本無料とは相性が悪く、基本無料で出してもまず利益は出ない。
子供向けのアプリも広告や追加課金のない方が望ましい。
さらに、基本無料では消えてしまうアプリには Apple が好むアプリも多くある。
Apple Design Awardsなどで表彰されるアプリは、ほとんどが有料アプリか広告のない無料アプリだ。
App Storeのおすすめにもその傾向が見られる。
おそらく、そんなアプリを守るため、Apple は自社主導で高価格・高品質のゲーム市場やアプリ市場を作り上げたいと願っているのだろう。
ユーザーとしては安くて良いアプリが出れば嬉しい。
しかし、市場の原理に任せておいては日本市場のように有料アプリは壊滅してしまう。
Android では完全に死滅している有料ゲーム市場を保てるのか、Apple の手腕に期待したい。
Appleの狙いの考察についてはこちらをどうぞ→有料市場を復活させたいAppleの狙いとは。有料アプリがAppleにもたらす利益を考える