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Apple Arcadeはまだマニア向けだが、普及に向けて急速に発展している。Appleの定額ゲームサービス『Apple Arcade』開始から2カ月、全100本を遊んだゲーマーの感想

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AppleがiOS13の目玉として発表した定額遊び放題のゲームサービスApple Arcade。

スマホでは無料ゲームに押されて、ゲーム機のような買い切りゲームが苦戦している。そこで、600円で遊び放題のパッケージとして大々的に有料ゲームを提供し、そういったゲームがもっとスマホで気軽に遊べるようにと作られたサービスだ。

だが、その存在は気になっていてもまだ手を出していない方も多いのではないだろうか?

そんな方のために、サービス開始から2カ月がたち、予定通り100以上のゲームが遊べるようになった節目に、Apple Arcadeの全100本以上をすべて遊んだ私の視点から、このサービスの感想を書いていく。


まず、Apple Arcadeのサービス内容についておさらいをしておこう。
Apple Arcadeは月額600円(初月無料)で100以上のゲームが遊び放題のサービスで、多くのゲームがコントローラー、クラウドセーブに対応している。サービスに加入すると iPhone / iPad / Apple TV / Mac で同じゲームを遊べて、外出先ではスマホを利用してゲームを遊び、帰宅後は続きをMacなど別のハードで遊ぶことも可能。
扱っているゲームはオフラインでプレイ可能(オンラインモード除く)で、追加課金なしの買い切りタイプとなっている。
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▲同じゲームを異なるハードで、同じセーブデータを共有して遊べる。

あまり知られていないが、Apple Arcadeのゲームラインナップは厳選されていて、豪華だ。
Apple Arcadeで提供されるゲームはAppleが厳選した作品だけで、Android向けにリリースできない。ゲーム機やPCでは発売できるが、Apple Arcade版が最初にリリースされる必要がある。
つまり、Apple Arcadeのゲームをスマホ・タブレットで遊びたければiOS端末が必要で、PS4やNintendo Switch、PCで出る可能性はあるが、一番最初に遊べるのは(同時はある)Apple Arcade。
実際、海外ゲームは日本発売が遅れることもあり、『SAYONARA WILD HEARTS』など、Apple Arcadeだけで先行して遊べた作品も出ている。
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他の定額ゲームサービス向けに提供できないという縛りもあるので、マイクロソフトのXbox Game PassやEAのOrignなど、競合の定額サービスで遊ぶこともできない。
つまり、Apple Arcadeに提供されているゲームを別の場所で遊ぼうと思ったら、お金を払って購入するしかない。

・月額600円(初月無料)で100以上のゲームが遊べる
・リリースされるゲームはAppleの眼鏡にかなった一定以上のクオリティのゲームだけ
・ゲームはオフラインで遊べて追加課金なし
・Androidでは遊べず、他のハードなどで出るときもApple Arcadeが最初に遊べる

Apple Arcadeの特徴を目立つところだけまとめると、上記のようになる。

Apple Arcadeはコストパフォーマンス良好

サービスの概要を解説したところで、サービスを利用した感想を書いていく。
何はともあれ、ゲームを遊ぶサービスなのだから、重要なのはゲームラインナップだ。これについては、600円と言う価格と比べるとかなり満足感はあった。
カプコンの『深世海 -into the Depth-』や、『Oceanhorn 2』は見た目も内容も豪華で、実際にゲーム機やSteamで販売されたら3,000円クラスの作品の手ごたえだった。
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▲深海での冒険を描く深世海。カプコンの技が光る良作。

小粒なゲームも良いものが多い。
『Dungeon Raid』好きがハマるパズルバトル『Grindstone:グラインドストーン実際のところこれがApple Arcadeで自分のNo1ゲームだ)、渋いゲームブック風アドベンチャー『Over the Alps』など、通りに派手さがなくても特徴があるゲームが揃っている。
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サービス開始後の追加ゲームも良かった。
エッシャーのだまし絵のような世界に入り込むパズル『Manifold Garden』、『Threes!』作者の新作RPG『Guildlings』(これはまだ第1章のみ)、秀逸な世界観の脱出ゲーム『Discolored』など、いくつかお気に入りのゲームが次々と登場している。
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▲色のない世界に色を取り戻す『Discolored』。かなり好き。

追加されたゲームを定価で換算すると、1作当たりPCであれば1,500円程度のもので、スマホで出たとしても600円はする。
となると、Apple Arcadeの月額600円はお得だし、常に新しいスマホゲームを探している自分としては、退会する理由がない状況となっている。
ヘビーな買い切りゲーム好きなら、加入する理由は十分にある。

まだサービスは発展途上

ただ、あくまでこれは私の感想。
公平に言うならば、現在は発展途上で、ゲーマーがみな加入したいと思えるサービスには遠い。
まず、先に書いたことと反するようだが、Apple Arcadeにはゲームが足りない。
ゲーム定額サービスに加入する理由は「どうしてもやりたいゲームがある」、もしくは「気になっているゲームが数本ある」になるはずだ。しかし、Apple Arcadeは宣伝費用などがないインディーゲームの集合だから、加入動機になる“気になるゲーム”があまりない。

カプコンの『深世海』や、スマホの人気作続編である『オーシャンホーン2』はあるが、多くの人が「気になるゲームが数本ある」状態になるには、そのクラスのゲームが10本以上は必要だろう。
現状、興味はあるが加入をためらっているゲーマーは多いだろうし、その程度のサービスにとどまっている。
となると、「気になる」を作り出すために「Apple Arcadeのゲームはこんなに面白いですよ」と期待感を持たせる宣伝体制が必要だが、Appleにはその宣伝体制がない(もしくは、準備が整うまで抑えているのかもしれない)。

サービス加入後の問題もある。
いま、App StoreはApple Arcadeのサービスを利用するにあたって便利ではない。100ものゲームが遊べるが、App Storeを見ても自分に合うゲームを探しづらい。
メディアを見ても通常の有料ゲームよりもApple Arcadeのゲームは露出が極端に少なく、ゲームを探すのが面倒だ。
また、プレイ人口が少なく、ゲームに詰まるとそのまま攻略情報がなかったり、オンライン対応のゲームだとオンライン人口が壊滅的に少ない。

これらを総合すると、Apple Arcadeは価格以上のゲームを提供しているが、現状ではわざわざゲームキャストのApple Arcadeゲームリストを確認しに来るような、自分からゲームを探すプレイヤーにしかお勧めしづらいというのが今のApple Arcadeの評価になる。

いずれ問題は解決される

しかし、Appleは明確にこれらの問題を克服しようとしている。
App StoreのApple Arcadeのタブは、少しずつ改良されていて、ゲームを探しやすくなっている。最近では新作が出ると会員にはiOSの通知機能で知らせがくるようにもなった。
気になるゲームが少ない問題も、FF生みの親である坂口さんの『ファンタジアン』、シムシティのウィルライトさんの新作などが独占で開発されており、いずれ解消されるだろう。


『Samolost』などを開発したAmanita Designの新作『Creaks』など、これまでApple Arcadeにゲームを提供してきたスタジオの作品もまだまだ予定されており、ゲームにも厚みが出てくることが予想される。
誰もが気になる作品、インディーゲームマニアが気になる作品、時間がたてば、どちらも揃う予定だ。
広告態勢についても、Apple ArcadeがリリースされてからしばらくしてApple自身がゲームのプレスリリースを出すようにもなり、前進しようとしている様子が見て取れる。


Apple Arcadeのコストパフォーマンスは素晴らしいし、スマホのゲームラインナップを増してくれるゲーマーにとってありがたい存在だ。
今はマニア向けの域を出ない。が、半年後は恐らく違うというのが私の見立てだ。
十分にサービスが充実したら改めてApple Arcadeのレビュー記事を書くと思うので、そのとき多くの方には加入の判断をして欲しいと思っている。

もちろん、現状でもApple Arcadeに興味があるという(私のように)やる気あるゲーマーの方、600円なら別に惜しくないという方ならApple Arcadeに加入しても損はない。
加入したら、下記を参考にゲームを探してみて欲しい。

Apple Arcadeのおすすめゲーム10選