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奇抜・かっこ良ければ何でもあり。精神世界での戦いを描くMV風ゲーム『Sayonara Wild Hearts』レビュー

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高品質なアートを基盤として、数々の良作を送り出しながらも「もはやスマホゲーム開発はゲーム機より難しくなった」と休止を宣言したSimogoが、Apple Arcadeの登場と共に帰ってきた。
記念すべき復帰第一作は、男に振られて歪んだ少女の精神世界に入り、自らの心と対峙するポップ・リズム・アクションゲーム『Sayonara Wild Hearts』だ。
ポップでノリノリなBGMと共にステージ演出が展開する様子はまるでミュージックビデオ。
ゲームシステムは古いが、Simogoのアートがそれを補う映像作品に近いゲームだ。

本作はネオン風フレームで構成されたステージを少女が走行し、コース内に散りばめられたハートを集めてスコア稼ぐというもの。
障害物に触れずにハートを取り続けるとコンボが発生し、スコアがどんどん上がっていく。
そして、ステージのラストではスコアに応じてブロンズからゴールドまで評価が行われる。
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映像に合わせて変化はあるが、操作としては左右スワイプの移動でハートを集めるものがメイン。
基本はハートや障害物の位置を覚えて駆け抜ける古典的なランゲームのシステムを採用している。
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つまり、根幹のゲームシステムは古い。
しかし、演出のレベルは別だ。というか、演出こそがゲームの本体。
音楽に合わせてシーンが展開し、カメラは目まぐるしく動き、問答無用のスピード感でゲームが展開する。そこにテンションがぶちあがる。
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テンポだけが信じられないほど良くて、意味不明。
キメの瞬間に無意味なポーズをとる主人公も敵もカッコかわいい。
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▲キメていてもどこか抜けていてかわいい。

精神世界を描いているだけあって、描写も展開も完全に自由。
とくに好きなものを紹介しておくと、このVRゴーグルマン(勝手に命名)。カセットをVR機器に差し込むと……。
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なんと、ゲームの世界に入ってシーンが進む。
操作としてもここでは簡易な避けシューティングになり、ゲーム内でも異質なシーンだ。
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その他、何かキメた感じでキノコステージに迷い込んでキノコを食べて巨大化し、敵が突然に分裂し……とにかく奇抜。そして、かっこ良ければ何でもあり。
音楽や見た目のセンスが合えば、これだけで楽しめるゲームではある。
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また、物語がわかりづらいので私の解釈となるが……オープニングで少年と見間違えるほどボーイッシュでな少女の内面に、敵ボスとして登場するよりカッコいい自分、より女性的なファッションの自分が登場し、内面と出会って戦い、融合していく物語としても興味深く見られた。
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ただ、それでも「システムの根幹が古い」のが泣き所で、音楽とプレイヤーの操作の同期が弱く、近年の音に凝ったリズムゲームと比べて映像とプレイヤーの一体感で見劣りする。
そのため、障害物に触れるて直前からやり直しになると、「攻略してゲームの映像を進めている」というより、「MVが中断して再生しなおす」ようなストレスが先立つ。
このゲーム性で繰り返し遊ぶぐらいなら、見ていた方がいい……そう思わされてしまうことが何度かあった。

その気持ちは、タッチ操作で遊ぶと「やってられない」ほどに達する。
基本的に全ゲームがコントローラー対応しているApple Arcadeなので、私自身はコントローラーで遊ぶ前提で評価6としたが……タッチ操作なら後半まともに遊ぶのもキツイのも知っている。
無理なシーンをスキップすることは可能だが、そうすれば当然そのシーンの映像は楽しめない。ちょっと信じられないつくりだと思ってしまった。
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ゲームは古いし、物語もわかりづらい。コントローラーがないと遊ぶこともツライ。
だから、このゲームは人を選ぶ。
実際、私は映像が好きでもシステム面がどうしても気になって高い評価を下すことはためらってしまっている。
しかし、音楽と映像センスにまかせてゲームを駆け抜ける体験は素晴らしいもので、見逃すには惜しい。まずは動画を見て、プレイするか考えてみるのがいいだろう。


好きか、嫌いか。合うか、合わないか。
あなたが世界観と音楽を好めば、本作は素晴らしいMVを見るかのように一瞬で終わり、何度もリピートしたくなる必携の音楽アルバムになるだろう。
『Sayonara Wild Hearts』そういった映像作品だ。

概要:
ネオンフレームの世界で、少女が音楽に合わせて動くステージを移動し、ときに戦うランゲーム。リズムゲーム的な側面もあるが、ランゲームといまいち折り合いが良いとは言えない。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
ネオンフレームの世界とスピード感たっぷりの演出
ノリノリのBGM

気になるポイント
タッチ操作ではプレイが苦痛になる
もう少しわかりやすさが欲しかった
ゲーム的には単に覚えゲー

アプリリンク:
Sayonara Wild Hearts (itunes Apple Arcade / Switch)

開発:simogo(米国)
販売:Annapurna Interactive(米国)

HP:http://simogo.com/work/sayonara-wild-hearts/
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中