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文明が崩壊し、地上を捨てて海底で生きる人類のサバイバルアドベンチャー『深世海 Into the Depths』レビュー。やはり、カプコンの売り切りは面白い。

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そこは地表が氷に覆われ、人々が海中で暮らす世界。
氷は広がり、長い年月が経てついには海中までが凍り始めた。
一体、世界に何が起きているのだろうか、そしてまだ自分以外に生き延びている人間はいるのだろうか……主人公はその謎を探るため、海の底を目指して旅立つ。

カプコンのApple Arcade参入第一弾。
崩壊した世界を描くポストアポカリプス系ゲームの中でも、際立って特異な世界観を持つサバイバルアドベンチャー『深世海 Into the Depths(以下、深世海)』を紹介する。

文明が崩壊した後も災害は収まらず、ついには1人で生きる主人公の家もまた氷に飲み込まれ、旅に出ざるを得なくなる。安住の地を探すためか、凍結の謎を突き止めるためか、言葉を使わずに物語が表現されるため想像するしかないが、とにかく主人公は旅立つことになる。
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そして、冒険が始まると深海世界の描写に一気に引き込まれる。
暗くも美しい深海の映像表現、進むほどに謎の新種生物が登場する得体の知れなさ、同時に海底人の文化を想起させる建築物の数々……未知の恐怖と好奇心がプレイヤーを刺激し続ける。
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同時に、海底人が完全に海で生活し続けるバックグラウンドが興味を引き続ける。
ゲーム中には言葉は一切使わないが、何かにつけて文明の遺産と思われるものに礼をする様子を見るに、海底文明は衰退し、何かしらの宗教を持って海底人が生活していることがうかがえる。
また、ときおり過去の海底人が描いた資料が見つかることもあり、これがまた想像を掻き立てる。
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▲考察しているだけでもかなり楽しめる。

で、そういったゲームの概要はと言うと、酸素を補充しなければ生き延びられない海底世界を進み、さまざまな素材を集めて行動範囲を広げ、ときに巨大なボスと戦う『メトロイドヴァニア』系の探索&アクションアドベンチャーとなっている。
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主人公の潜水服は貧弱なため、最初はごく浅い場所しか探索できない。
しかし、異変の原因は海底にある。そこで、広大な海底を旅して鉱石を発掘し、過去の海底人が残した資源を獲得し、装備を強化したり、クラフトしながらゲームを進めることになる。
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なお、パワーアップにはメインストーリーの攻略に関わる潜水服の耐圧性のほか、武器や移動力、アイテム所有数増加などの項目がある。
武器や移動力を増加に使用する資源は限られているので、その時々でほしい能力を選んであげる選択も必要になる。
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そんな海底は広大だが、本作では迷うことは少ない。
オートマッピングもあるし、右スティックを下に弾いてソナーを使用すると近くに存在するアイテムやイベントを発見できるから次の目的地を容易に定められるのだ。ゲーム進行に関わる重要アイテムは赤く表示されるし、取り終えたアイテムはチェックされて間違って取りに行くこともない。
これによって迷って時間を浪費するストレスがなくなる。が、わかるのは目的地の目安だけ。
目的地までの道のりにある危険は予測できないため、迷わない快適な旅でありながら、未知の場所に挑む恐怖は残っていて、とても感心させられた。
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▲ミニマップ。目的地はわかるけど……むしろ地形から何が起きるか想像してしまって怖い。

また、目的地は定まっているがそこを外れても問題なく、広大なマップで資源を集めたり、隠しアイテムを探したり、隠しボスを探したりと本道から外れる遊びもたっぷり用意されている。
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発見したものは図鑑に登録されて自由に3Dモデルを見られるほか、図鑑でしか見られない解説もついてコレクションの満足感もある。
ゲーム機の作品とそん色ないリッチな構造のザ・買い切りゲームで、カプコンの名に恥じぬ作り。
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そんなゲームの操作に関しては、やや慣れが必要になっている。
本作では画面左右の2本のバーチャルスティックで移動や攻撃を行うが、左バーチャルスティックで行う移動方法が3種類もあるのだ。
1つはベーシックな歩行。足で地面を歩く通常移動は遅い代わりに酸素の消費がとても少ない。
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続いて壁などに向けて移動する張り付き。本作では垂直な壁面にも張りついて昇降できる。
この状態では緑の体力ゲージが表示され、体力が尽きると1度壁から落ちてしまう。ただし、体力はすぐに回復するので再チャレンジは容易だ。
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最後に、ジェット移動。
水中に浮いているときに左スティックを倒すと、酸素を放出しで自由に水中を移動できる。これは自由度が高いうえに素早いが、酸素の消費が比較的大きい。
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▲なれるとすごく気持ちいいジェット移動。

続いて右スティックではジャンプ、ダッシュの移動操作が行える。
ジャンプは軽くスティックを上に倒すだけ。この後に左スティックを動かすとジェット移動が可能になる。ジェット移動の予備動作として使われることが多い。
浮遊時にスティックを倒すとダッシュが発生し、ジェット移動よりも大量の酸素を一気に放出して急加速できる。
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また、左スティックは移動だけでなく、攻撃にも使用する。
最もベーシックなのは、画面左側をタップすることで発生する接近攻撃。
攻撃力はそこそこ高いし、何も消費しないので資源を節約したいときに使いまくる。
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とはいえ、敵によっては近づいたら危険だから、射撃武器を利用することになる。
左スティックを押しっぱなしで倒すと射線があらわれ、離すことで銛などの射撃武器を打ち込める。
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▲銃器には物に刺して移動に使えるフックから、爆発する銛までさまざまな種類がある。フック以外は強力だが弾数制限がある。

さらに画面右下でいつでもアイテムが使用できるなど、言葉で説明すると操作は複雑なのだが……不思議なことに慣れると直感的で快適。
海の中を自在に動けるようになると、ちょっとした全能感すらある。
スマホで(慣れると)操作しやすくて、ギリギリ快適な範囲をうまくついてきたな、という印象を受ける。

そういった操作が苦手でも、難易度をイージーとスタンダードの2段階(スタンダードはアクションゲームをやる人なら大抵問題なくクリアできる程度)から選べるので、雰囲気を感じるために遊ぶことも可能だ。
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いろいろと語ったが、全体として見て『深世海』は快適に遊べて、ときに驚きがあり、恐怖があり、そして世界には謎がある良いゲームだ。
“水中感”にこだわった音は格別で、ヘッドホンで遊んでいると現実世界と切り離されるような感覚に襲われる。
その世界観は圧倒的で、ラスト付近では駆け込むように最後まで夢中で遊んでしまった。おそらく、多くのプレイヤーがそうなることだろう。

このゲームは間違いなくApple Arcadeの看板タイトルだし、このゲームのためだけにApple Arcadeを試しても良いと言い切れる。
カプコンファンの皆さんも、良質なサバイバルゲームを探している方も、ぜひこの深世海の謎を解き明かしてほしい。

概要:
地表が氷に覆われて文明が崩壊し、海底で暮らすようになった人類の生き残りが、世界の謎を知るために海底深くを探検するサバイバルアドベンチャー

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
水中感にこだわった音
言葉を使わずに表現される独特の世界観。
目的地を見失わず、かつ適度に未知の驚きを味わえるつくり
中盤以降の飽きさせないギミック追加と終盤の盛り上がり

気になるポイント
操作には慣れが必要

アプリリンク:
深世海 Into the Depths (itunes Apple Arcade)

開発:カプコン(日本)
HP:https://www.shinsekai-itd.com/ja/
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

動画



ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信