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インディーゲーム開発者に贈る、α・βテスト実施のポイント初級編。そのテスト、目的が決まっていますか?

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最近、新型コロナの影響でゲームイベントが停止となり、不特定多数のプレイヤーに開発中のゲームを触ってもらうことが難しくなっている。
そんなわけで、私が運営しているゲームキャストのDiscord(ゲーマーが集まる掲示板みたいなもの)開発中ゲームのテスター募集する依頼が増えてきて、もう20回以上もβテストを何度も仲介をしている。
で、そんな中でたまったノウハウを、はじめてテストを行うようなインディーゲーム開発者のために還元しておきたい。ということでこの記事を書いた。

テスターを集める前に
Twitterでフォロワーが多かったり、有名な人がかかわっていれば作っと集まったりするけど、今回は全く無名という前提で。
知り合い内で試す時期を過ぎたものとする。

1.目的なくテストしてはいけない
Discordを利用してテスター募集をするとき「何のためにテストするんですか?」と聞くと、意外にも「とりあえず反応をみたい」と、ふわっとした回答も多い。
もちろん、テスターからの反応を集めるだけで意味はある。が、ここはあえて「目的なくテストを行ってはいけない」と言っておく。
テスト自体は何回もできる。しかし、そのゲームを体験したことのない新鮮なテスターを何度も集めるのは大変だ。
「このゲームでこんな仕組みがあるから、そのゲームの仕掛けが働いているか見たい」などの意味をもってテストして欲しい。

「このゲームはヒロインがかわいいから、かわいいと思ってもらえているか、そのための仕組みが働いているか知りたい」
「Androidの機種が少ないから、Androidでの動作報告をたくさん見たい」

なんでもいい。
目的を持たずにテストすると「テストを通じて目的のデータを得る」経験が積めないので、できる限り目的を明確化してテストをはじめるのだ。

2.プレゼン資料を作ろう!
あたりまえだけど、テスターを集めるにはゲームがどのようなものか知ってもらわないといけない。
よって、PVなり、画像+説明文なり、公式サイトなりを作らないと、まずは人を集めづらい。
ただ、凝ったものを作りすぎる必要はない。
・作者の紹介
・どんなゲームなのか
・ゲームにかける思い
この程度がわかれば十分。

3.期間を区切ろう
テスター募集の期間が長すぎると、逆にプレミア感がなくなって人が集まらない状況が発生する。
一気に人数を集めたいときは、ちゃんと告知して時限(募集は1週間程度、期間は長くても1カ月)でテストを行ったときの方が良い反応を得られやすい。
Steamのアーリーアクセス的な品質までいったらともかく、大勢の前に出す前の募集はこういった感じでゲリラ的に集めた方がいいと思う。
また、同時接続が必要なオンラインゲームは、1~2日程度でプレイできる時間を限定するのが良い。そうしないと同時接続数が少なくてテストにならないことが多いので。

4.配信ポリシーを決めよう
わりと忘れられがちなのが、テスト中のゲームの共有範囲。
Youtube投稿OKなのか、身内Discordでのログの残らない配信がOKなのか、全部NGなのか。
Twitterで語るのはいいのか、スクリーンショットをSNSにあげてもいいのか。
すでに情報が出ているゲームは露出してもいいが、基本的に「ゲームの初出」はプロモーション的に大事なので、規模や期待度によってはちゃんと制限した方がいい。

テスターと会話しよう
さあ、テスターが集まった。あとは感想が届くのを待つだけ……じゃない!

1.テスターは最初のファン
わざわざテストに参加してくれる人は、ゲームの最初のファンと言ってもいい存在。ちゃんとコミュニケーションをとっていこう。
ざっくり足跡を追ったところ、掲示板などできっちりフィードバックする開発者に対してはゲームの正式リリース時にTwitterなどで言及してくれるβテスターが(すごくよくなる気もするけど、ゲーム内容で激しく変わるので数字で出せなかった)は増える傾向がある気がするし、たんにRTするだけでなく自分の言葉で周囲に勧めてくれることも多い。
プロモーションをきっちり仕掛けられないなら、テスターを大事にして損はない。

2.無駄な感想と会話を減らすための会話
αテスト、βテストでは機能が足りていないことも多い。
よって、足りない部分に関して「これが動かない」「こうだったらいいのに」などと何回も言われることがある。
これはすごくもったいないので、何かしら情報掲示板などを作って「これは後でできますよ!」とコミュニケーションを取ったり「最初に読んでください.txt」などに今後の予定などを記しておくといい。
また、テスター同士が会話できる場所を作っておくと会話をもとに「何が足りていないか」などが類推できたりするので、テスター専用の掲示板も作るといいだろう。

フィードバックを受けよう
1.デバッグシートを作る
共有のGoogle Spread Sheetなどを作って、バグや問題点を報告してもらう形式はやりやすいし、気軽に描きこみやすい。
デバッグシートを作るのはおすすめ。それでいて反応が速ければ(修正しなくても「こうなる予定です」とか回答すれば)、テスターもやる気を出してくれる。

2.ゲームの感想はアンケートで
掲示板の書き込みや、共有シートでも感想は手に入る。
しかし、日本人の特性かどうかわからないけど、バグや悪かったところはガンガン増えても、良かったところなどのまとまった情報の書き込みは鈍い傾向があるように見える。
そこで、報告フォームと合わせてお勧めしたいのがGoogle Formなどでアンケートを作ることだ。

アンケートを作ろう!
アンケートを作るときには「このテストで何を知りたいのか」を明確化しておく必要がある。
動作環境を調査したいなら「あなたのPC・スマホのスペックを教えてください」が必要だし、PVなどがフックになっているか知りたいなら「何に魅力を感じてテストに参加しましたか」などと聞かないといけない。
知りたいことがぼけていると、テストのフィードバックもぼけてしまうので、ここはきっちり検討して欲しい。
そのうえで、重要だと思う4つのことを書いておく。

1.あなたのゲームは何を楽しむゲームですか?
ほとんどの開発者はこれを定めているとは思うが、これを文字にしようとしたときに明確に書けないなら、文字に欠けるようにした方が良い。
「静かな世界観を楽しむ」だとか、「デッキを作って戦う駆け引きを楽しむ」とか、そういったレベルで良いので。
アンケートには、これが機能しているかわかるものを入れたい。

・このゲームの××部分は楽しめましたか?理由も教えてください(直接的)
・ゲームの良かったところを挙げてください(これで挙がらなかったら問題)
・プレイしていて心に残った瞬間はありますか?
・このゲームを人に勧めると思いますか、思うとしたらどこを勧めますか

などか。後述の「翻訳」にも関わってくるので、ここは1~5段階というようなものではなく、自由記述のテキスト式がいいと思う。

2.対象プレイヤーは適切ですか?
インディーゲームの多くは、AAAのように大勢を満足させようとするものではない。むしろ、ニッチな方向で一点突破で満足させようというものが多い。
よって、プレイヤーの嗜好とゲームの目指すところがずれていたとき、その意見を参考にすると悲惨なことになる。
たとえば、バトル偏重のRPGゲーマーにシナリオ重視のRPGをさせたら良い結果にならないのはわかるだろう。彼らは、あなたの客ではない。
よって、ゲームの対象とならないプレイヤーの意見は、比重を軽くしてみる必要が出てくる。

・どの程度遊んだか(好みに合うかもあるし、序盤でみんな終わっていれば序盤に問題があるなどもわかる)
・好きなゲームを教えてください(好みを探る)
・このゲームはあなたの好みに合っていますか?
などの質問が考えられる。

3.要望を聞こう
良かったところだけでなく、マイナスだったところ、直してほしいところ、追加機能の要望なども聞いておこう。
これは、後述の翻訳に関わるので忘れてはならない。

4.すぐ書けるようにしておこう&催促しよう
アンケートを取るタイミングはいつなのか。これは、いつでも出せるようにしておくのが良さそうだ。
アンケートフォームを最初から設置しているときと、最後に送るときでは最初から設置しているときの方が回答率が高くなる傾向がある。
恐らく、最終日までまたずとも「もういいか」と思ったときに書いてもらえるからだと思う。
また、テストの最終日にテスターに「アンケート書いてね」と送るだけで回答率は飛躍的に上がるので、これは絶対やった方がいい。
もちろん、募集時にテスターの連絡先は把握しておかないとダメだ。

プレイヤーの感想は正しい。しかし、役立てるには翻訳が必要。
アンケートが集まった。しかし、その先には翻訳作業が待っている。プレイヤーから集めたアンケートは大変参考になる。しかし、そのまま利用はできない。

「プレイヤーの感想は正しい。しかし、役立てるには翻訳が必要」と覚えておいた方がいい。

「ターンあたりの行動回数が少なすぎる、行動回数をもっと増やすべき」
などと、プレイヤーからサジェストされる状況は、ゲームのテストではよくみられる。
これに翻訳が必要になるのだ。

プレイヤーが「ターンあたりの行動回数が少なすぎる」と発言したとき、その感じたこと自体は真実だ。
しかし、彼らの多くはゲームのプロではないので、感じたことがそのままゲームの欠点ではないことも多い。
開発者はプレイヤーの意見を翻訳して、意味を見極める必要がある。

「行動が足りないから行動回数を増やしてほしい」

なるほど。これに対して「行動回数を増やして緩和せよ」というプレイヤーの意見はもっともに聞こえる。しかし、実際はそれをしてはいけないことも多い。
それは、プレイヤーが「行動回数が足りない」と感じても、その原因が「行動回数」にないこともあるからだ。
たとえば……。

1.満足なリソースが得られなかったので行動回数が足りないと感じた
→足りないモノを分析し、行動1回当たりの獲得リソースを調整する
2.プレイヤーが最適な行動をしていなかったので行動回数が足りないと感じた
→チュートリアルを強化するか、コマンドを整理する
3.プレイヤーが適切なリソースを得ているが、理解してもらえていない
→演出を強化する

という感じで「行動回数が足りないと感じた」ことは正しいとしても、その解決方法は一様ではない。アンケートを読み解き、プレイヤーの言葉を翻訳し、本当に障害と感じた根源を修正する必要がある。

最近の実例で感心したのは、EIKIさんの『終わる世界のキミとぼく』のテスト時に聞いた話。
このゲームでは1日3回探索できて、探索のたびにアイテムが手に入る。ところが取得アイテムの多くは、ゲーム中で1回も使用されない無駄なアイテムだ。
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気になって「なぜ、まったく役立たないアイテムを拾うのか?」という質問をしてみると、「探索コマンドで意味のないアイテムを拾うと、探索でまったくアイテムを拾わないときより満足感が高くなるから」と言われた。
探索コマンドを使用したとき有用なアイテムを拾う確率は適正になっている。
しかし、まったく何も拾えないタイミングがあると満足度が低くなるので、演出として意味のないアイテムを拾うことで行動の満足度を上げているわけだ。

このように、プレイヤーが「アレが足りない」と言っていても、実は足りていないのは数字ではなく演出だったり、説明だったりもする。
「プレイヤーの正直な感想を、ゲームの修正点まで翻訳する」ということを心掛けないと、テストの結果に振り回されることになる。
とくに初めてゲームを作る方などは、プレイヤーの意見に惑わされすぎてゲームが明後日の方向に行ってしまうことがあるように見受けられるので、注意が必要だ。
この例では書かなかったが「スタミナを廃止すべき」と言われたとき、確かにスタミナを廃止すればスタミナ制限がなくなる。
しかし、同時にスタミナをやりくりする楽しさは失われてしまうし、基本無料ゲームであれば課金が機能しなくなって失敗してしまうかもしれない。また、スタミナを増やしたら行動回数が増えてゲームプレイ時間も伸びてしまう。
プレイヤーが考える解決策は参考にとどめ、「その解決策はゲームの思想にとって妥当か」ということを念頭に置いて考える必要がある。
また、進行度合いも重要だ。30分で終わったプレイヤーは「足りない」と思っても、1時間たったプレイヤーは「ちょうどいい」と思うかもしれない。プレイヤーの意見は総合的に判断する必要がある。

もちろん、参考になる意見もある。
「他のスマホゲーにはこんなシェア機能があるから入れて」とか、「この部分をスタミナにすると人気ゲームで無料の部分だから不満が出そう」という「他のゲームで常識なのに」というトレンドに関する意見はわりと無理なく採用されていたように思う。
以上。

ついでに、最近インディーゲームエキスポというイベントがあったので、そこに登場したゲームの中でゲームキャストDiscordと関わりがあるものを紹介しておく。
こういった実績の積み重ねなので……根拠レスではないと思う。

フォージ&ファイト
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αテスト済。ランダムなパーツを組み合わせて好きな武器を作って対戦する「俺の考えた最強の武器」で戦うアクション。
50人ぐらい集まったそうで海外開発者コミュニティ向けに紹介の記事も出たため、このテスト以降海外からの問い合わせもくるようになった。

終わる世界のキミとぼく
02
βテスト終了(今月リリース予定)。
核戦争で滅んだ世界を舞台に、少年少女がサバイバルするゲーム。シンプルだがハマる。あと、ヒロインである少女の正気度が下がると少年を襲って殺しはじめるので、ヒロインの好感度が限りなく低い。
βテスターがタイムアタックはじめるほど面白いので、出たらやると良いよ!

朝はどこ
 
現在Discordにてαテスト中(まだ参加可能)。
20年前に災害で滅んだ施設を、幽霊が探索するアクションアドベンチャー。
敵と戦って装備を集めて戦うハクスラ要素と、どこか不思議な世界をランダム生成で探索する気持ちよさを大事にしているらしい。

Craftopia (クラフトピア)

話題のクラフト農業ハクスラ自動化建築マルチ対応オープンワールドサバイバルアクション。
Discord用に50名の選考テスト枠が用意されている(現在募集受付中)
このタイトルのみ、先行アクセスのような形。

βテストに参加してゲームを盛り上げたいという方は、普通にゲームキャストのDiscordに参加すればOK。
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