ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

パズル&ドラゴンズが示したソーシャルゲームの未来

pd07
今年2月の最も大きなニュースは『パズル&ドラゴンズ』(以下パズドラ)の発売だろう。
この登場はソーシャルゲーム界に大きな衝撃を与えた。
ソーシャルゲームを見る第9回はこのゲームについて語りたい。
この出現まで、ソーシャルゲームはどれも似たようなコピー品だった。
カードバトルならカード集め、合成、そしてガチャガチャに体力システム。
当初こそある程度ゲーム内容にばらつきもあったが、売れたゲームのシステムは構わずに真似る姿勢で、今ではほとんど同じようなシステムになってしまった。
その他ファーム系やいくつか種類があるが外見が違うだけでシステムはほぼ同一。


カードバトル系の大ヒットゲーム、『ドリランド』はみんなで協力してボスを倒す、『ドラゴンコレクション』は他のプレイヤーとのバトルがメインだったが、今ではどちらも似たようなシステムになってしまっているのが、それを象徴している。
家庭用ゲームで言えば「ドラクエが売れているからFFもまったく同じシステムにしよう」というぐらい驚きの現象だが、モバゲー・GREEの世界ではこれが普通だ。

ゲームのアイデンティティは、その内容よりも売上にある。
既存の枠にのって売上を増やすための努力はするが、新しい冒険には出ない体質が染み付いており、新しいチャレンジは期待できない業界。
それが日本のソーシャルゲーム業界だと思っていた。

だが、パズドラは違う。
誰がプレイしても結果の変わらない、ボタンを押すだけの「ポチポチ」を3マッチパズルにしてしまった。
今まで、プレイヤーの実力ではなく課金とプレイ時間だけが評価されていたところに新しい風を吹き込んだ。

マッチパズルの部分だけを見ても、素晴らしい効果音(なんどもリテイクを出したという)、聴いていて飽きのこない音楽、上達するほどに連鎖が組めるアクション性など、これだけでAppStoreで売れるほど良くできている。
プレイした方は、ソーシャルゲームが嫌いでも「これはゲームだな」と認識すると思う。

そして、それが『ドリランド』『Kingdom Conquest』などの競合を抜いてAppStoreで連日売上1位を記録している。
思えば、ファミコンやそれ以前の時代はゲームと言っても極めて単純なものが多かった。
そこからユーザーが慣れることによって、より演出が良く、複雑で面白いゲームが生まれていった流れがある。

ここ数年、ソーシャルカードゲームが流行っているなか、実はプレイヤーはもっと面白いゲームを求めていたのだろう。
パズドラは業界にはっきりそれを示した。
今、その歴史が再び繰り返されようとしている。

正直、パズドラのようなゲームが出るのは2013年近くになると思っており、今年は『拡散性ミリオンアーサー』のような(まだ発売されていないので予想だが…)既存のソーシャル方程式に少しゲームの要素をふりかけた程度のものしか出ないと考えていた。

だが、パズドラの影響で業界は確実に加速する。
3ヶ月後には恐らく、パズドラのコピー品(こんなモノを今更出す志の低いメーカーが日本にいたら悲しいが…)が出てき始め、それと同じくして大手メーカーからゲーム性の強いソーシャルが出始めると思われる。
今頃、いくつかの大手は開発中のゲームに関して仕様を一生懸命変更しているところだろう。

今後、ゲーマーでもバカにできない「ソーシャルゲーム」が出てくるのは間違いなく、私も今まで以上にソーシャルゲームをフォローしていかねばならないだろう。
ようやく、ソーシャルゲームがマシになり始めた。
私自身はフリーミアム的な作りでゲームの面白さをスポイルしている部分があるとは感じるが、パズル&ドラゴンズは1年先のスタンダードを先取りした未来指向ソーシャルゲーム。
これを製作したスタッフに心から拍手したいと思っている。

ついでに、私が今年注目しているソーシャルゲームメーカーをここで紹介しておこう。

ガンホー
ラグナロクオンラインの運営というイメージしかなかったが、いつの間にか元ハドソン、エレメンタルモンスターTDを開発したスタッフが移籍してパズドラを開発。
コナミも勿体無いことしたなぁ。
今後も新しいゲームを期待できる。

セガ
kingdom conquestの椎野氏はすでに昨年「ソーシャルの先は見えている」「家庭用機同様に予算を注いで開発する」とおっしゃっていた。
そろそろその「先」がくるはず。

カイロソフト
少し前、ソーシャルゲーム開発のスタッフを募集していた。
カイロソフトなら箱庭系ソーシャルを進化させてくれるのではないか、と期待している。

ゲームロフト
天外魔境2、PC-E版イースI・IIで活躍したドクトルだみお氏が移籍し、ソーシャルゲームを作っているらしい。
間違いなく新しいものを作ってくるはず。
ギャングスターのソーシャルカードゲームも既存のものより進化したタイプという噂を聞いている。

スクエアエニックス
ケイオスリングスの安藤氏が率いるソーシャルゲーム開発体制。
彼もまた、拡散性ミリオンアーサーでソーシャルゲームの理屈に少し抵抗していた。
おそらく、早晩もっと新しいものが出るに違いない。

(ゲームキャスト iPhone トシ)

※スクエアエニックスが期待のメーカーに抜けていたので追記しました

アプリリンク
パズル&ドラゴンズの詳細・DLはこちら(itunes)

関連記事
ソーシャルゲームを見る4:ソーシャルゲームがゲーマーにとって面白くない理由と批判される理由1
ソーシャルゲームを見る5:ソーシャルゲームがゲーマーにとって面白くない理由と批判される理由2
ソーシャルゲームを見る6:ゲーマーも納得のソーシャルゲームとは、ソーシャルゲームは値段を表示せよ
ソーシャルゲームを見る7:ソーシャルガチャ課金誘導はすでにネットゲームを超えた
見えてきた「拡散性ミリオンアーサー」。スクエニ最新作はカード系ソーシャルゲームの集大成か?