ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

腕に覚えのあるカードゲーム好きが試すべきゲームが『クロノマギア』。マニアックすぎるゲーマー向けの愛を見て欲しい

ガンホーが『パズドラ』の山本大介さんプロデュースと銘打って久々に出した大物だが『クロノマギア』が大ヒットするとは思えない。
しかし、カードゲーム好きなプレイヤーなら、その良さがわかる。そんなガチの作りこみを持ったゲームが『クロノマギア』だ。

かつて『ハースストーン』に強く影響を受けた『シャドウバース』や『ドラゴンクエストライバルズ』が出たときは、『ハースストーン』を知っていたから短期間である程度先を見通して、カード能力も見当をつけて、すぐ評価付きのレビュー記事を書くことができた。
しかし、『クロノマギア』は全く異なる新しいゲームであるため、いつゲームに評価を下せるか判断がつかない。それほどの難物であり、意欲的な作品だ。

私は言いたい。「クロノマギアは新しくて面白い」と。そのためにこのインプレッション記事を公開する。
腕に覚えのあるカードゲームプレイヤーよ、このゲームを遊べ。

『クロノマギア』は、“能力者”と呼ばれる魔法能力を持ったキャラクターを選び、その能力と20枚1組のカードデッキで戦い、相手のライフを0にした者が勝利となる対戦カードゲームである。
chorono-4
▲デッキ20枚+手札交換で、運要素は抑えられている。

能力者の差別化からして本作はオリジナリティを発揮しまくっているのだが、それは後にしてまず基本ルール説明とその『ハースストーン』や『シャドウバース』などのゲーム(以下、ハース系とする)との差異を紹介していこう。

本作はMPを消費して手札からカードを出していくターン制のカードゲームである。
MPは毎ターン最初に固定MP(能力者によって異なる)が補充されるほか、能力者がダメージを受けたときも失ったライフと同じだけのMPがチャージされる。
MPの最大値は15で、ターンを超えて蓄積される。

そのMPを利用するカードには場に1回出すと倒れるまで戦わせられる“クリーチャー”と、使い切りの“魔法”の2種類。
クリーチャーカードは攻撃力とライフがあって、1ターンに1回、攻撃力と同じ値のダメージを敵クリーチャーか能力者に与えられる点ではハース系なのだが、カードを出す手順に一工夫ある。
クリーチャーカードは場に出した瞬間はまだ伏せられて配置され、このとき敵はクリーチャーを攻撃できない。
chorono-5
▲伏せてカードが配置されている。

そして、出したプレイヤーのターンが再びめぐってくるとカードが表になってクリーチャーが行動できる(サモンされる)状態になる。
サモン前のクリーチャーを攻撃することはできないため、先に場にカードを出したプレイヤーが優位を握り、いくらモンスターを場に出しても一方的に攻撃されて負ける……シンプルなアグロ戦術が無効化されている。
chorono-6
▲先手を取ってクリーチャーを呼んだが、敵のクリーチャーは伏せられているので攻撃できない。『カードヒーロー』にも同じシステムがあるので、家庭用ゲームの流れを汲んだ対戦カードゲームなのかもしれない。

では、後からカードを出した側が強いのかというと、“レベルアップサモン”という要素が対策として用意されている。
すでにモンスターがいる場所に新しいモンスターカードを出すと再び伏せ札になり、翌ターンにパワーアップした状態でサモンされる。
これで後から場にカードを出したプレイヤーが一方的に勝つことを防止している。ただし、レベルアップサモンには追加のMPが必要なので、乱用はできない。

これが概要なのだが、勘の良い方はもう『クロノマギア』が新しいゲームになっていることに気づいているだろう。
まず、MPがターンをまたいで蓄積されていく駆け引き。
ハース系ゲームではMPに当たる値は毎ターン最大まで補充されるから、うまく使い切ることが重要とされる。
しかし、本作ではMPが資産として蓄積されていくので「少ないMPで敵のカードを処理してMPの総量で差をつける」新しい駆け引きが生まれる。
結果として、「一時的に不利になるが、MP温存のため行動しない」なんてことも増える。
chorono-7
▲反撃を受けるから、場をとっても固めにかかるが攻撃はしない。

また、ダメージを受けると同じだけマナが増えると書いたが、これは負けている側が猛反撃を可能にするというシステムだ。
よって、中途半端に大ダメージを与えると相手のMPが増えすぎ、猛反撃を受けて逆にピンチに陥ってしまう。

そのため、下手な攻撃は行わず、序盤はちまちまとダメージを与えながらマナ総量のアドバンテージを取っていき、十分に優位を取った後で1ターンの間に敵を倒す(倒し切れないとMAXまでマナがたまった敵の反撃を食らう)という展開が基本になりそうだが、まだ正解は見えていない。
chorono-8
▲準備が整ったらワンターンキル(2つ上のスクショから一気にゼロへ)

クリーチャーの数を増やすかレベルアップサモンを利用するのか、相手を攻撃するかしないか、はたまた何もせずMPを増やして翌ターンにかけるのか……プレイングは深く、戦術の幅も広い。
新しすぎて、今楽しんでいる私にも「こいつはやりがいありそうだぞ」としか言えないし、前述のように評価を下せない状況である。

で、そんな新しいゲームなのに、各能力者の特徴がさらに深くしている。
最大ライフ、毎ターン補給されるMP量、防御力(単純にダメージから防御力を差し引ける)という3つの値がそれぞれ異なるという点でも特徴的なのだが、強烈なのは“マギアスキル”という要素。
これは能力者と相性の良いクリーチャーが場に出ると使用できる特殊能力なのだが恐ろしく強力で、MP消費量が低いのに下手なカードより強力。
しかも、このマギアスキルは固定ではなく、9人の能力者それぞれに9つ用意されており、そこから3つ選んでカスタマイズ可能ときている。
chorono-1

ちょっと長くなったが、まとめると『クロノマギア』は下記のような長所を持ったゲームと言える。

・主流の対戦カードゲームと異なる戦術が必要とされる新規性を持つ
・アグロに攻め殺される既存カードゲームの問題にルールで対処
・20枚デッキなので手札事故が少なく、運要素低め
・MPを資産とした駆け引きがアツい

私の知見では咀嚼するのに時間がかかりそうだが、それでも現時点で主流のハース系と明確に差別化を図っていることは間違いない。
面白さもその中にまだまだ眠っている可能性がある。

ただ、アプリはそんなポテンシャルを活かす作りをしていない。
まだランキング戦がないとか、アプリの見た目や演出が地味で古臭い(ゲームの色遣いや傾向が人気の無料ゲームアセットと似ているのもあるし、パズドラが流行りすぎて古典化しつつあるのもあるだろう)とかそういった点もあるのだが、何よりゲームの面白さを伝える努力を放棄していることが気になる。

本作は他のゲームより複雑であり、かつ既存ゲームの延長戦でとらえづらい新しさがある。
にもかかわらず、1人用が薄いストーリーモードしかなくてゲームの面白さに導入する働きをしていない。ちょっと触った程度では面白さの勘所がわかりづらく、微妙な印象で終わってしまうだろう。
chorono-3
▲ストーリーモードに特殊な状況のバトルや詰めバトル的な要素が多くても良かったのでは。

さらに初期はカードパックが無料でほぼ手に入らず(※現在は緩和されている)、金を払わなければデッキを組む楽しさも味わえなかった。
実際20枚1デッキなのでシャドバ(40枚1デッキ)の2倍程度の価格設定にしなければ合わないのだろうが、カード作成ポイントが属性ごとに分けられていることも含めて、売り方として「無駄に不便で高く見える」のは続けるうえでも印象が悪い。
IMG_4483
▲現在は少し緩和された。

正直、「今がベータテストではないのか?」と思ってしまう(バグは見当たらないが)ような環境ではあるが、ゲームとしての基本ルールはチャレンジングだし、志は感じるゲームとなっている。
私自身、手札事故が少なめなのが気に入っているし、MPの駆け引きがわかってきたらプレイングの深さもわかってきて楽しくなってきた。
そこにきて4月12日に無料カードパックも引けるようになってきたので、今はデッキ作りも楽しくなってきた。

私が『エレメンタルモンスターTD』からの山本大介ファンなので贔屓目も入っているかもしれないが、「カードゲーム好きのためのマニアックな対戦カードゲーム」になっているのと思うので、『クロノマギア』は腕に覚えのある方にぜひ挑戦してほしい作品になっていると思う。

なにより『シャドウバース』などのハース系ゲームが出るたびに、自称通から「日本のゲームはパクリ(※ゲームキャストの観点ではシャドバもDQRも影響を受けたオリジナルゲームに達しているが)しかできないのか」などと言われることがある。
が、いざ本当に新しいゲームが出てくると応援されないというのは悲しいではないか。

評価:面白そうだけど保留

おすすめポイント
新しいルール
運要素が低めの対戦
MPとカード枚数をにらんだせめぎあい

気になるポイント
マニアックで自分で考える力が必要
緩和されつつあるが、価格に関しては気になる
動画で対戦を見ていて面白くない
5年ぐらい時間が止まっているかのような地味な見た目と演出

アプリリンク:
クロノマギア (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:ガンホー(日本

レビュー時バージョン:1.0.3
課金:カードパック、能力者開放
公式ページ:https://chronomagia.com/
ライター:ゲームキャスト トシ