USのサイトで最近良く見る、「Tablet Chip Showdown: Nvidia Tegra 3 vs. the New iPad’s A5X」というnew iPad(以下、iPad第3世代という意味でiPad3と書く)とTegra 3の比較記事が本当にひどい。
USに記事が出まわり、2chに貼られるまで「いい加減な性能比較だなぁ」としか思っていなかったのだが、Tech Crunchさんの「iPadのディスプレイはやはり「過去最高品質」という分析結果」という記事内でで取り上げられていたので、さすがに反論しておきたい。
確かに、記事中ではiPad3のグラフィック能力が優れていることを示すベンチマーク(性能を計測するソフト)の実行結果と、geek benchとSun SpiderでTegra3を示したことを書いてる。
その後、上記の動画でアプリのグラフィックを見せつけ「同じゲームでも実際はTegra3の方がグラフィックが良いですよ」という印象をもたせようとしている。
ベンチマークはどれも有名なものだし、ゲームもiPad3とTegra3で同じアプリを使用している。
では、この記事は公平なのだろうか?
もちろん、答えはNOだ。
まず、使用しているベンチマーク。
グラフィック性能を図るGLbenchは良いとしよう。
しかし、geekbenchとSunspiderはどちらもCPUが重要なベンチマークであり、どちらかで大きく負けていればもう一方も同じ結果に終わる。
グラフィック性能を1回測り、同じ結果が出ることが期待できるベンチマークソフトを使用して2回Tegra3が勝っている結果を表示することで、1対2でTegra3優位を印象づけようとしている。
と言っても、別のベンチマークで試した意味はあり、結果が逆転することはあるのでこれを測る意味はある。
ひどいのはその後である。
「Tegra3、1年前に発売されたA5チップにグラフィック性能で完敗。iPad2 VS Transformer Primeのベンチマーク結果」でお伝えした通り、Tegra3はグラフィック処理能力でiPad2に完敗している。
iPad3に対しては言わずもがなで2~3倍の差を付けられている状態だ。
「ある種のグラフィック性能では優位」ではなく、「圧倒的にiPad3が優位」である。
が、比較に使用された『Riptide GP』と『Shadowgun』ではTegra3の方がきれいだ。
これにはからくりがある。
どちらのゲームも、製造元と緊密な連携をとってTegra3専用にカスタマイズされているのである。
この動画比較は、PS用のウィニングイレブンとPS2用のウィニングイレブンを比較しているようなものでまったく意味はない(iOS版のShadowgunはあの低性能な初代iPadでも動く)。
単なる印象操作である。
確かに、CPUではTegra3にiPad3は劣る。
だからブラウザの速度などでも劣る部分があるが、グラフィック処理能力(ゲームでは特に重要だ)についてはTegra3は敵にもならない。
Tech Crunchの記事では「いくつかのベンチマークテストを総合すると、A5Xはある種のグラフィックス能力では優れているものの、最新のクアドコアのTegraチップには劣るという結果になった。」とあるが、「最新のクアッドコアTegraはグラフィックス性能で1年前に出たiPad2にも劣るが、CPUに関しては半年分ぐらいは勝ってます」というのが正しい。
iPad3のCPUパワーはかなり物足りない(なのでブラウジングなどがメインであればTegra3タブレットでもいいと思う)。
が、ゲーマーにとってiPad3を最新ゲーム機とするなら、Tegra3タブレットは2年前に出たゲーム機だ。
ひどい比較記事に騙されないで欲しい。