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クリアしたから「楽しかった」と断言する。新しいスマホ版『クロノトリガー(アップデート版)』レビュー

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『クロノ・トリガー』の移植は、クソ移植である。
しかし、原作が素晴らしいからギリギリ遊べる。2011年に出た『クロノ・トリガー』の評価だ。
レビュー クロノ・トリガー
それから5年を経てアップデートした『クロノ・トリガー(アップデート版)』は、ついに楽しく原作に近いものを遊べるまでに進化した。
スマホ版をPCに移植したことで評判を下げてしまっている(関連記事)が、断言しよう。スマホ版の『クロノ・トリガー』は良い。

まず、『クロノ・トリガー』を褒めまくりたい。大好きだから許せ。
そもそも、本作は1995年にスーパーファミコンで発売されたRPGで、ドラゴンボールの鳥山明さんがキャラクターをデザインし、『ドラゴンクエスト』の堀井雄二さんがシナリオを作り、『ファイナルファンタジー』を制作したスクウェアがゲームを製作する“ドリームプロジェクト”として大々的に発表された作品だった。
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物語としては、時間移動に巻き込まれた少年たちが様々な歴史的イベントに巻き込まれ、未来に人類が破滅することに気づいて歴史の修正を試みるタイムトラベルストーリーである。
これがうまくできていて、当時の少年たちも無理なく世界観を理解しつつ、様々な世界を楽しむことができた。
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世界演出も印象的で、とくに荒廃した未来の世界は先進的な回復装置に入っても「回復したが、空腹は満たされなかった」という意味のテキストが出るし、「食糧を探して倉庫に旅立った父を見つけて欲しい」と言われて助けに行けば、父は死んでおり食糧は全て腐っている絶望エンド。
誰もが絶望しており、同時に絶望的なイベントしかない未来を見て「この未来を変えなければいけない」と、子供心に強く思ったことを覚えている。
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▲文明が崩壊し、過去の遺産だけで生活している未来。

時間を利用したいくつかのサイドクエストも用意されており、過去を変えてから未来へ移動すると世界が変わっていてイベントが進むだけでなく、時間の重さを感じさせるテキストが用意されていた。
また、ゲーム序盤のセリフが中盤以降の時間イベントに生きてくるなど、伏線の張り方も巧みであった。
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▲このシーンは、本当に印象的だった。

一方、バトルやフィールドのシステムも先進的だった。
シンボルエンカウント方式が用いられており、フィールドで敵と出会うとそのままバトルに突入するのだが、戦いたくない状況では敵を簡単に避けることもでき、時間を行き来するお使いイベントでも物語に集中できた。
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バトルの負荷は軽めで、適切な仲間でパーティーを組み、連携技を利用することで簡単に雑魚を倒すことができた。
作業になりがちなバトルを避けられるし、育成よりパーティーの選択が重要なバランスは現代のRPGに通じる調整で、今プレイしても古さを感じない。
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ボスも強敵ではあるものの、最適な攻略戦術を見つけるパズルのようになっており、そこに到達すればたいていは倒せる。このあたりの調整は神がかり的だ。
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また、1回クリアした後にキャラクターが強いままリスタートできる“強くてニューゲーム”システムを搭載しており、2周目以降は本来ありえないタイミングでラスボスを倒して未来を変えられるマルチエンディングを採用していた。
これは、以後のゲームに多く取り入れられた(おそらく)初のシステムであり、強くてニューゲームと言えば『クロノ・トリガー』と言われている。
出た当時として先進的なシステム、今に通じるバトルバランス、十分な世界演出と興味深い物語。これらを備えた作品だったわけだ。

で、こんな名作の初期のスマホ版は劣悪なバーチャルスティック、オートセーブを欠き、かつ電話がかかってくるとリセットされ、スキル初期化バグまで存在する酷いものであった。
とくに移動に関するイベントは大変で、ネズミ捕りイベントなど一部の精密操作が必要なミニイベントに「1時間かかった」とか、ゲームの素晴らしさを台無しにするほど傷を付けていた。
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▲アップデート前は「1時間かかった」などの大げさな感想もあったネズミ捕りイベントも、すぐ終わった。

が、アップデート版はバーチャルスティックを改良(完全とは言わない)し、コントローラーにも対応し、バグも修正された。さらにバトル中に攻撃したい敵をタッチで選択できるようにもなっており、フレームレートとグラフィックの改善まで行われ、しっかり遊べるまでになった。
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高解像度化したグラフィックに関しては賛否両論あるものの、スマホの小さな画面でプレイすれば大してあまり気にならない。むしろ、アップデート前のぼけたグラフィックよりはるかに良い。
原作ももともとタイルの不整合があったのだが、当時のテレビのにじみで気にならなかった。それと同じ現象が小さな画面で起きているわけだ。
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▲この画像のようにJPEG圧縮されるとボケて違和感が薄れる…同じ現象が起きる。

つまり、操作は及第点(コントローラーなら問題なし)、スマホ向けのセーブ関連の配慮があり、グラフィックにも問題をあまり感じずに『クロノ・トリガー』を手元で楽しめるわけだ。
素晴らしい。

一方で、ここまで来ると今度は欲が出てくる。「一貫してただの移植」である点が気になるのだ。
例えば、アニメシーン。アニメはPS時代の移植に際して加えられたもので、アニメシーンが使えることが最先端であったPS時代の追加要素としては正解だった。
しかし、ドットキャラクターの芝居が表現として認められた現在、アニメシーンが挿入されることはゲームとしての一貫性を欠き、完成度を落としている。
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▲あってもいい。だが、オプションでON/OFFが欲しかった。

また、バーチャルスティックの操作性は前より良くなってはいるが、全体マップの入り口や宝箱をの取得時など、いくつかの場面では扱いづらい。コントローラーのゲームをバーチャルスティックにする時点で多少の不自由はあるわけだが、スマホ版『聖剣伝説2』ではこういった問題を回避するために画面端判定を広げていたし、『ファイナルファンタジー5』ではバーチャルスティックの違和感を解消するため、4方向移動であった原作から斜め移動可能に変更していた。
しかし、『クロノ・トリガー』は一貫して単なる移植であり、そのハードの特性や現代の時代性を考慮した作りに欠けている。そこまでフォローしてくれれば、最高だった。

とは言え、原作の素晴らしさはそういった不満を凌駕する。そこそこ遊べるまでになったスマホ版を評価するため、私は人生4度目となる『クロノ・トリガー』の通しプレイを行った。そして、4度目だというのに今回のプレイも楽しかった(前回のスマホ版と違って)。
過去にこのシリーズを遊んだことがない方でも楽しめるし、特に『アナザーエデン』のプレイヤーの皆さんは元ネタを知る意味でも(アナザーエデンの名シーンの原型はほぼここにある)遊ぶ価値はある。
PC版の移植は荒れているが、スマホ版に関しては遊んで問題なしだ。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
クロノ・トリガーを遊べる
初期バージョンからの飛躍的な改善
小さい画面なら違和感が薄い

気になるポイント
iPadではとても粗が目立つドット
バーチャルスティックに対する配慮
マッチしていないアニメ

アプリリンク:
クロノ・トリガー (アップグレード版) (itunes 1,200円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)

開発:スクウェア・エニックス(日本)
公式ページ:http://www.pxlink.xyz/Reed/
レビュー時バージョン:2.0.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: