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『森川空のルール』から5年。超水道のミタヒツヒト『イマジナリ・フレンド』で小説家デビュー

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ゲーキャスを見ている方で、超水道をご存じの方は多いだろう。AppStoreで、萌えに頼らないノベルアプリをリリースし続ける集団だ。
もともと、そのリーダーであるミタヒツヒトさんは小説家を目指していた。そんな彼が、2011年7月に『森川空のルール』を出してから5年、ついにハヤカワJA文庫より『イマジナリ・フレンド』を刊行してデビューした。
ゲーキャスは過去、一緒にノベルアプリを1週間で作ってリリースしたりもした友人でもあるので、ちょっと良く書きすぎるかもしれないが、帯の推薦文を見るような気持ちで読者の皆さんが見てくれれば幸いだ。

イマジナリ・フレンドのあらすじは、こうだ。
イマジナリ・フレンドとは、孤独な人間だけに見える空想のともだち。悩みが解決されると消えてしまう。他人とのコミュニケーションが絶望的に苦手な大学生 の山持浩之(やまじひろゆき)は、イマジナリ・フレンドのノンノンと一緒に、リアルではひとりぼっちだけれど脳内では幸せな毎日を送っていた――このまま で良いのかと、小さな不安を感じながら。そんな山持を見かねたノンノンは、似たような人々が集まるカンパニーへと誘うのだが……。
イマジナリ・フレンドとは、空想上の友達のこと。
自分自身の心の中にいる友達だから、見える本人に都合の良いことばかり言うこともある。
反面、潜在意識の中の不安などを反映して本人に対して厳しいことを言うこともある。
幼少期に見えるとされており、これを乗り越える(自分自身を乗り越える)ことで、成長し、見えなくなるという。

つまり、この小説は主人公が自分と向き合って、単にイマジナリ・フレンドと別れて成長する物語なんだな……と容易に推測がつく。
そう思って読むと、少し違う。
「カンパニー」に集う人々は、大人になってもイマジナリ・フレンドを持つ変わった人ばかり。
主人公の鏡は、イマジナリ・フレンドだけじゃない。第2の鏡とも言える、イマジナリ・フレンドを持つ人々と出会って物語は思わぬ方向に進んでいく。

いつもの芸風通り、萌えはない。でも、不器用な人々(イマジナリ・フレンドと未だに別れられないのだから!)たちの非リア充な様子と、必死さは懐かしさとか、寂しさとか、そういった心に訴えてくる。
超水道ファン、もしくは青春小説『森川空のルール・再』、懐かしい切り口の『ボツネタ通りのキミとボク』、幽霊サスペンス(?)『ghostpia』(早く続き出せ!)などが好きだった方は、買っても損しないと思う。
ぜひ、手にとってミタヒツヒトさんを応援してあげて欲しい。

関連リンク:
イマジナリ・フレンド (ハヤカワ文庫JA、Kindle版あり)