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ghostpia レビュー - 幽霊の町で記憶を探す物語。怒濤の物量でプレイヤーを引き込む豪華ノベル。

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本日は、幽霊たちが住む不思議な町の物語、『ghostpia』を紹介したい。
『ghostpia』は、すごい。
何がすごいって、お色気に頼らずに不思議で魅力的な世界観を作りだし、美しいイラストと音楽、演出でプレイヤーを引き込むノベルとして成立している。

何より驚いたのは、短時間で読み終わるノベルに109枚ものイラストを投入し、プレイヤーを飽きさせない画面の動きを作り出していること。
圧倒的物量と、それを活かした演出に押され、久々にノベルにハマっている。

今作の舞台は幽霊たちが住む町。
誰も死なない街の住人は、なぜか1024人と決まっている。
雪に囲まれたこの町から出て行こうとする幽霊はいないし、外からやってくることもなかったので、ずっとそれが守られていた。
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幽霊たちは、多くの物を持てない。
なぜなら、その物を持っていることを忘れてしまうと、物は勝手に消え去って「幽霊のゴミ捨て場」に捨てられてしまうから。
おそらく、幽霊たちのあり方は記憶と密接に結びついているのだろう。
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そんな不思議な幽霊の町に、町が始まって以来初めて、外部から幽霊のヨルがやってくる。

一方、主人公の小夜子と仲間たちは町からの脱出を企てていた。
永遠に死なない幽霊の街は平穏な楽園ではなく、「教会」が治安維持や政治活動をしていて、思ったよりも窮屈なのだ。
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小夜子は「教会いずうんこ!」と叫んでしまうような、ちょっと変わった幽霊。
また、彼女はつねに「自分が何かを忘れている」ような感覚に囚われていて、「忘れた何か」が外の世界にあるような気がしていた。
その疑問を晴らすため、車を用意して町の外に出ることにしたのだ。
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そして、外の世界に出ようとする小夜子と、外からやってきたヨルが出会い、この町の物語が始まる。

以上があらすじだが、このノベルは超水道の過去作の中でも演出が素晴らしい。
雪の世界を描いたイラストは青く静かで、美しいピアノBGMに彩られ、不思議な幽霊の町をビジュアルと音の両面で魅せてくれる。
幽霊たち人間にしか見えないが、独特の高音域の言語でしゃべるので、音声から「ああ、彼女たちは人間ではないんだな」と思い出させる。
芸が細かい演出に感心させられた。
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▲一部には歌付きのBGMもあり、『ファタモルガーナの館』の影響も感じる。

また、ストーリーに合わせて次々とイラストが挿入され、画面が次々と切り替わる。
その演出はイラストつきのノベルと言うよりも、漫画に近い。
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イラストの物量と音楽で読者を強制的に『ghostpia』の世界に引きずり込み、不思議な世界観と物語を有無を言わさず叩き込む。
一度ハマると、もう逃げられない。

画面をタッチする反応すら作り込み、『ghostpia』の世界の一部として演出しているこのアプリは(落ちない限り)現実に戻る隙がない。
実際、どっぷりハマって一気に読み終えてしまった。
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最後にもう1つ、このノベルの特徴は連載物、ということだ。
10月6日現在、第1話のみが提供されているが、あまり間を置かずに次の物語も提供されるという。
単に話を分けたのではなく、分割して余韻に浸る時間を作り、読者同士で話して続きを連想させるソーシャルな楽しみ方を目指しているらしい。
よほど面白くなければこういった試みは成功しないと思うのだが、現時点では成功しているように思う。
Twitterなどでは、過去の連載作品『佐倉ユウナの上京』よりも活発にやりとりが行われている。

このアプリは世界に入り込んで物語を楽しく読めただけでなく、先がとても気になる展開で、連載物の1話として良かった。
『ghostpia』はノベル作品の中でもトップクラスの物量と質を短時間に注ぎ込んだ作品で、少なくとも現時点ではとても素晴らしい。
だから、ぜひ皆さんもこのノベルを読んでみて欲しい。

ただ1つだけ、(オートセーブがついているので大変ではないが)アプリがたまに落ちるのだけは早く直してもらいたい。
集中しているときにアプリが落ちると、一気に現実に戻されてしまって寂しいのだ。

評価:3.5(かなり面白い)

課金について

なし

おすすめポイント
美しいピアノとヴォーカルのBGM
幽霊の町の不思議な世界観
先が気になる物語
 
気になるポイント
落ちる
まれに処理落ちして画面が乱れる

(バージョン1.0.1、GCドラゴン)

アプリリンク:
ghostpia (itunes 無料)

動画: