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徹底レビュー『ギャングスター ベガス』(前編)初代から受け継がれるシリーズのアンバランスな魅力とは?

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先日リリースされた最新作『ギャングスター ベガス(以下ベガス)』。
用意された広い箱庭空間で、犯罪も含めて好き放題に行動できる“オープンワールド系”のクライムアクションとしてiPhoneでは高い人気を誇るシリーズの最新作だ。
今回は2回に分けてこのゲームを徹底的にレビューする。

このゲームはオープンワールド系クライムアクション『Grand Theft Auto III(以下GTA3)』のパクリと言われ続けており、それは一面で正しいと思う。
が、このゲームにはもう1つの姿がある。
その時代のスマホの限界に挑み、ひたすら無茶を通すという挑戦を続けているチャレンジャーということだ。
今回はそこにスポットを当て、シリーズの歴史を軽く振り返ってみよう。

ギャングスターシリーズの初リリースは2009年。
ギャングスター West Coast Hastle』として、アメリカ西海岸を舞台にiPhone3Gでも遊べるオープンワールド系ゲームとして制作された。
GTA3がPS2世代のゲームなのに、PSPの半分も性能がないiPhone3Gにそれを落としこむ無茶っぷり。
しかし、iPhone の未来を感じさせてくれる夢が詰まった無茶だった。
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▲車など箱にしか見えない。

2010年9月にリリースされたのが『ギャングスター miami vindication』。
マイアミを舞台に、グラフィックが強化され、バイクやヘリコプターが導入された。
が、今作はやたらにバグが多かった印象がある。
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▲ハマリや落ちるのが多かった記憶がある…。

そして、2011年11月に『レビュー ギャングスター:RIO City of Seint』リリース。
天候の変化や光の表現が追加されただけでなく、それまでマネキンどころか棒人間に近かったキャラクターの映像が格段に進化。
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▲車の後部に光の反射が…!建物も圧倒的にキレイ。

ストーリーではキャラクターに表情や口パクが付ききっちり演技。
演出面の進化も果たした。
ただし、その世界をフルに楽しもうとすれば、当時最新機種だった iPhone4S があったほうがいいという超ヘビー級。
また、ゲームの進化に較べて街が狭苦しく、見た目の進化に較べて物理挙動が微妙という難点を抱えていた。
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▲このグラフィックは当時びっくりした。

そう、常に何かチャレンジし、常に完璧でない頭でっかちのゲームシリーズ。
それが『ギャングスター』シリーズだ。

最新作ベガスの無茶は…物理エンジン“HAVOK”の搭載。
物理エンジンとは、風の流れや衝突による吹っ飛び方など、現実的な物理法則を再現するシミュレーター。
“HAVOK”は中でも、家庭用ゲームでも採用される本格派だ。
前作では「電柱が吹っ飛んでその場でくるくる回っている」とか、車の変な動きにツッコミが入っていたが、今作では全体的に納得行く動きに進化。
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▲車がぶつかった時の動きも良くなったぞ!

「物理エンジン搭載したので、吹っ飛び方を見てくださいよ!」とばかりに、街なかには看板やゴミ袋など、吹っ飛ばせる障害物が並べられている。
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▲不思議な吹っ飛び方をしなくなった。

そして、もう1つの無茶がグラフィックの進化。
iPhone4Sでギリギリだった前作のグラフィックをさらに少しずつパワーアップさせている。
人物のグラフィックもより進化。
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▲オッサン感アップ!

空から見られる風景も進化。
前作では上空から見た建物は味気ないブロック状になってしまっていたが、今作では建物の形を保っている。
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▲クリックで拡大。

車も見比べると、少しパーツが増えて模様が鮮明に。
タイヤが10角形から12角形へと20%ぶん進化。
こんなわかりづらくて細かいパワーアップを重ね、全体から感じる印象としては前作より綺麗になっている。
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▲クリックで拡大。

物の動きに納得感が出て、見た目もよりリアルになる。
箱庭ものとしては正常な進化だが、前作でもiPhone4Sでもギリギリだったいっぱいいっぱいだったのに、今作はさらに無茶をして…当然ながらそのしわ寄せはやってくる。
そう、前作と同じく最新ハード以外は「なにか」が間引かれるのだ。

下のスクリーンショットはiPad mini(iPhone4S相当の性能)のもの。
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そして、こちらがiPhone5。
地面の模様がよりはっきりしているとか、建物の光の反射がはっきりしている。
そして、なにより重要なのがその交通量。
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iPad miniは最大で3台までしか車がやってこないので、街は少し寂しい。
おそらく、物理エンジンを積んでいるため車1台あたりに消費されるハードパワーが大きく、大量に表示できないのだろう。
iPhone5では最大6台、動いてないものも含めて10台まで画面上に乗用車を表示できる。
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さらに、CPUが操作する人のAIも退化。
車は全く障害物を避けないし、行動パターンもほとんどない。
銃撃戦でも動きは非常に単調。
おそらく物理エンジンを積んでいるため(以下略)。
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▲銃撃戦時、横に回りこんだらまったく向き直ってこなかった敵AI…。

モダンコンバット4』でも同じく“HAVOK”を使用していることで話題になったが、道が決まったゲームと、広い空間を自由に動けるゲームではその負荷が違う。
しかし、あえてそれをやってしまうところが『ギャングスター』シリーズである。

「ほらよ、お前らが物理シミュレートに突っ込みまくったから解決してやったぜ!HAHAHAHA!
ついでに街も狭いと言っていたから9倍の面積にしといたぜ!
処理落ちしても知らんけどな!」

そんな声が聞こえてきそうなアンバランスさと、最新ハードに合わせて作られた映像を楽しめるのがこのシリーズの良さ。
そういう意味でベガスは正当なシリーズの続編であり、正当進化として産み落とされている。

しかし、今作ではそれ以外にも大きな変化があり、残念ながらゲームとしての質は大きく落ちてしまったように思う。
ゲーム説明の前に見た目の進化の話が先にきてしまったが、後半徹底レビュー『ギャングスター ベガス』(後編) シリーズもう1つの魅力と、失ったものとは?で今作のシステムの説明と全体の評価を語りたい。

アプリリンク:
ギャングスター ベガス 600円 + iPhone/iPadの両方に対応