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レビュー:モダンコンバット4:Zerohour さらに家庭用クオリティに近づいたゲームは何を見せるのか

モダンコンバット4:Zero Hour(Ver1.0) 700円 iPhone/iPadの両方に対応
課金:アプリ内通貨購入(通常プレイでそこそこ入手可)
開発:Gameloft
評価:3.0(面白い)
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物理エンジンを利用した演出
最高クラスのグラフィック
オンラインモードのマップやシステムは進化
初期設定では操作しづらすぎる。
細かい部分で粗が見える。
オンラインモードのお手軽感は薄くなった。
iPhone の FPS 最高峰、モダンコンバットシリーズについに最新作が登場。
このシリーズは毎回、その時点での iPhone 最高のグラフィック・ゲーム内容にチャレンジし、「どこまでスマホゲームが家庭用に近づけるのか」を追求しているシリーズ。
前作である『モダンコンバット3:Fallen Nation』は、家庭用の大作ほどではないが専用ゲーム機用のゲームと考えてもいいぐらい充実した内容で楽しめた。
そしてさらに家庭用のゲームに迫る内容を目指している今作はどうなっているのだろうか。
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まず注目したいのはグラフィック。
ぱっと見は前作と同水準に見えるが、武器のディティール、人物のクオリティ、動きなどが全てグレードアップし、細かく強化されている。
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▲前作は一般キャラがヘボかったけども、今作はかなりきれい。

さらに今回は物理法則をシミュレートするエンジンが組み込まれ、敵の吹っ飛び方などもリアルに。
壁やガラスが壊れたり、書類が舞い散ったりとそれを活かした演出が組み込まれているのも特徴。
途中のステージでは色々なものを壊せるのがなかなか楽しい。
ここまでくると「家庭用クオリティ」を本当に実感する。
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▲ガラスがバリバリ割れるのは気持イイ。

物理エンジンを搭載したゲームの常として、死体が変なところにハマったり、敵が壁にめり込んでみたりとゲームに支障がない変なバグも発生しているのはご愛嬌。

▲震える死体…最初は高速回転もしていたけど動画で撮れなかった

ゲーム部分は基本的には前作と同じ、敵を撃って先に進む主観視点のアクションシューティング。
アナログスティックで移動し、画面をドラッグして視点を動かし、射撃ボタンで敵を撃つ。
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ゲームの基本はすでに完成されていて楽しめたが、前作は本当に1本道だった。
だが、戦場に敵を側面から攻撃できる迂回路が多く設置されており、少し戦闘が楽しくなっているのが好感触。
また、新要素のドローンによる射撃、お馴染みの狙撃ミッションなどのミニゲーム的なステージも前作より楽しくなっている。
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ストーリーも敵のボスであるエドワード・ペイジと主人公の視点を切り替えてプレイするというマルチ視点が導入されて工夫しようとしているのが見て取れる。
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▲でも効果的かと言われるとあと一歩。

前作を全体的にパワーアップさせた内容で、基本的には面白い。
面白いが、今回は粗が目立つ。

ジャイロセンサーを使っていると特に感じるのだが、カメラがぶれ、ジャイロセンサーはいつの間にか基準点がずれ、ダメージを受けると画面が逃げるどころではないほど赤くなって操作が難しい。
また、やたらに画面がボケたり戻ったりを繰り返して目が疲れる。
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▲「身を隠せ!」いや、周囲が見えませんから…。

これらは今作から導入されたサポートシステムや、リアルさを追求する新機能が引き起こしたもの。
リアルなカメラを実現する「カメラスムージング」や血の表現をきつくする「ゴア表現」がダメージを受けた時の画面を見づらくし、「カメラオートセンター」がジャイロセンサーを狂わせる。
快適なゲームのためにはこれらをオプションでオフにする必要がある。
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▲作ったから使えってのは開発者のエゴだと思う。

もう1つ問題は初期のボタン配置。
射撃ボタンが小さい上、近くに「ダッシュ」ボタンと「照準」ボタンがあるので誤操作も多い。
オプションの「HUDカスタム」で射撃ボタンを大きくし、ある程度ボタン位置の調整を行わなければプレイしづらいはず。
これはちゃんと調整時間を取っていれば解決できた問題のはずで、テストプレイを疑うレベルだ。
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▲射撃ボタンと照準ボタンの近さがおかしい…。

敵 AI の行動パターンは増えてパワーアップ…しているはずなのだが、できることが増えたことに対応しきれていない。
手榴弾を投げることが増えたが、投げる方向をミスして自爆するならいい方で、狙撃しているプレイヤーに投げて(距離的に当然届かず)自滅することも。
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▲狙撃スコープで狙っているのに…その下には手榴弾を投げる敵が。

また、前作よりも画面の演出が豪華になったのはいいのだが、敵が見づらかったり、ヘッドショット演出がなくなったこともあって爽快感にも欠ける。
大枠はいいのにゲームの細部はしっかり調整されていない未完成感がある。
結果としてシステムやグラフィックは進化したものの、1人用のゲームとしての面白さは減ってしまった。

では、オンラインはどうだろうか。
今回は「ベアナックル(ミリタリーサポート・パークなし!)」「ウォーゾーン(ゾーンコントロールの亜種)」などの新ルールが採用され、ゲームルールが増えてパワーアップ。
今回さまざまな銃をカスタマイズしたり、プレイヤーのパーク(特別なスキル)を取得したりする要素が追加されている。
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パークはレベルアップで入手し、すべての装備(前作では最初からあったミリタリーサポートも含む)はゲーム中手に入る通貨で購入する必要がある。
初期は本当になにもない上、銃の命中精度が結構低いので、気軽にオンラインから「ゲーマーがやりこんで装備を強化していく」オンラインモードへ変化。
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ステージは家庭用のゲームと同じぐらい複雑な地形に進化し、極めるならばやりごたえのある内容に。
これは本当に、家庭用レベルのマップ構成と言ってもいいすぎではない。
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サーバーは安定しており、前作のステージも少し手を入れられて入っていたりとサービス満点。
ゲームマッチとログインに時間がかかるものの、一旦始まってしまえばストレスはゼロ。
オンライン対戦に関してはさすがのゲームロフトといえるだろう。
オンラインに関してはカジュアルゲーマーにとっては退化、本気のゲーマーにとっては進化、といったところか。
あとは前作あったプレイデータの巻き戻り(プレイしてもデータが反映されない)が発生しないことを祈るのみか。
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全体的に見て、『モダンコンバット4』は確かに「家庭用クオリティ」の言葉の通りに進化をみせつけてくれた。
物理エンジンが組み込まれ、グラフィックはPS2はとっくに超え、マップの複雑さもついに並んだ。
開発者たちは高い理想を持ってこのゲームを作り上げたのだろう。

しかし、操作性(これはオプションで調節できるし)や細かい粗さを除いて考えても前作よりも楽しめていない。
演出がすごくてもスマホの小さな画面では見づらい(iPad ならば問題ない)ので、納得行かない箇所がいくつかあった。
家庭用で納得できる演出でも、スマホでは納得できないことがある、と感じた。
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▲照準より着弾点が少し下ってのは、家庭用の画面サイズの説得力が許す演出だと思う。

オンラインプレイのマップは家庭用並みに進化しているが、家庭用並みのコミュニケーション手段がないと複雑さに対応した戦術がとれないし、装備を買うのにも時間がかかるので思い立った時に気軽にプレイする感じではなくなってしまっている。

家庭用のゲームをスマホに移植するとき、演出やゲームの手軽感など、スマホに向けた一定の翻訳が求められる。
ゲームロフトは家庭用ゲームを作りたかったが、ハードの性能が追いついていなかったのでこれまではそのように作ってきた。
が、iPhone4S で飛躍的にハードの性能が上がり、今作はそれを無視して一足飛びに家庭用を目指してしまった。
その結果、スマホと家庭用ゲームの谷間とも言える場所に落ち込んでしまったのではないだろうか。
スマホゲームが目指すところは家庭用の複雑さではなく、スマホゲームとして別の着地点なのだろう。

欠点の指摘が多くなってしまったが、ちゃんと操作オプションを指定して遊べば確実に値段以上のクオリティはあるので、iPhone4S、iPod touch 5G、iPad2 以上を持っているならば楽しめるはず。
iPhone4S では処理落ちが騒がれているが、再起動してからゲームをプレイすればプレイ自体には問題ないし、グラフィックのクオリティは iPhone5 と同等(フレームレートが落ちる)。
最新の映像クオリティを体験したければこのゲームしか無い。

アプリリンク:
モダンコンバット4:Zero Hour(itunes) iPhone/iPadの両方に対応

動画:


2012.12.6.16:22 追記
文中にデータ巻き戻しについて触れる部分を追記しました。