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徹底レビュー『ギャングスター ベガス』(後編) シリーズもう1つの魅力と、失ったものとは?

徹底レビュー『ギャングスター ベガス』(前編)では、“限界に挑戦する無茶”という魅力を語ったが、『ギャングスター』シリーズにはもう1つの特徴がある。
それはスマホ向けに簡易化されたGTAという立ち位置だ。
面倒な移動を簡略化し、細かいチェックポイントでやり直しを容易にし、より楽に遊べるゲームに仕上げているのがこのシリーズの特徴なのだ。
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▲マップから選択するだけで即座にミッション開始!

『ギャングスター ベガス』を見ると、アナログスティックで移動し、攻撃ボタンで攻撃、ダッシュボタンでダッシュするというオーソドックスな3Dアクションゲームの操作は変わっていない。
壁に隠れたり、乗り物に乗るボタンが適時表示されるぐらいか。
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▲新規操作は殴り合いのとき、攻撃ボタン長押しで強攻撃という要素が加わっているぐらいか。

乗り物に乗っている時の操作も少し変わっているが、基本は前作を踏襲している。
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しかし、実際にプレイしてみると今作は今まで以上に簡略化されていることがわかる。
銃撃戦はオートロックオンが強力になり、ほとんど攻撃ボタンを押しているだけでも勝負がつく。
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前作と比べてミッションの難易度が下がったほか、お金さえあればミッション中でも銃弾・回復アイテムなどが購入可能。
お金もドカドカ手に入るので、軍事基地に忍びこんで撃たれるなどガチ即死系の事故がなければゴリ押しできる。
買い出しのために移動しなくて良くなったのも嬉しい。
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▲車だろうが、銃器だろうがなんでもメニュー画面から買えるぞ!

それでも難しいならストーリーGameCenterやFacebookの友達に頼めばミッション自体を飛ばすことも可能。
また、飛ばしたとしてもミッションは何度でもやり直し可能なので、後からクリアすることもできる。
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▲SOCIALの項目からスキップ。ソーシャルとは言えお助け機能なので、なくても全然問題ない。

ミッションは成功させると経験値がたまってレベルアップし、様々なスキルにポイントを割り振るシステムも導入された。
スキルは銃の射撃速度アップから、警察に見つかりづらくなる“ワイロ”まで様々な能力があり、どうしても苦手な項目があればスキルを強化して克服できる。
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▲なお、スキルは割り振らなくてもクリアは簡単だった。

これらの要素の追加で、今作は全シリーズ中トップの簡単さと、お手軽さを併せ持ち、「気楽に詰まることなくクライムアクションを楽しむ」ゲームとして進化したと言える。

その他に大きな変更点としては、不動産やアイテムの所有と上位アイテムの概念。
不動産はマップ各地にある店を買収し、現実時間で一定の時間がたつごとに収入を得られるというもの。
少しゲームをすれば買える程度の価格で、買った不動産の位置までワープできるようになるというおまけもつく。
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▲欲を言えば購入した店には入れるようにして欲しかった。

アイテムについては拾ったアイテムと購入したアイテムを事故の所有物として保管することができるようになり、一度所有したらいつでも持ち替え可能になった。
大量に手に入れたら裏ショップで合成し、上位アイテムにすることも可能。
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▲金で全て買えるのでアイテムを集めるのは必須でないし、基本アイテムで十分クリア可。

で、そうすると街の人を倒して物を手に入れるのが圧倒的に楽しくなる。
高級車だろうが、上位アイテムだろうが容赦なくドロップするのでこれがかなり楽しい。
正直、開始して30分で初めて倒した警察から“警察ヘリの鍵”が落ちて、無茶し放題になったときは目を疑った。
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さらに、街なかには裕福な人がいて、問答無用でぶっ倒すと高級品を落とす。
町の人を殺してアイテムをコレクションするのが楽しい、クライムアクションゲーム…という変なオリジナリティがついてしまった。
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▲ブリーフケースが頭に浮かんでいるのは金持ちの印。倒せ!

光あれば影ありというところで、気になるところもある。
歩行操作が少し面倒になったり、乗り物に乗る時にキビキビ動かないなど細かい点が最初はすごく鬱陶しいし、武器にレベルが導入されたせいか敵が固くなったのは大いに違和感がある。
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▲一般人がちょっと焼かれたぐらいじゃ死なないとか…。

銃撃戦の簡易化は人によっては嫌だろう。
しかし、自分にとって大きかったのはこれまで紹介してこなかったグラフィックやシステム面以外でのスケールダウン感だ。

このシリーズはストーリーが魅力的だったが、今作はトーンダウン。
犯罪に手を染めながらも、それを納得させるだけの動機や人間関係があった前3作の主人公たちに比べ、人間関係の描写も希薄でいまいち物足りない。
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▲主人公もなんとなく流されている感。

また、前作ではキャラクターたちが動いて細かい演技を見せていたが、そういった描写が少なくなってしまっている。
シリーズお約束のストーリー分岐もなくなった。
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▲車に乗っているか、つったって話しているだけが増えたような。

ライトアップされた豪華な建物や高級住宅など、ラスベガスっぽい街全体としての雰囲気はある。
カジノでスロット・ブラックジャック・ビデオポーカーが楽しめるのもいい。
だが、意外なところにある名所的なものはあまりない。
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だが、細かい作り込み…おまけ要素が足りない。
タクシーを奪った時に発生する客の送り届けミッションなど、お約束の隠しミッションがない。
自販機を攻撃したら缶ジュースが出てきたり、走っていたら実はAIはみんな交通ルールを守っていたなどの意外な行動もない。
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オープンワールドで大事な「発見の楽しさ」と、シリーズ伝統のストーリーなどの見た目ではないところの物量が大幅に削られてしまったのだ。
発見の面白さを求める方は『Grand Theft Auto:Vice City』を購入したほうがいいだろう。
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▲GTA。事故を起こせば野次馬、襲い掛かれば車で逃げ…AIすごい。

物理エンジンを搭載してグラフィックを強化し、街は広くなって、プレイスタイルもスマホならではの簡易なものとして進化させ、GTAとの差別化も強化されたのは良い。
街の人を殺してアイテムを集めるという、やっていいのかわからないお遊びも追加された。

が、表面的なところを進化させるのに全力を注ぎすぎて、細かい部分や作り込みが必要なところでは力尽きてしまった感じがシリーズのマニアックなファンには残念なところ。
自分としても、前作のほうが楽しいし、完成度も高く感じる。

それでも“お手軽クライムアクション”、“最新機で無茶をする”というお約束を守っており、そういった意味ではシリーズの意義を果たしているし、価格に比べれば十分に内容はあると言える。

人を殺すような犯罪ものだし、面白さがマニアックなところもあるので誰にでも勧められる内容ではない。
この記事を読んで、惹かれるならば(そしてiPhone4S以上を持っているなら)試す価値は十分あるだろう。
実際、自分としては無茶っぷりを楽しめたので、それだけで元はとれ、シリーズの無茶っぷりが衰えないうちは、自分がシリーズのファンであり続けるだろうと再確認できた1作だった。

アプリリンク:
ギャングスター ベガス(itunes 600円 iPhone/iPadの両方に対応)
Grand Theft Auto: Vice City(itunes 350円 iPhone/iPadの両方に対応)