かつて、2D系ハードを支えてきた超ド王道の2D横スクロールアクションゲーム。
たとえば、任天堂ハードの『スーパーマリオブラザーズ』、メガドライブの『リスター・ザ・シューティングスター』。
スマホでしか成立しない、タッチパネルだけを考えた操作で、そういったアクションの面白みを味わえるゲームが登場した。
『Downwell』数多くのインディーゲームを送り出したDevolver Digitalの新作『Witcheye』である。
スマホで王道の横スクロールアクションを遊ぼうとしたとき、問題となるのはいつも操作性だ。
タッチパネルには物理ボタンがないので、ボタン操作を前提とした操作性では物理コントローラーに劣ってしまう。
その問題を解決すると、なんだか王道横スクロールアクション感がない。
それを解決したのが『Witcheye』というわけだ。
まず、本作はスワイプとタップだけ操作できるようにゲームを作り、ボタンを排除して操作性を解決している。
▲画面にはボタン類は一切なし。でも操作に困らない。また、左下部分にほぼ敵が出ないので指で重要な場所が隠れることもまずない。
プレイヤーは道具を盗まれた魔女となり、盗人を追って全6ワールド、50ステージを“魔女の眼”を操作して踏破する。
“魔女の眼”は常に空を飛んでおり、画面をスワイプするとその方向に移動を開始し、直進を続ける。ボタンを押し続ける必要はなく、進路を変えたくなったらまたスワイプすればいい。
シンプルな移動操作で画面中を縦横無尽に飛び回れるはずだ。▲魔女の眼は、敵や障害物に当たると跳ね返る。それを制御するのもテクニックの見せ所。
これだけなら『SphereKnight』など過去に多くのゲームが採用してきた操作方法だが、『Witcheye』は画面をタップすると“魔女の眼”がその場に静止する操作を盛り込んで差別化を図っている。
実は、アクションゲームでの「スワイプした方向に移動」という操作にはよく知られる問題がある。
人間は精密動作をするようにできていないから、脳で考えた“移動したい方向”と、“指がなぞる角度”には微妙にずれが生じるのだ。
結果、微妙にずれて「思ったように操作できない」とストレスを感じてしまう。
この問題に対処するため、同じスワイプ操作を盛り込んだ『TIME LOCKER』のように4方向にしか動けない(多少ずれても4方向なら問題ない)ように設定していたり、バーチャルスティックで細かく移動できるように制御したりする。
『Witcheye』では、停止操作を盛り込むことで「精密な動作が必要なときは止まってから動いてね」と、設定しているわけだ。
▲わかりづらいけど、その場で静止している。静止してタイミングを見て動くと楽になる場面はかなり多い。
おっと、操作の説明ばかりしてしまった。
で、「これのどこがゲーム機作品のような王道アクションなの?」と疑問に思うかもしれないが『Witcheye』は操作の問題を解決したうえで、その操作で遊べる王道アクションを構築している。
1ステージはおよそ2分程度でクリアできて遊びやすい。しかも、その短い中できっちり緩急がある。移動して障害を回避する場所、敵の攻撃が激しいバトルルームなどが交互に登場し、マンネリを防ぐ。
▲バトルルームでは敵を倒して鍵を手に入れるまで先に進めない。普段倒し慣れている敵でも、配置によっては倒しづらかったり、専用の敵が出てきたりと激しく遊べる。
さらに、2ステージに1度は新しい敵や新しいギミックが登場し、プレイヤーに刺激を与える。
ステージの風景も頻繁に変わり、視覚的にも飽きない。
▲水中では魔女の眼が浮力で浮こうとする。これを利用すれば高速で上昇も可能…。
もちろん、ワールドの最後には巨大なボス敵がいて、戦いは盛り上がる。敵のパターンはある程度分かりやすく、かつ慣れなければ苦戦する……そんな丁寧なつくりのアクションゲームとなっている。
▲魔女の眼は、基本的に体当たりで敵にダメージを与える。
操作も、主人公の能力に関しても、このゲームはオリジナルを貫いている。
しかし、各所のギミック、ボスなどを見ていくと「あ、これはマリオのハンマーブロス的なやっかいさだな」とか、「この敵は別のゲームのあれだ」という感じで、解法は懐かしのアクションゲームのもの。
つまり、新しいゲーム性で、古き良きアクションゲームの面白さを再現しているわけだ。
もちろん、『Witcheye』はただ古いゲームではない。
プレイヤーに優しい近代的なつくりでもある。
例えば、初めて目にする敵に攻撃されて、何もわからないうちに倒れる“初見殺し”がないよう、初めて登場する敵がいれば、その近くには必ず回復アイテムが配置されている。
言い忘れていたが、本作はライフ制を採用しており、ステージ中で5回攻撃を受けるまで倒れることはない。
倒れたときはステージの最初からやり直しとなるが、1ステージ2分程度なのでリトライのストレスも低い。
ステージには緑の宝石3つと、発見が難しい青の宝石が隠されており、これを見つけるコレクションのおまけも。
▲各ワールドには1つ魔法のアイテムも隠されていて、それは特別見つかりづらい場所に隠れていたりもする。
ただ、探し物・コレクションの惜しさを感じる要素でもあって、中盤以降はあまり楽しめなかった。隠し場所のパターンがマンネリ化するし、難易度が変わっても隠し場所は変わらない。
あまり気合を入れて隠されても見つからないだろうし、これはこれで仕方ないのだろうが……もう少し、ここは工夫が欲しかった。
とはいえ、欠点はその程度。ゲーム全体としてみると、自信をもっておすすめできる。
ボリュームとしては1ステージ2分で、合計6ワールド50ステージ。
単にノーマル難易度をクリアするならボリューム不足だが、合計で3つの難易度と最高難度をクリアした後で楽しめるボスラッシュ、スピードランモードが用意されており、特にボスラッシュで次々戦うのは楽しいし、スピードランは通常プレイと明らかに違う遊び方ができて良かった。
ゴースト(過去のプレイを再生しながら遊べる)機能もあって、作者としてもこのモードに気合を入れているのを感じる。操作が快適だし、作りが丁寧で気楽に遊びたいプレイヤーも、やり込み派のゲーマーにも楽しめる1本。
新しさはないが、スーパーファミコンやメガドライブで楽しめたような、堅実なアクションをスマホで探しているなら、『Witcheye』はまさにそれだろう。
概要:
スワイプ操作で空を飛んで移動する横スクロールアクション。
評価:7(要チェック)
おすすめポイント
丁寧に作られたステージ構成
豊富なモードと難易度
ギミック豊富で飽きないステージ構成
気になるポイント
ハードモードは最初から遊べても良かった
中盤から探し物がマンネリになって面倒になる
アプリリンク:
Witcheye (itunes 360円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発: Moon Kid(米国)
販売:Devolber Digital(米国)
HP:https://www.devolverdigital.com/games/witcheye
レビュー時バージョン:1.1
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。動画:
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも色々情報発信中。