海外ゲームが好きすぎて、海外ゲームをライセンスインする仕事についてしまった海外ゲーのプロ、きたむらさんによる中国スマホゲーム紹介第3弾。
任天堂のマリオやクッパがカートに乗って競う『マリオカート』は、ゲーム機で人気のレーシングジャンルでもトップの人気を誇るゲームの1つだ。
スマホでも、任天堂とDeNAの共同開発タイトル『マリオカートツアー』が開発中で、すでにCBTまで実施されてリリース準備が進められている。日本のスマホゲーム市場ではレーシングジャンル自体がメジャーではないが、これがパイオニアとなって日本のスマホレーシングジャンルも花開くかもしれないと、私としても期待しているゲームなのだが……。
それより1足早く、お隣の中国ではビッグなレーシングゲームがリリースされて人気を獲得している。しかも、やってみると本当に面白い。今日はその『跑跑卡丁车官方竞速版(カートライダー)』を今日は紹介したい。
『カートライダー』は、もともと韓国で人気を博したPC向けレーシングゲームで「ゲーム性がマリオカートそっくり」と言われていたもの。
そして、スマホに出てみると……やはり、想像以上にマリオカートだった。
どんなゲームなのかを知ってもらうには、動画で見てもらうのが一番早いだろう。テンセントの新作スマホゲーム『カートライダー』
— 喜の向くままスマホゲームブログ管理人(きたむら) (@kinomukumama777) July 9, 2019
内容はまぁマリオカート(直球)だが、触ってみた感じ、先輩ともいうべき『QQ飞车』と比べてそこまで大きな違いはないような気もするしどちらも面白い pic.twitter.com/glO7bq3psS
……想像以上にマリオカート、と述べた意味がお分かりいただけたのではないだろうか。
訴訟になるほどそのままではないが、系列ゲームであるのは理解できるだろう。
とはいえ、なめて良いゲームでもなく、「そりゃあマリオカートが面白いんだから、(マリオカート似の)このゲームも面白いに決まってんじゃん」という感じで遊んでみると面白い。
操作はスマホに最適化してあり、レースが始まるとカートは自動で直進してくれる。プレイヤーの操作は左下の左右キーで進行方向を調整しつつ、右下のキーでドリフトを決めるだけだ。スタミナのような概念はないので、好きな時に好きなだけ最大8人でのレースを楽しめる。
レースモードには、いくつか種類がある。ドリフトテクニックを駆使したガチンコ勝負をしたければ通常のレースモードやランクマッチで腕を競える。
コース上のアイテムボックスから他プレイヤーへの妨害などに使えるアイテムを取得できる“アイテムレース”なら、パーティーゲーム感覚で仲間内で肩肘張らずに楽しめる。
1人で遊ぶ時もストーリーモードやタイムトライアルがある。
いわゆるギルドに相当する「倶楽部」も存在し、集まった仲間とも楽しく遊べる。
ゲームに疲れてしまったら“小屋”でひと休みすることも可能。
小屋は箱庭ゲーのように飾りつけ可能で、他のプレイヤーの招待もできるのでコミュニケーション面も充実させられる。
モードの説明などが終わったところで、肝心のプレイの感想だが……これが、すごく面白い。
とにかくドリフトが楽しくて、これで腕の差が出まくる緊迫のプレイが待っているのだ。
本作のドリフト”はとてつもなく大きな要素で、テクニックの見せ所となる。
レース中、画面中央下のゲージが貯まると加速用のアイテムに変換される。ゲージは走行しているだけで貯まるが、ドリフトを決めているときはより多く貯まる。
レースゲームである以上、誰よりも速く走りきることが目的になるから、加速できる回数は多いほどいい。直線のコースでも、普通に走るよりドリフトを決めながら走ったほうが速い。
だから、みんなドリフト三昧だ。
だから、みんなドリフト三昧だ。
しかも、ドリフトにもいくつかの種類があり、コースの形状や状況に合わせて適切なドリフトを使い分けるテクニックが要求され、レースの勝敗もプレイヤースキルが多分に影響する。
1試合3分。プレイヤーのテクニックで競い合い、ギリギリの勝負ではドリフト1回の失敗が運命を決めるバトルがコンパクトに展開され、熱中度は非常に高い。
こういったレースゲームは過去にもあったが、スマホになると課金・ガチャで面白くなくなる心配がある。それについても『カートライダー』は課金要素がゲームを壊さない。
各カートには若干の性能差があるが、プレイしてみての感想としては、重要度として“プレイヤースキル>カート性能”であり、「性能のいいカートを持っていなかったから負けた!」という考えには至らなかった。また、ドライバーはほぼレースに影響を及ぼさず、レース後のプレイヤー経験値ボーナスなどの効果が主となっている。その程度の差だ。
「カートに性能差があるなら結局Pay to Winじゃないのか」と声をあげる方もいるかもしれない。
しかし、カートの多くは好きなものを直接購入できるので、ガチャの結果によって入手できた/できなかったという不公平感は生まれにくい。
それに、先に述べたようにプレイヤースキルがものをいう以上、多少カートに性能差があってもテクニックを磨いて勝つという選択肢だって当然出てくる。他と比べわずかに優秀なドライバーもゲーム内通貨で買えるので、「たくさん遊んで買ってね」という設計にもなっている。
▲実は最初「ガチャなどない!」と書いていたが、今週にガチャ機能が入ってしまった……それでも、ガチャが大きな影響を及ぼすことはなさそうだと思っている。
こういった「課金しなくてもゲーム体験としてとても楽しい」ゲームが『カートライダー』で、遊んでいるととても大きな可能性を感じる。
近年、課金で勝敗が決まるPay to Winではなく、プレイヤーの技量で勝敗が決まるスマホゲームが増えてきた。
『PUBG MOBILE』をはじめとするバトルロイヤルや『Identity Ⅴ(第五人格)』はその代表格であるが、『カートライダー』もスキルゲームで、かつ“1プレイの短い”という独自の特徴があるので、そういったゲームに肩を並べるかもしれない、と思っている。
100人で戦うバトルロイヤルでは、最後の1人になるまでに1プレイ10~15分はかかる。『第五人格』にしても、早く終わったとして1プレイ5~7分はかかるはずだ。
だが、『カートライダー』の1レースは3分かからない程度で終わる。電車で1駅分移動するだけのスキマ時間でも1ゲームが完結する。それだけの短時間で己のテクニックをぶつけ合う真剣勝負ができる。
短時間での手に汗握る勝負をスマホで実現した『カートライダー』は、ターゲットになるプレイヤー層がかなり幅広いように思われ、中国市場では登場と同時にヒットを飛ばしており、『マリオカート』の機先を制する形で伸びつつある。
この勢いで日本上陸となれば大ヒットを飛ばす可能性は十分にあるし、競技性もあるのでeスポーツの新タイトルとしても検討の余地がある。
ぜひ、中国アプリができるなら『カートライダー』を試してみて欲しい。
▲静止画より、動画で見るとそのクオリティがわかりやすい。
そして、ここからはちょっと逸れるけども、今思っていることを少し。
中国市場は人口が膨大であるため、ヒットさえ飛ばせば課金は薄くても儲けられる。結果、Pay to Winではなくともゲーム性が認められてヒットすれば一気に収益をあげられて、主流に躍り出ることが可能だ。
実際、2017年末に中国で出た『QQ Speed』というレーシングゲームも人気を博しており、非Pay to Winなゲームジャンルにおいて中国は日本より先に行きつつある実感がある。
いま、スマホ上では新しいゲーム体験ができるタイトルが国内外問わずどんどん出てきている。『カートライダー』もその1つで、私はそんなゲームを見つけるたびに楽しい気持ちになる。
そういった流れの中で、『マリオカートツアー』が日本的な強烈なPay to Win系課金から抜け出したうえでビジネス的にも成功を収め、『カートライダー』を超えられるか、なんてところにプレイしながら興味を惹かれてしまう。
だがそこはCBT、正式リリース時には全く違った姿を見せてくれる可能性も十分ある。
現状、『マリオカートツアー』は『カートライダー』に後れを取っていると言わざるを得ない(リリースしてないのだから当たり前なのだが……)。
だが、後発であることのメリットもあるのでお互いが意識し合って(いい意味で)バチバチ戦った結果、プレイヤーが面白いと思うコンテンツが作られていく流れを期待したいところだ。
ライター:きたむら
趣味で海外ゲームを遊んでいたら、いつの間にか会社で海外ゲームのライセンスインの仕事をするようになっていたというガチの海外ゲーム好き。喜の向くままスマホゲームブログを運営。