ゴミ集め大好き。
すべてを飲み込んで成長する穴をリモコン操作し、穴を使って地上からさまざまな物体を地下に送り込みパズルゲームが『Donuts County』である。
開発は『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』などユニークな作品に参加したインディー開発者、Ben Espositoさんで、その経歴が示すとおり本作もまたユニークなゲームだ。
豊かなビジュアルの中で、予想もつかない不条理や遊び心がプレイヤーを待ち受けている。短いが、おもてなしが詰まったゲームである。
本作の魅力は、細部まで遊び心に満ちたゲームのつくりにある。
本作はパズル&物語のゲームで、少女ミラとアライグマのBKの掛け合いをメインに物語は進行するのだが……。
ここの日本語訳がまた面白くて、「爆」とか「笑」とか、スラングまで含んだセリフが心に引っかかる。同時に、アライグマのBKの人格破綻者っぷりがまたすごくてヤバい。BKくん、見た目は可愛いのに気分が悪くなるほど人格破綻してるのだ。
▲この意味はゲームをプレイして感じて欲しい。
おっと、少しそれてしまった。そう、遊び心だ。
下のようなLINE風のチャットアプリで話すとき、普通に返信すればストーリーが進む。しかし、ストーリーを進めない遊びも用意してあり、スタンプボタンで煽るとBKも煽りを入れてくる。
ここで無限に煽りあいを繰り返すことも可能。
導入シーンのタイトル文字は触って破壊できるし、エンディングもちょっとした遊びが入っている。世界観、グラフィック、そして本編に関わらない遊びに好奇心をくすぐられるのだ。
そして、ゲーム本編はと言うとこちらはちょっとしたアクションのあるパズルゲームとなっている。
ゲームの軸は、ものを飲み込むたびに大きくなる穴を操作する“逆『塊魂』”とでも言うべきシステムだ。
プレイヤーはドラッグ操作で穴を移動させ、穴より小さいものを見つけてはどんどん飲み込んでいく。
▲操作性は良好。
穴に落とした物は、図鑑に登録されて眺められるようにもなる。図鑑に登録された物体すべてに独自の説明テキストが用意されており、これを眺めるのもまた楽しみの1つだ。
▲図鑑があるのは良いゲームの証拠
そして文字を飲み込むたび、穴は際限なく巨大化していく。
一定以上大きくなると視点が切り替わり、周囲の大きなものも巻き込めるようになる。
そのまま物体を飲み込んでいくと、最終的に穴はスクーターを乗り回していたペリカンさんよりも大きくなり……。
最後はすべてを飲み込んでステージが終わる。
クリア後はまた会話シーンがはさまれ、物語が語られて次のステージに進む。これをエンディングまで繰り返すゲームとなっている。
▲ドーナツ(穴)をデリバリーして落としてやったぜ!ここまでの説明と画面から受ける印象で、往年の名作『塊魂』やスマホのヒット作『Hole.io』のように次々とものを巻き込んで成長し、ゲーム世界をスケールさせていく爽快感を期待する方もいることと思う。
しかし、『Donuts County』はゲームプレイはパズルであることを徹底していて、アクションや急速な成長の爽快感はない。
もちろん、操作の気持ちよさとか、物を吸い込む気持ちよさはあるが、あくまでパズルゲームとしての範疇だ。
その代わり、前記のゲームには存在しない楽しさもある。
例えば、火のついた炉を穴に吸い込むと……。
プレイヤーが操作する穴から黒煙があがり、それを利用した仕掛けを利用できるようになる。穴を変化させ、謎を解くパズルが用意されているのだ。
水場なら水のパズルがあるし、先に進めば地形を利用したパズルも存在する。穴に物体を落とす気持ち良さに加えて、可愛い世界観、世界観に合わせた演出のパズルが用意されている。
欲を言えばパズルの仕掛けでもっと悩んだり、アクションの爽快感も欲しかったが、「ゲーム要素が強い物語」として作られているので、それはゲーマーのワガママな注文だろう。
誰でも止まらずに進める難易度で、プレイは通して2時間程度。
やり応えや、駆け引きは存在しないが、プレイの間秘められた遊び心と演出を楽しめるパズルになっているので、動画を見て世界観にひかれたらぜひ試してみて欲しい。
評価:7(要チェック)
おすすめポイント
可愛いグラフィックと世界観
強烈な会話と日本語訳
遊び心ある仕掛けの数々
注意点
やり応えのようなもの、アクションの爽快感はない
物語や雰囲気重視のゲーム
アプリリンク:
Donut County (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / Steam)
開発:Ben Esposito(US)
販売:Annapurna Interactive(US)
レビュー時バージョン:1.0.2
課金:なし
公式ページ:http://donutcounty.com/
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: