続編物のゲームには2種類がある。前作を遊んでいるとより面白さが上がるもの、前作を遊んでいないと楽しめないものの2つだ。
近年「前作ありき」の作りは客層を狭めるので嫌われているが、贅沢なことに後者を採用したのが『見失い島2:時間の灰』だ。
前作『見失い島』の面白さは引き継いでいるが、前作を遊ぶとにじむように世界観がしみだしてきて、圧倒的に楽しくなる。前作ありきの面白さを提供するアドベンチャーゲームである。
そもそも『見失い島』シリーズは、独特のイラストを用いて、ノイズ交じりの古い映画フィルムのようなビジュアルで構築された島を探索するアドベンチャーシリーズだ。
謎はやや手ごわいが、奇妙な生物や建築物、謎が謎を呼ぶ世界観がプレイヤーの興味を引き、終了まで飽ないつくりが世界中で高評価を得ており、面白さは折り紙付きである。
『見失い島2:時間の灰』においてもその良さは継承されていて、宇宙人(?)もいれば、謎の建物もあり、遊んでいる間に次々と奇妙な物体が出てきてプレイヤーの興味を引く。ボリューム面で見ても前作より増えいて、順当なパワーアップ版として作られている。
しかし、その表面的な面白さに加えて、今作では前作のプレイヤーだけにわかるご褒美が用意されている。
単に不思議な島を見ていた前作と異なり、今回は島民が多く登場して会話するシーンが増えている。その会話の多くはどこか狂っていて島の不思議さを際立たせるものだが……前作をプレイしているとこの会話の面白さが大きく増す。
何気ない「おかしな一言」が、前作で「奇妙だな?」と感じる部分とリンクしており、島の秘密の片鱗が会話を通じてジワリジワリと浮かび上がってくるのだ。
あわせて共通して登場するアイテムなどから、島の秘密を考察(あくまで考察レベルだが)を進めることもできる。前作は明確に「導入」で、今作は「導入を受けて謎の秘密をほのめかす」つくりになっている。
物語としては祖父が制作したタイムマシンの使い方を探り、島の秘密に迫るストーリーが展開されるのだが、前作を遊んでいるプレイヤーとそうでないプレイヤーでは感じる面白さの厚みが異なるだろう。
▲祖父が残したタイムマシン。
もちろん、『見失い島:時間の灰』単品でプレイしても「謎だらけの奇妙な島を味わう」ゲームとして楽しめるのだが、前作からプレイすることで「奇妙な世界を味わいつつ、謎の核心に迫っている感覚」を同時に得られて、より楽しめるのだ(正直、単品で遊ぶと物語面がつらいというのもある)。
逆の順番でプレイしては、この面白さは味わえない。
今どき前作ありきの面白さを前に出した贅沢な続編はなかなか楽しめないので(『大逆転裁判2』のときも似たようなことを書いた気もするが……)、ぜひこの楽しさを味わってほしい。
また、本作の謎がやや難しく、前作を解いたうえで遊ぶとちょうど良い難易度に設定されているため、遊びのスムーズさの面でも前作『見失い島』の後でプレイするとスムーズだ。
通して遊ぶだけの面白さがあるゲームシリーズ(各2時間ぐらい)なので、1作目から試してみて欲しい。
評価:7(要チェック)
ゲーム概要
奇妙でアンニュイな島を探索するアドベンチャー。
おすすめポイント
独特のタッチの世界
シリーズ共通の世界観がにじみ出てくる楽しさ
注意点
結構難しい
前作を遊んでからの方が楽しい
アプリリンク:
見失い島2:時間の灰 (itunes 240円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:Cotton Game(中国)
レビュー時バージョン:1.1
課金:謎の回答(各シーン120円)、ヒントは広告を見て得る
公式ページ:http://www.cottongame.com/
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: