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『ファイアーエムブレムヒーローズ』レビュー - 任天堂ブランドの光と、奥に抱えた凡庸さの闇

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ファミリーコンピューター時代から延々と続き、近年になって爆発的なヒットを飛ばした戦術シミュレーションゲーム『ファイアーエムブレム(以下、FE)』シリーズ。
その歴代キャラクターが出演するスマホゲームが『ファイアーエムブレムヒーローズ(以下、FEH)』だ。
スーパーマリオラン』に続く任天堂の2作目であり、ゲーム機版を開発するインテリジェントシステムズによる黄金タッグのゲームとあって期待していたのだが…光る点がありつつも、全体としては予想以上に普通のソーシャルゲームで拍子抜けしてしまった。

まず、素晴らしいと思った点を挙げよう。それはバトルの基本システムだ。インテリジェントゲームズは、スマホ向けに大胆に割り切り、FEのシステムを上手く再構成して見せた。
マス目で区切られたマップ上でプレイヤーと敵が交互にユニットを動かし、相手を全滅させるまで戦うターン制ゲーム…という点ではゲーム機版と同じだが、原作が1プレイ数十分だったのに対してFEHは圧倒的に圧縮されている。
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フィールドは6×8マスで、使用するキャラクターは最大4体。敵も4体前後なので、1ゲームは数分で終わる。
何より素晴らしいと感じたのは徹底的にスマホ向けにチューンされた操作感と動作の軽さだ。従来のシリーズのように位置指定でユニットを移動させることもできるが…。
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このように、ドラッグで目的地を指定することもできる。慣れるとこれが癖になる。敵ユニットにドラッグすれば攻撃をしてくれるので、移動と攻撃を1回の操作で終えられる。
オプションでアニメーションをオフにすると、感動するほどのテンポ感なのでぜひ試して欲しい。
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さて、敵を攻撃するとバトルが始まるが、ここもまた基本は保ちつつ簡略化されている。
今作ではユニットの色によって3すくみが存在し有利側が強くなる。また、飛んでいるユニットは弓矢に弱いなど、色にによる相性と兵種による相性もあり、これによってダメージが決定する。
相性だけでなく、早いキャラクターが2回攻撃できる仕組みも原作を踏襲している。

ただし、ランダム性は完全に排除された。ゲーム機版には命中率・必殺率というパラメーターがあり、運によってバトルの結果が左右された。だが、FEHの攻撃は必ず当たるし、必殺の一撃もない。
攻撃前にダメージ量が計算され、そこに変化は存在しない。
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▲必ず当たる!ディフォルメのキャラクターも動きを見るとそんな悪くない。

その代わり「必殺技」が存在し、一定回数の攻撃を行うと必殺技で大ダメージを与えられてる仕組みがある。
ランダム性を排除してゲームをプレイしやすくしつつ、戦術性を担保する仕組みとしてこのシステムはなかなか良く機能している。
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サクサク遊べて、ユニットの能力が拮抗しているときにはプレイヤーの戦術が勝敗を決する仕組みで、この部分は良くできている。
スマホゲームを初めて作るメーカーは、うまくソーシャルゲーム(ここでは日本的なガチャゲーを指す)のシステムを作れないものだが、インテリジェントシステムズはFEらしさとソーシャルゲームらしさをいとも簡単に両立してしまった。

だが、長く遊んでいると気になる点の方が目立つ。
最初に見えたのは、キャラクターが魅力のゲームなのに、その掘り下げが足りない不満点だ。
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▲イラストはすごくいいと思います。

シリーズ恒例の掛け合いもなければ個別ストーリーもない。1ゲームで4キャラしか使えず、キャラクターを沢山集めても意味がない。
どんなキャラクターも★5まで育てられる(戦力になる)のは嬉しいが、育成に時間がかかりすぎてやってられない。せめて、キャラを育てることで過去作の特定シチュエーションを再現したマップが出るなど意味を見いだせれば良かったのだが…。
現状のガチャは、明らかに不要なもの買わせる仕組みになってしまっている。
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▲キャラクターが好きでも現実的には使いきれないし、それを補う仕組みもない

やることがなくなるのも問題だ。序盤こそ好きなキャラクターを育成しつつサクサク遊ぶだけで楽しいが、スタミナの最大値が50なのに中盤以降は1ゲームでスタミナ消費量10を超え、すぐに何もできなくなってしまう。
スタミナ消費が高いのに、高難易度ステージでもマップや敵との相性が確認できず(使用武器しか見えない)に出撃前から負けが確定してしまうことがあり、納得感も足りない。
ゲームモードも特殊なステージで遊ぶ「スペシャルステージ」やCPUが操る他プレイヤーのチームと戦う「闘技場」などが用意されているが、熱狂的に遊ぶ報酬の仕組みに欠けている。

ストーリーも陳腐すぎ、プレイの目的とはならない。「異世界に召喚されて逆らえないから戦う」から始まり、「倒してくれてありがとう、これで解放される」を繰り返す内容は、使い古されすぎてがっかりの一言。
チェインクロニクル』や『Fate/Grand Order』以降のゲームとは思えない。
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総じて見ると、FEHのシステムは光るものを持っていて、今はそれが目立っている。
任天堂ブランドも活かして注目を浴び、遊びやすくてすぐ終わるシステムで「既存のゲームのサブ」として遊ぶ位置づけに上手く入り込んだ。
だが、「旧態依然としたガチャゲー」の範囲でしかない部分があり、それが後々に悪影響を及ぼしそうな気配を見せている。
ゲームキャストの現時点での評価は、限りなく評価5に近い評価6。注目を浴びてはいるが、良いとは言えないのが結論だ。

旧作からのファンの観点から言えば、面白いことにこれはFEシリーズの基本ストーリーラインの逆だ。
FEは闇に制圧された世界の中で、目立たない光の勢力が盛り返すストーリーラインが多い。だが、今はゲームの良い面が世界を覆い尽くしていて、そこに小さな闇…つまり凡庸なガチャゲーのシステムやボリュームが隠れている。
果たして、その闇は世界を覆うのか、それともアップデートで阻まれるのか。
基本システムが良いと言うことは修正もできるということだし、FEファンとして今後の動きも注目してみていきたい。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
サクサク進むバトル
ファイアーエムブレムの歴代キャラクターが登場
戦力が均衡すれば考えどころもある

気になるポイント
キャラ育成が大変だが報われづらい
陳腐なストーリー
やることがない
通信時間が長い

課金
オーブ(ガチャや経験値アップに使用。なくてもストーリーは攻略可)

(バージョン1.0.0、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
ファイアーエムブレム ヒーローズ (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応/ GooglePlay)

2017/02/12 18:45修正

表現がキツい・わかりづらいという指摘があり、欠点指摘部分を修正しました