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『スーパーマリオラン』レビュー - この面白さが任天堂の底力。しかし、スマホ経験の低さが足を引っ張る

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2016年12月16日は、歴史的な日となった。
『スーパーマリオラン』のリリースによって、これまで自社ハードにこだわっていた任天堂のマリオが、ついにスマホにやってきたのだ。
しかも、体験部分は無料で、1,200円払えばすべての要素を遊べる「体験無料」方式。
ゲーム内容は十分すぎるほど面白く、任天堂の名を辱めるものではない。アクション好きなら買っていいのだが……スマホ経験の薄い任天堂ならではの失敗もある惜しいゲームだ。

本作は、自動で走り続けるマリオを操作し、ゴールへ導くステージクリア型のランゲームだ。
同ジャンルの中でも最高クラスの品質と独自性を併せ持ち、任天堂の底力ここにありと言った渾身の作品に仕上がっている。

本作は、驚くほど多彩な仕掛けが盛り込まれたランゲームだ。
まず、ワンタッチ操作の中に盛り込まれるアクションの豊富さに驚く。
マリオは自動で前に走り続け、プレイヤーの操作は画面タッチのみ。ジャンプしたり、壁を蹴って壁けりジャンプしたりと、タッチ操作に様々な行動が割り当てられており、ランゲームでお馴染みのアクションはだいたい盛り込まれている。
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加えて、独自システムとして障害物を自動で飛び越える「ウマ跳び」が目新しい。
小さな穴や障害物があるとき、普通のランゲームではプレイヤーが避ける必要がある。だが、スーパーマリオランでは、何も操作しなくてもウマ跳びで勝手に乗り越えるのだ。
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敵に対して「ウマ跳び」しているときに画面をタッチすれば、敵を踏みつけて高くジャンプもできる。
ランゲームでは敵の踏みつけにシビアなタイミングを見切る操作が必要だが、これにより誰でも敵を踏めるようになっている。
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▲ウマ跳びは空中でも発生する。しかし、その条件がわかりづらく混乱を生むので、低空ウマ跳びはいらなかった気がする……。

ステージ中には「後ろにジャンプするブロック」や、「立ち止まるブロック」などがあり、これを使って従来のランゲームにないアクションを追加し、パズル性の高いステージを作り上げている。
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続いて、システム面では「シャボン」に驚かされる。
これは、マリオがシャボンに包まれ、ステージを戻って好きな場所からゲームを再開できるシステムだ。ミスしたときに自動でシャボンに包まれるので「復活」的な要素に見えているが、実はこれ、プレイヤーが任意で起動できる。
そのため、ステージを何度も行き来して攻略するやり込みが発生しているのだ。
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一見何でもないシステムだが、ランゲーム史上から見ると「意図的に戻る」行為は発明と言って良い。
下の動画を見ていただければ、シャボンがどれだけやり込みに貢献するか一目瞭然だろう。


ギミックも豊富だ。
スマホのランゲームでは、1アイデアで5~10ステージ使い回してステージ数を稼ぐのだが、本作では1ステージごとに1つのアイデアを割り当て、すべて異なる構成のステージ作り上げている。
次々と新しいギミックが登場し、アイデアを使い捨てる恐ろしい豪華さ。
もちろん、キラーを連続で踏んだり、コインを集めたりと、マリオでお馴染みの仕掛けも次々と登場し、マリオ感も高い。
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単にクリアするだけでも楽しめるし、ステージ中に隠されたカラーコイン(赤・紫・緑それぞれ5枚)を集めるやり込みもある。カラーコインをすべて集めるとスペシャルステージも登場し、全24ステージで10時間以上は遊べてしまう。

対戦モードの「キノピオラリー」も面白い。
これは、他のプレイヤーと同じコースを一定時間走ってコイン取得数を競うモードだ。
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単に対戦する楽しさがあるだけでなく、慣れるほどにスコアが上がるステージ構成。
さらに、特定プレイでキノピオの応援を受けられるシステムがまた良い。キノピオの応援を受けるとコインが増え、スターゲージが貯まる。そしてスターゲージが満タンになると一定時間スピードアップし、ステージ中に大量にコインが出てくる。
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これがなかなかにくせ者で、良いことがある反面、スピードアップするとステージのギミックを起動させるタイミングが狂い、プレイに揺らぎを生む。
そのため、プレイヤーの上達に合わせて様々なプレイのタイミングが変わり、単調にならずに何度も遊べるのだ。

で、これに勝利すると、プレイヤーのキノコ王国に国民(キノピオ)がやってきて、王国に新しい建物を建てられるようになる。
集めたコインで建物を購入すると、キノコ王国が豪華になるだけでなく、新しいキャラクターが使えるようになったり、ボーナスゲームを遊べるようになったりする。
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キノコ王国を作る要素は「いらない」ほどイマイチだが、本道のゲーム部分は豪華だし、やり込みも深い。対戦モードも面白い。ステージのデザインは、まさに職人芸。
ゲームをじっくり遊ぶタイプのプレイヤーなら、このゲームは買って損はない。

ただ、任天堂にとって不幸だったのは、このゲームを提供するのが携帯ゲーム機ではなくスマホだったことだろう。
スマホの文化に合わない売り方をして、大きく損している。
というのも、本作は体験無料で、ステージ1-3以降は1,200円を支払うと全部遊べるようになっている。それはいい。
が、体験のさせ方が下手。ステージ1で基礎がわかり、ステージ2以降から面白くなる構成なのに、体験部分はステージ1のみ。面白くなる前に体験が終わったら、買う気は失せる。
ゲーム機の体験版は、ゲームの雰囲気がわかればいい。だが、スマホの体験版はそれだけで面白くなくてはならない。

さらに、AppStoreの説明文を見ると、文頭に課金があることを書いておらず、体験無料の周知が徹底されていなかったように思う。
その結果、★1レビューが増え、売り上げに歯止めをかけているように見える。
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ゲーム面を見てもプレイ部分以外は失格だ。例えば、先に書いたシャボンシステムなどは素晴らしいのに、ヘルプでしか確認できないからシステムに気づけない。
スマホゲームでは、ゲームそのものが説明書という作りが一般化している。そんな中でヘルプを確認することはまずない。
面白さを伝える努力を放棄していると言っても良い。
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▲今時これは……。

また、スマホゲームはやり込みをしない(クリアで終わる)プレイヤーも多い。そういったプレイヤーに取ってみれば、全24ステージはボリューム不足に感じてしまう。
昔ながらの「隠しコインをひたすら集めてね」というボリュームの増やし方をするなら、キノコ王国の街作り要素を豪華にし、やり込みに報酬を与える(キノコ王国が豪華になることをクリアとする)必要もあっただろう。
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▲全24ステージは、クリアするだけなら1時間程度で終わってしまう。

単に時間つぶしで終わるスマホゲーム市場に対して、任天堂はランゲームの文法で、何度も遊べるパズル要素を備えたゲームを全力で投入してきた。
実際、ゲームは面白い。やり込み系のアクションが好きなら、ぜひ遊ぶべき品質と言える。
しかし、その努力が売り方や見せ方によって大きく損をしているので、その部分は今後のアップデートに期待したい。

評価:7(要チェック)

課金:
1,200円(全24ステージ解放)

おすすめポイント
練り込まれたステージ構成
対戦が面白い
豊富なギミックとアクション

気になるポイント
オンライン必須で、通信時間が気になる
キノコ王国作りは面白くない
体験部分はイマイチ。

(バージョン1.0、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
Super Mario Run (itunes 体験無料 iPhone/iPad対応)