2024年1月10日、ValveはSteamにおいてのAIコンテンツについての指針を変更し、事前生成、ライブ生成のあらゆるAI作成コンテンツ(アート、プログラムコード、サウンドなど)の使用を認めることを発表した。
ただし、ライブ生成AIによって作成される成人指定(アダルトオンリー)の性的コンテンツは例外となっている。
事前生成コンテンツは通常のゲーム審査と同じように審査され、ゲームプレイ中に動的生成されるライブ生成コンテンツに関しては、AIが違法なコンテンツを生成しないためにどのような対策を講じているかの説明が求められる。
開発者はゲーム提出時のコンテンツアンケートでAIの使用に関する説明を行い、Steamの利用者(一般のプレイヤー)はゲーム購入前にゲーム内でAIがどのように使用されているか確認できる。
さらにライブ生成AIが違法コンテンツを生成したときにプレイヤーが報告する新システムもリリースされる。
2023年6月の時点で、Steamでは生成AIを利用したゲームがリジェクトされることが話題になっており、そのことは本ブログでも記事にしたことがある。
(AIイラストに人が手を加えてもNG。SteamからAI生成アセット使用でゲーム審査を拒否されたインディー開発者が、他の開発者に向けて明かす体験談)
この時期のValveの説明としては生成AI利用コンテンツにまつわる著作権、ポリシーの問題などについて整理できておらず、審査などの仕組みが生成AIコンテンツを前提としたものではないから、としていた。
そして今回の声明で「数か月にわたり、この分野に関するリサーチや、複数のゲーム開発者との対話を続けてきた結果、本日よりAI技術を使用するゲームの取り扱い方法を変更することになりました。 」と、学習と審査システムのAI対応を進めて受け入れ可能になったことを宣言したわけだ。
実際、制作においては権利問題がクリアされたオリジナルAIを利用する動きもあり、膨大なコンテンツを持つ大手は水面下でクリーンなAIをテストしていると言われる。
生成AIの出どころが怪しい、違法に違いないという状況もクリアしている可能性があり、完全禁止も実情にそぐわなくなっている面もある。
▲Netflixのアニメ『犬と少年』ではその実例で、その背景なども明かされている(Netflixが「画像生成AIでアニメ制作」してわかったAIの限界…『犬と少年』で挑戦したもの | Business Insider Japan)。
そういったなか、生成AIについて開発者などからの聞き取り、調査、学習などを行い、審査の仕組みに組み込めたことで生成AIが受け入れられるようになったのだろうと推測される。
ただし、今回の処理は恒久的なものではなく、今後も必要に応じて再検討するともされている。
「この件に関してはもうしばらく検討が必要となります。このタイプのゲーム開発に関する意思決定を難しくしている点についてお詫び申し上げます。 ただ、こうした複雑な問題を性急に決定することは、パートナーである開発者やプレイヤーのためにならないと感じています。 今後も、Steamに提出されるゲームや、AI関連の法律の整備状況から学びながら、必要に応じて今回の決定を再検討する予定です。」
(声明より)
実際、生成AIに関しては、違法にアップロードされた画像を権利者の望まない形で商用利用される懸念が示されたり、テキストの無断利用でMicrosoftとOpenAIをThe New York Timesが訴えるなど、権利的な問題への懸念はくすぶっている。
(OpenAI、New York Timesによる著作権侵害提訴は「法的根拠なし」と公式ブログで反論 - ITmedia NEWS)
裁判の結果や国の方針の変更によっては再び生成AIの制限が厳しくなることもありうる。大手が全面的にAI利用をするにはリスクが高すぎる状況だと思うが、個人開発インディーゲームにおいては活用するものが登場することだろう。
関連リンク:
Steam :: Steamworks Development :: AI Content on Steam