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スマホゲーム10年を振り返る座談会2012年、中編「LINEプラットフォーム開放とアメーバがやってきた」

suma
iPhone が発売されてから10年の記録を残すため、古くから iPhone ゲームを紹介している iPhone AC の管理人カムライターオさん、meet-i編集長の今村さん、そして私ゲームキャストの3人で集まった座談会の記録をお届けする。
今回は2012年、ついに王者『パズドラ』が登場した時期にさしかかる。この時期から、一気にアイテム課金型のオンラインゲームが始まり、有料ゲームが目に見えて衰退していく。
2008年~2009年・黎明編はこちら
2010年・飛躍編はこちら

座談会メンバー紹介
imamu
今村さん。2011年より Android アプリレビューサイト「meetroid」で活動を開始し、2014年に iPhone アプリレビューサイト「meeti」編集長就任。 2017年からは「meeti」を個人で買い取り、独立して運営。
TV番組「教えて!アプリ先生」(東京MX)にて初代アプリ先生としてレギュラー出演。

ac
カムライターオさん。古くからのオンラインゲーマーで、『ウルティマオンライン』の一大ファンサイト『ブリタニア観光案内所』の元管理人。
2008年ごろから iPhone ゲーム紹介サイトの「iPhone AC」を運営するも、2018年9月末を持って更新は停止。今後は「電ファミニコゲーマー」で連載を続ける予定。

nama
ゲームキャスト。2009年より iPhone のゲームをブログで紹介し、平行してファミ通App、ねとらぼなどで記事を書き、AppBankにて「げーむふぁいたー」名義で活動後、ゲーム会社に在籍後フリーに。
直近ではCEDEC2018でCEDEC講演“メディアが語るインディーゲームPR術”でパネラーとして参加。

開始
nama
2012年、モバゲー/グリープラットフォーム以外の動きは振り返っておきたいですね。スマホシフトが確定的になったし、スマホ内でのプラットフォームもできてきた。
スマホ外からはアメーバがスマホにやってきて、『ガールフレンド(仮 )』を大々的に売り出した。
ac
「くろぅえ るぅめぅめぇーるぅ」の発音しか印象にない(笑)

▲2014年の正月のCM。ヒロインの1人が「クロエ・ルメールですよ」と、舌っ足らずに喋ったことが話題になる。

nama
2014年の正月ですね。懐かしい。
アメーバはプラットフォームとしては最後発だったからか、グリーやモバゲーよりも出会い系、危険な空気がすごくあったなぁ。
imamu
アメーバというかサイバー系は確かに、自分もちょっとまだ触れていいか半信半疑なところがありましたわ。
ガラケー時代のモバゲーやグリーの出会い系的なダメな文化を持ち込まれるんじゃないかと警戒してた。
nama
実際、2011年ごろは「アメーバピグの風俗(※)」とかが話題になってましたよね。
未成年問題などの風当たりがきつくなって2012年3月かな?
一斉に15歳未満をアクセス不能にする。ギリギリまで抜き差しならなくなってから、一気にばっさりやって、迷惑するのは利用者という。
imamu
あった(笑)
nama
2012年だと、アメブロで芸能人がペニオク詐欺(※)をステマして問題になった。
PV水増し問題(広告請負時の金額目安となるPVが、アメブロだけ実数の3~4倍になる不正があった。表向きは「カウント数のルールが違った」とされている)とかもあって、サイバーエージェント系列は未だにダーティーな印象。と、話がそれすぎた。
※ペニオクとは、競りをような仕組みを採用したオークション系購入サイト。胴元が品物を用意し、入札のたびに手数料がかかる仕組みのため、入札手数料を狙って胴元が用意したサクラが入札の上書きを繰り返す詐欺が横行しやすい。
この時期、ペニオク詐欺サイトが摘発され、アメブロでは芸能人が広告塔になっていた。
ac
一応試しはしたけど、(ガールフレンドは)すごく旧式のガラケースタイルのソシャゲだったね。それで CM と萌えで売り出そうというやり方が昔のグリーを彷彿とさせた。
ただ、それはそれで一定の需要があったんだよなぁ。今でもなくなった訳ではないけど。ガラケースタイル。
nama
まあ、ブラウザゲームですからね。
アプリでも2012年はまだ、人気になった『ドラゴンリーグX』もモロにガラケースタイルでした。
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▲2012年10月20日に出た『ドラゴンリーグX』。ガラケーのギルドバトルゲームの延長線上にあったが、人気を得てスマホでアソビズムの存在感をアピールした。

imamu
あそこは未だにソシャゲの有料アイテムの売り方とガチャでの使い方がガラケーっぽい。
ac
ただ、ガラケーからのユーザーの方が金払いが良い。これはメーカーには大きいよねぇ。
nama
当時はそう言われていましたね。どこのデータか忘れましたけど、そういうのはあった。
ブラウザゲームで売れると言えば、絵柄と声優が良いと今以上に人気に直結した気がしますね。
『拡散性ミリオンアーサー』もそうだったけど、絵と声優が豪華だと売れた。
imamu
声優に関しては今はもう飽和しちゃった感がありますけどね。
それで人気がでるとわかったら大量のメーカーが一気にやるもんだから。
nama
でも、2012年だと声は最新技術だった。ガラケーだと2012年11月27日に『アイドルマスターシンデレラガールズ』でやっと声がついて大きな話題になった。
『ガールフレンド(仮)』も「耳で萌える学園恋愛ゲーム」で、DeNAの力作『夕暮れのバルキリーズ』も声が出るのがウリ。
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▲2012年7月にリリースされた『夕暮れのヴァルキリーズ』。ゲーム機作品的なイメージに回帰しようとした意欲作だったが、人気は伸びなかった。

2012年4月でボイス付きだった『拡散性ミリオンアーサー』に声が出ることがどれだけ先進的だったか……。
今でも声優は価格のわりに宣伝効果高いと思いますが、豪華声優は最低限の前提条件になってしまった感はありますね。
imamu
声優は特に個人に対して固定ファンが多いからなぁ。
ac
アニメ系はファンの盛り上がりが凄いからねぇ。
自分はそっち方面じゃないので解らないんだけど…。
『ドラゴンリーグX』のギルドバトル形式は今でも『戦国炎舞』とかで残ってますよね。あのシステムは固定ファンがずっといますね。
nama
というより、あの手のゲームには原始的な面白さが詰まっているとは思います。
とにかく成長する。貯める。楽しい。PvPがあれば貯めたもので競争する。
『グラブル』も『ドラガリアロスト』もその系譜だと思います。サイゲームスはガラケーゲームの子孫。
ただ、当時は今よりずっと「金で殴り合う」感が強くて、自分はまったくゲームしている感なかったな。
imamu
『戦国炎舞』はすごいですよね。ブームに左右されないというか。ある意味どんなゲームよりも古くからあるのに安定してる。
まぁ自分もあんまりそそられないゲームではありますが。
nama
あと、ガラケーでゲーム化するとどうしても内容が限られるから設定がおかしくなる。
『みんなとバイオハザード』とかで、クリーチャーが仲間になっていて「なんでだよ!」って突っ込んだりしていた(笑)
仲間のクリーチャーと組んで他のプレイヤーと戦うんですよ。
自分たち、最初にクリスとかの主人公キャラから誰を使うか選んだ気がするんですけど。
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▲2012年末に登場したgloopsとカプコンによるMobageブラウザ向け『みんなとバイオハザード クランバトル』。一応、設定上は電脳空間なので何が仲間になってもおかしくはない。この頃から原作物はビジュアルに凝っている作品が多くなった気がする。

imamu
ガラケー時代はまだ「携帯のゲームだから…」で結構無茶な設定とかが通ってましたね。
nama
ですね。当時のゲームをきっちり漁ると「なんでこの設定にしたの?」とかいろいろ出てきそう。
imamu
あと忘れてたけど、ガラケーからの流れを組むソシャゲとして多分最後の砦であろう『単車のトラ』があるのも気になってた。
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▲単車のトラ。自分だけの最強オリジナルバイクを作り、総長になって、チームで全国制覇を目指すギルドバトルゲー。当時「ソシャゲにハマるのはトラックの運転手」などと言われていたが、確かにトラック運送業の友人がやっていた思い出。
ガラケー版は2011年、アプリ版は2012年3月に登場した。

ac
『単車の虎』は『ギャングロード』とかが吸収してる気もする。
いずれにせよ、その手は一定の需要がありますよね。
imamu
あー、まだ生き残りが…。
nama
そして、2018年、『龍が如くオンライン』が…(笑)
ac
あんなチャラ男が主人公のゲームは龍が如くではない…。
imamu
(笑)
ac
ヤンキー系でないガラケー系統のソシャゲ派の人は『グラブル』が吸収している気がする。
imamu
確かにまだ『グラブル』がいましたね。最強最後の砦感が凄い。
ac
ですよねー。
nama
『グラブル』、言って結構複雑だし、完全にブラウザ系かというとなぁ。
ac
地味に徐々に複雑にしていって、ガラケーのソシャゲユーザーをゲームに引き込んでいる気もする。
imamu
確かにスタートした時あんなに眠かったのに、いつの間にかちょっとしたゲームになってる気がするんですよね。
nama
『グラブル』の最初、自分は退屈で投げてしまった。すごい画なだけだった。
でも、後からやり直してみるとかなり変わっていて、ひたすら成長が楽しいんだよね。
imamu
ですよね。自分も(リリース時は)半分寝ながらプレイしてレビューしましたわ…。
nama
『グラブル』は中身の変遷も含めて書ける人は業界にほぼいないだろうなぁ……。
あとは、LINE が2012年7月からプラットフォーム化しているんですよね。
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▲LINEは2011年にリリースされて瞬く間に人気を獲得した。プラットフォーム発表会で出たLINE GAMEのラインナップは『Bizzle』や『ELGARD』など外部提供のタイトルが多かった。
とくにゲーム機で活躍した飯田和敏さんの『Easy Diver』は注目タイトルだったが、結局初期ラインナップは人気を獲得できず1~2年程度で終了となった。

で、11月かな?『LINE POP』が出てヒットしていたはず。
『ツムツム』の前に、もう「LINEで上手く出せばでかい」が来ていた。
これって、『なめこ栽培キット』が流行って誰でも1度アプリゲームを遊ぶ機会があったから流行った側面もありそう。
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ac
当時は技術力がなくてもゲームをヒットさせられる市場として重宝されていた印象。
LINE だとライトユーザーが多いから、むしろカジュアルで豪華すぎないゲーム方がウケたんだよね。『ツムツム』までは。
imamu
確かにLINEはゲームを遊ぶ層じゃない人が食いつきましたね。
nama
でも起動速度が速くないとダメだったりして、「技術が必要ないカジュアルゲーム」に見えて、意外に大変だったみたいですね。
参入できるけど、ヒットは難しいというか。
ac
ゲーマーの自分から見て LINE ゲームはショボかった。ただ、ガラケー型を好む人がずっといるように、普段ゲームをしない人は見た目がすごすぎるとダメだから、作り手もそれを考えて作っていて、独自のプラットフォームができてたね。
nama
言い方は悪いけど、ショボい方がゲームは分かりやすいんですよね。
PS4ほど書き込まれるとアドベンチャーでどこが探索ポイントか分かりづらいけど、PS2レベルだとオブジェクトが目立つ、みたいな。
やったとき、面白さは伝わりやすいことがある。それはプラスになっていたと思うし、今もそういうのはある。
imamu
LINEもちょうどこの頃からガンガン技術者を雇いだしてたはず。前にLINEに行った時にこの頃から働き始めたくらいの人がいっぱいいた。
見た目のシンプルさというところでいえば、常に一定の需要がありますよね。
PSでもシンプルシリーズがあったし、アプリでも今ハイパーカジュアルもウケる。
ac
まあ LINE はハンゲームがベースにあったと思うので、技術力はあったはず。
少なくとも本体には。
それが爆発したのが『ツムツム』だったと思うけど、あれで LINE ユーザーも目が肥えた(笑)
nama
目が肥えたのは間違いなくありますね。
『ツムツム』の話は登場した年にするとして、メディアに目を向けるとこのあたりからLINE記事とLINEゲーム記事は「PVとれるから書いておけー」みたいな流れがあった。
imamu
超ありましたわ。LINEゲーム全部追ってた。
nama
『パズドラ』の時代ではあったけど、『パズドラ』はAppBankが一気に持って行ってしまって。
「LINEは頑張るぞ!」みたいなのありましたよね。その他の企業アプリメディアに。
imamu
まさにそんな感じでした。当時自分はLINE本体は全然使ってなかったんですけど(笑)
nama
自分もです。LINEのハートの送りあいが面倒すぎた。
Facebookゲームの初期のゲーム招待合戦みたいだった。
imamu
自分は連絡先を共有設定にしてないのに、知り合いからLINEの連絡先候補にでてきたよって言われて、「これは作りが甘いな…というか若干怪しいな…」と思ったので使うのを辞めました。
nama
程度の差はあれ、この頃に勝ちきるか、問題が大きくなるまでつっぱしった企業は成長したきがしますね。LINEは……マシな方だった気もする。
あとは、この頃というか、今もですけどLINEの目玉ってスタンプだったんですよね。急にLINEが大きくなって、「LINEスタンプが儲かる!」って話題になっていた。
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▲LINEスタンプは2012年8月で単月3億円、2013年8月には単月10億円の売上げに到達する(公式発表より)。なお、2012年中盤はAppStore上位でも単月数千万円の売上げだったと言われている。

あとはプラットフォームというか、単体でプラットフォーム級に注目されていたガンホー。『ケリ姫スイーツ』にも触れておきたいかな。
『パズドラ』を出す一方、『天下トリガー』と、『ケリ姫スイーツ』と、ガンホーは意欲的なゲームを2012年立て続けに出したなぁ、と今さら感心します。
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▲ケリ姫スイーツ。前作はロードがものすごく長かったが、それが短縮されたのも良かった。

ac
『Angry Birds』型と言ったらそれまでなんだけど、良い感じにアレンジされてて面白かった。
『天下トリガー』は最初のステージが尾張平定戦で敵が織田信行とかでねぇ…。
めっちゃ渋い。好きだったけど、ゲームとしてはシンプルで、『ゆけ!勇者』とかの方が面白味があった。もうちょっと作り込んでもよかった気がするな。
nama
『ケリ姫スイーツ』はゲーム部分が面白かったけど、ステージを工夫するか、アクションでインフレするか、数値でインフレするかしかなくて、運営が大変そうだった。
リリース後に属性を導入して荒れていたなぁ。
それでも、『パズドラ』のパズを別の物に置き換えたゲームではないので、志高かったなぁと。
『パズドラ』があそこまでヒットすることを見込んで作ってなかったってのもあるでしょうけど。
imamu
ガンホーは『パズドラ』も含めてそうですけど、ちゃんとスマホだからこそのゲームを作ろうって意識が見えましたよね。どれもタイミングもよかった。
ac
ですね。あの時代としては、それはイレギュラー。
『パズドラ』のヒットでソシャゲの大御所みたいに言われるけど、実はポチポチゲーをぶっ壊した改革者ですよね。
nama
改革者がいつしか大御所と言われる……大河ドラマみたいだ。
ac
これが時代の流れか…。
nama
2018年で10年ですからね。
2008年に『戦場のヴァルキュリア』が出て、2018年は『戦場のヴァルキュリア4』。
当時はXBOX360が世界的な王者でMSが「他のゲーム機と同じサーバーなんて使わせない。PS3のFF11とXBOXは別サーバー」ってやっていたのに、PS4勝利すると立場が変わって「ソニーはフォートナイトのサーバーを解放しない!我々は全プレイヤー同じサーバーがいいと思っている」っとか批判してる。
時間がたつわけですよ。

そして後編、2012年のその他のアプリ編へ続く。2012年は本当にいろいろなことがあった。

なお、振り返り話に関連する四方山話を、現在ゲームキャストの会員制ウェブマガジンでも掲載している。10月分のマガジンでは「2012年、最も流行っていたゲームは『なめこ栽培キット』だった」と「2012年のグリーではゲームで金が稼げた」を掲載予定、「パズドラ登場前夜(仮題)」は間に合えば掲載予定。

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今回出てきた主なアプリ(まだ売っているもの)
パズル&ドラゴンズ (itunes 無料 iPhone/iPad対応)
LINE POP (itunes 無料 )
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