ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

課金カードで攻撃力倍増。「特効」カードはソシャゲの害悪なのか。 - ソシャゲ業界の片隅で6

こんばんは、末端のソーシャルゲーム開発者アルベルトです。
前回、なぜ、ソシャゲの彼女たちは脱ぐのか?と書いたら、「金になるから脱がす」と言っていた本人に「シチュエーションとか、エロへの追求などが記事に足りない」と言われて説教されました。

と、前置きをしたところで今回はソシャゲ界の嫌われ者「特効」(特攻と書かれることもあります)について書きたいと思います。
カードゲーム系(に限りませんが)のソーシャルゲームを遊んでいると、しばしば「特効」という単語が出てきます。
多く場合、「特効」とは「ある期間だけとても強力な効力を発揮する」カードです。
例えば、「特効3倍」という文句で攻撃力10,000のカードがあったら、指定の期間中だけ攻撃力が30,000の扱いとなり、圧倒的な力を発揮します。

この「特効」は、しばしばソーシャルゲームの害悪として語られます。「特効が出てゲームがつまらなくなった」とか、言われますよね。
しかし、「特効」は必ずしも悪いだけではない、という話を今回はしたいと思います。

「特効」が嫌われる理由は、わかりやすいですね。
「特効」は何よりも売り上げを伸ばすため存在します。
「あるイベントで良い結果を残したければ、特効を買ってください」という性格のものなので、プレイヤーからすれば見え透いた課金への誘導です。
だから、プレイヤーからすると「課金をしないと受けられない恩恵」で、場合によっては「大金を払わなければ、イベントに参加できない」という印象をもつ方もいます。

基本的に言えばその通りで、特攻の存在はだいたいがクソです。それだけでは一瞬で記事が終わってしまうので、特攻が上手く働いたときには効用があることも書いていきたいと思います。

特攻が上手く働くゲーム、それは攻撃力やHPしかなくプレイヤーの選択肢が少ない単純なゲームたちです。
これらのゲームでは、新しいカードを売るには能力を高くするしかありません。
強いカードを出して、別の属性の強いカードを出して、次にさらに強いカードを出して……と、このサイクルを繰り返して売上げを立てるのです。

しかし、この仕組みには難点があります。
カードがどんどんインフレすると、初期に出たカードが相対的に弱くなり、下手すれば「ゴミ」になってしまうのです。
苦労して手に入れたカード、大金を投じたカードが簡単に弱くなってしまったらプレイヤーは悲しむでしょう。

そこに歯止めをかけられるのが「特効」なのです。
特効のついたカードは、一定期間は絶大な力を持つのでイベントを攻略したいプレイヤーに販売できます。
能力が他のカードと大きく違わなくても売れるので、カード能力のインフレを抑えられるのです。

そして、「特効が必要なイベント」、「特効がいらないイベント」を交互に行えば、特効を買ったプレイヤーは前者のイベントで、過去に手に入れた強いカードを活躍させたいプレイヤーは特効のいらないイベントで楽しめます。
また、特効が必要なイベントの前に「特効カードが手に入るイベント」を行い、イベントの準備を楽しむイベントも作れます。
ゲームによっては、準備イベントを頑張ると下手な課金者よりも無課金者の方が有利になることすらあります(当たり前ですが、競う系のイベントで重課金には勝てません)。

プレイヤーのカードの価値を守り、うまくイベントに組み込まれた「特攻」はゲームを楽しくする要素にもなりえます。
ただ、特効は強力なので「特効○倍!」の○に入る数字がインフレし過ぎると、ゲームバランスが破綻します。
「特効100倍!」とかいわれたら、特効を持っていないプレイヤーはイベントをやる気すら起きませんよね。

使い方次第で、ある程度うれしいと思えるものになり、嫌われるものにもなる危険なシステムが「特効」だと思います。
「特効が嫌い」というプレイヤーの多くは、課金だけを重視した特効を体験されているかことと思います。事実、多くのゲームでは初期に「特攻」が存在せず、後から課金のために「特攻」を導入するのでインフレを加速しているケースの方が多いように感じます。大人の事情で特効だったり、最後の足掻き課金だったり。
しかし、スクストのように最初から特攻を導入し、それに合わせてバランスを取ってインフレを抑えているゲームも少数ながら存在します。

個人的には、ランキングイベントなどで過剰に競わせ金の積み合いをさせる特効は嫌いです。しかし、ストーリーやキャラ主体のゲームや「特効」カードが時短的に使えるゲームでは良いと考えています。
「特効」を全肯定する訳ではありませんが、企業としては売り上げがないとアプリを閉じるしかないので、必要悪(しかも、ただインフレさせるより良い)とも言えるでしょう。

と、ここまで書いてきましたが全部台無しにすることを最後に書きたいと思います。
特効を採用するゲームは減りつつあります。
昔のソーシャルゲームのパラメーターは数が少なく、プレイヤーの工夫の余地も少ないものばかりでした。
しかし、最近のゲームには射程やスピード、必殺技にスキルとさまざまな能力があります。
「最初は攻撃力が高いキャラを重要視して、次のイベントは射程が重要で……」と、さまざまな特色を持つキャラクターが活躍できるようにすれば、特効がなくともインフレを抑えられるのです。
パズドラとか、モンストはその例ですね。

能力が多様化するとバランス取りも大変になるので、必死にインフレを抑える計画を練り(=プレイヤーの持っている過去キャラクターがゴミにならない努力)つつイベントを考える運営さんには頭が下がるばかりです。

もっとゲームが豊かになったら、いろいろな角度でゲームを遊べるようになって、特効が消えるといいなぁ、と思います。