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ロードラインタビュー第3回(前編) ロードラを支えるサウンドの秘密に迫る!

ロードラインタビュー第1回プロデューサー・ディレクター編ロードラインタビュー第2回デザイナーさんのこだわりに迫る!に続く第3回はサウンドインタビュー。
なんと、ロードラのサウンドはファミコン時代からゲームの音を仕事とされている大御所田崎寿子さんの手によるもの。
そう言われてみると、ロードラの音が良いのも納得だ。
今回はその田崎さんと、宮内ディレクターの2人にお話を伺ってきた。
昔の話が聴ける良い機会ということで、前半は経歴に沿ってファミコン時代からスマホ時代(ロードラ)まで音のゲーム音製作の変化と、宮内ディレクターとの曲製作時の秘話という大充実の内容でお送りする。

kaeru

なお、今回田崎さんの写真で使われているのは愛用のパペット型楽器コケロミン。
パペットの口の開閉で音程が変わるおもしろ楽器だ(詳しくはコケロミン公式をどうぞ)。
nama
最初に、田崎寿子さんの経歴を教えて下さい。
kaeru2
ファミコンの頃からつくりはじめていて、『くにおくん』もそうですけど、『女神転生』シリーズの一部をやっていたり、最近は『おさわり探偵小沢里奈』ですね。
で、6年前からアクワイアに所属して、アクワイアのタイトルのほうを。
『剣と魔法と学園モノ。』、最近だと『忍道2 散華』、『AKIBA’S TRIP』、『おさわり探偵なめこ栽培キットDELUX』『ロード・トゥ・ドラゴン』などですね。
miya
アクワイアではサウンドディレクターとして、サウンド全体を見ていただいています。
ですよね?
kaeru2
はい。そういうことになっています(笑)
nama
おさわり探偵では歌を歌われていますけども、歌の経験は?
kaeru2
歌の経験といいますか、曲に歌を入れるのが趣味で。
勝手に差し込んでいくわけですよ。
それが許された頃って言うのは今みたいなものではなくて、打ち込みのMIDIで再現性で「歌なんて流さないよね」って時代にやるのが楽しかったので。
何かが足り無いからいれちゃおうかなって。
nama
歌を入れたいからやったということでしょうか。
kaeru2
そうですね。
誰かが「作って」というのではなく、入れたいから入れるんですよ。
nama
遊び心なんですね。
現在の作品の製作環境について教えて下さい。
kaeru2
MACの普通にロジックをベースにしています。
ハードウェアなんかは、ファントムがあるぐらいで、あとは全部Macの中のプラグイン。
ロジックというか、AU(Audio Units)のプラグインがメインでかなり入っています。
nama
外部の音源などはあまり使われないのでしょうか?
kaeru2
使わないですね。制作期間が短いので、外部を使うとミックスの時間がなくなってしまうので。
nama
歌入れのマイクなどは?
kaeru2
うちの場合、そういう他のアーティストさんと一緒にやることも余り無いので。
外部のスタジオは使いませんね。
アクワイアにサウンド部屋はあるんですけど、そこでたまに私がマイクに向かってあーあーと歌っていれている程度です。
マイクはロード(NT2-A)です。
nama
続いて、好きなゲームを教えて下さい。
kaeru2
好きなゲームですよね。モンハンだと思うんですよ。
普通に何をやろうかといわれたら「モンハンやろうよ」と普通に言うし。
今まで生きていた中で、一番というと『EverQuest』ですね。
あとは初音ミクも素晴らしいですね。
nama
様々なゲームをプレイされているんですね…!
『Ever Quest』(※エバクエは人生と言われるほど、途方もない時間がかかるオンラインRPGだった)なんか魂を削るコアゲームだと思うのですが…プレイ時間がすごすぎて『Ever Quest 2』に手がでませんでした。
kaeru2
あら、もったいない(笑)
今からでも間に合いますよ。
nama
ガ、ガチゲーマー…!
でも、それをしたら人生が終わってしまいます(笑)まさか、まだプレイされているのでしょうか。
kaeru2
気が向いたときやっています。
nama
好きな音楽や普段聴く音楽、影響を受けたアーティストを教えて下さい。
kaeru2
基本的には私はやっぱりYMOの時代に生きているので、彼らの影響を受けてゲーム業界に入っているんですけど。
普通に最近はアニメのサントラとかを聞いて生活しています。
澤野さんていう“機動戦士ガンダムUC”とかやっている方がいるんですけど大ファンです。
nama
好きなジャンルとかありますか?
kaeru2
ジャンルはエレクトロ系が好きなんで。
普通にクラシックが基本にはあるんですけどね。
でも、ぶっちゃけていうと朝も帰りも初音ミク。

できれば、朝夕と仕事の音を叩き込んで追えるのが楽なんですけど、それだと自分の好きな曲が聞けなくなってストレスになるので。
やっぱり歌謡曲とか、テンション上がるのはポップな普通の曲で、好きな曲を聞くと「やったー、今日もがんばろう!」って気になりますよね。
ストレスを解消しないと仕事には向けないです(笑)
nama
ゲーム音楽に携わることになったきっかけを教えて下さい。
kaeru2
学生時代、卒業就職活動をするときにバイクで事故っちゃって、両手を骨折してしまったんですよ。
本当はプレイヤー(演奏者)を目指していたんですけど、就活が全くできなくなってしまって。
「やったことないけど作曲とかやってみるかぁ」と。ちょうどフロムAにゲーム会社の募集があって。
「これなら行けるかも、作品を作ればいいんだろう?」と作って、出したら何故か一発で受かってしまって。
「やったラッキー!」と。
nama
それまではピアノを?
kaeru2
4歳の時からピアノをやって、ずっとやり続けてきたんですけど、高校の時に音楽で食っていくって親に言って。
地元でピアノを習って、東京ではキーボードというかポピュラーなものをやって。
nama
クラシック一本槍ではなかったんですね。
kaeru2
クラシックだけじゃ食えないじゃないですか。
ピアニストになるわけにもいかないし、仕事の量を考えた上で、そっちにいかないとだめなんだな、と。
クラシックだけやっていた人がそういうポピュラーなものをやろうとすると、やっぱり最初に楽譜がないとできなくなってしまうので。
nama
そこからずっとゲーム業界ということですね。一番最初の作品は?
kaeru2
『マジックジョン』という作品を。
その前にもマスターシステムとかやっていたんですが。
ただ、そのタイトルを聞かれるんですけど、海外作品をやっていた感じなので、タイトルがわからないんですよ。
で、『マジックジョン』に関してはまるまるやったという記憶が残っているんですよ。
25年とか前なんで。


▲FC版マジックジョンの復刻動画。これも田崎さん…!

nama
ファミコン時代(くにおくんの時代劇など)からゲーム音楽に携わってらっしゃいますが、その頃の制作環境や音作りで意識していたことなどを教えてください。
kaeru2
意識したことはあまりないんですよ。
ゲーム音楽に、コテコテな(ゲームっぽい)モノを作らなきゃいけないのかな?って悩んでいた頃で。
そういうものを作ってはみたかったんですけど、私の世界とはちょっと違うんだろうなと。
どちらかというとゲーム音楽に寄る程度でしかなかったと思います。
nama
ゲームゲームした音楽を作るのではなく、あくまで田崎さんの味でファミコンの時代からつくっていた、と。
kaeru2
そうなりますね。
あとは今とは違ってディレクターさんの指示が強かったので、「こういうモノを作って」とか。
nama
今は緩いということでしょうか?
kaeru2
今は、分かれていて、私の味で「まかせちゃいます」というタイトルと「このタイトルはこういう方向で」というものでしっかり分かれています。
nama
当時は音の出せる数やできることなどすごく限られていたと思うんですけども、その時期に心がけてらっしゃったことなど教えていただけますか?
kaeru2
苦労しか覚えてないですよ(笑) データとしてやれることが決まっていたので、前半はこう、後半はこう、データのほんの隙間の部分をごまかして、きれいなものを表現するか、細かい音遊びの面白さを表現するのかというところで。
音の出し方より、どういう場面でどういう事をしたいのか考えながら作っていました。
nama
ファミコン時代で特に記憶に残っている曲などありますか?
kaeru2
記憶にないんですよね(笑)
たまに動画で見て「こんな曲あるの?」とか。
つくりすぎてもう分からないです。
nama
そして時が流れて、SSやPSで生音が使えるようになりましたが、これによる田崎さんの音楽・環境の変化はありましたか?あれば教えてください。
kaeru2
なんでもできるようになっちゃった部分の、最初の戸惑いですよね。
「なんでも可能じゃん」ということは今までの諦めていた部分が全くないし、「あたし、どこまでやればいいの?」っていうのが分からなくて。
やっと落ち着いてきたのが最近です。

このぐらいの密度だったら無難だし、自分で作っていても楽しいし、予定も立てられるようになったよね、ていう。
昔はあまりにもやれることが多すぎて(曲の納期の)予定が全くつかなかったし。
あんなこともできるし、こんなこともできるし「やろうとしたらおわんないじゃん!」と。
nama
凝ろうと思うとなんでもできるからキリがない、ということですね。
kaeru2
はい。
nama
そういえば、前の話しに戻りますが、PSなどで生音が使えるようになったらやりがいが薄れた感じでは…?
kaeru2
そこでも、声の波形を入れて(生音じゃない手法で)打ち込みでいれなくてはならないこともあって…。
波形の中に入れるわけですよ。
メモリの中にどれぐらい入るか周波数を落として。
nama
なるほど、やるときはあったと。ハードが変わると共に田崎さん自身の会社も変わってきているわけですが、アクワイアだからできるいいところ、などありますか?
kaeru2
アクワイアのいいところは好き放題やらしてもらえること。
nama
アクワイアに在籍しながら、他社さんの楽曲もやっていますよね。
kaeru2
誰にも許可を得ずに勝手にやって「ああ、やっているよ、今」みたいな(笑)
(※実際には許可を得ているそうです)
nama
わりと自分の色を出しやすい、ということでしょうか?
kaeru2
出し易いですね、やっぱり。
今までと違う会社なので、違うベクトルで表現しないと、というところがあるので。
今までと全く違うところを出さないといけないというところでもあるのですが。
nama
そして、生音時代から『なめこDelux』、『ロード・トゥ・ドラゴン』でスマホの音楽を制作されることとなりましたが、これまでのゲームと比べてスマホ向けに何か意識して変えたことはありますか?
kaeru2
やっぱり、インパクト重視だったものをはずさなければならないということで。
nama
はずす…というと?
kaeru2
つまり「こんな曲が作りたい」・「こんな表現をして場を盛り上げる」ということができないんです。
スマホだと。
nama
スマホも生音を使えると思うんですけども、そういった制約ではなく?
kaeru2
スピーカー属性ということですね。
スピーカーから聞こえる周波数というのは決まっているので、その中でいかに心地良く、ストレスにならないために、さらに(ゲームを)継続させる力を得なければいけないというところが、すごく難しくて。
音楽性というところではなくなってきてしまうんですね。
技術的というか、編曲するときに気をつけていかなければならないという。
私はこんな音を出したいという欲望が強く、この音ならこんな曲という作成過程なので、特徴がある音を抜きにして構築するのが難しいです。
nama
iPhoneのスピーカーとか弱いですよね。
kaeru2
ノリのいい曲は難しいですし、ギターとかも無理なので。
nama
スマホの環境で使える音を選ぶ、というところから気をつけてらっしゃるんですね。
そう思って、ロードラで使われている楽曲の音を改めて聴くと味わい深いですね。
miya
あとは、いい曲だとすぐ飽きるというのがありますし、ゲームとしての特性ですね。
ドラマチックな曲とかは1回聴くときはいいけど、何回も聴くと飽きるんで、いい曲と飽きない曲の中間ですね。
(田崎さんを見て)そうですよね?
kaeru2
曲の流れとかはあまり曲に山をつけたり、AメロBメロサビという繰り返しは飽きやすいでしょうか。
まぁでも、私が気をつけているのは音質的なところです。
nama
ロードラは常に音が鳴っていますが、最近のゲームでは音がないで要所のみで鳴るものも多いですよね。
ロードラはやっぱり音ずっと鳴っているのがいいと思うんですけども、そうなっている明確な理由をいただいてもいいでしょうか?
miya
ゲームとして音がないのが音の演出であるので、そこで適切であれば音がないシーンとか入れると思うんですけど。
ロードラの場合は音が鳴っていないとゲームが進行しているかわからなくなってしまうので、入れているというのはあります。
あとは音楽に助けてもらっているということが非常に大きいと思います。
メニュー画面とか音がないと簡素な画面になってしまうんですけど、音が鳴っている事によって冒険の前の盛り上がる感じがでているんですよ。
(田崎さんを見て)ね?
kaeru2
うん、宮内ディレクターわかっていてエライぞ!(笑)
miya
あとは画面のサイズも大きくて、見れるサイズが違うから受ける印象も違うんですね。
家庭用の大きなサイズだったら音を付けないかもしれませんが、スマホだったら音つけるかもしれないですし。
nama
田崎さんの長いキャリアの中でなにか音楽的な転換点があれば教えて下さい。
kaeru2
今時点で見ると『忍道2 散華』が転換点ですね。
ある意味、ゲーム全体(の音)でトータルにやりたかったことと、ゲームの内容がシンクロして「はあ、これだよね」って達成感があったタイトルなんです。
それまではどうしても前もって作らなくてはいけないとか、ゲームにのせて内容と食い違うところがあって、完全にぴったり行って「生きていて良かった」。


▲『忍道2 散華』の紹介動画。

nama
田崎さんのキャリアの転換点を作った会社がアクワイア、ということですね。
kaeru2
実際、毎年成長が出来る会社で、すごくいいと思います。
ロードラでも最初から今乗っている物を作っていたわけではなく。自分では「まあ、こんなところだろう」と渡していたものを、
何回も何回も「あのぉ!」「あのぉ!」と宮内がリテイクを出して。
miya
そんなにいいましたっけ?
kaeru2
「あのぉ!」って。
で何回もやっているうちに「ああ、こうなったの?」という形になって。
「まあ、こんなのもありか」って。
miya
ものすごい不満みたいな…(笑)
kaeru2
不満じゃなくて、自分は自分の曲を作りたく“ない”わけですよ。
自分ではないものを作ると「いい、これ面白いよ、私、普通はこんな物作らないもん」という感じね。
nama
初期のロードラの曲で言うと、どんな感じだったんでしょうか?
miya
実際ディレクターから聞いてみても、まったく違う曲だと「こっちがいいよ」となるんですけど。
田崎さん、クエスト中の曲とか3バージョンぐらいつくってくれて、ちょっとテンポが違う曲とか山の位置を変えたり、少し大きめにしているとか…。
それを聞いてどんどんすりあわせていって作った気がしますけど。
kaeru2
そうでしたっけ?(笑)
miya
そこで裏切らないでくださいよ!(笑)
ありましたよ!
どのバージョンが本命だったんですか?
nama
ディレクターの宮内さんと、田崎さんのやり取りの中で曲が磨かれていったわけですね。
二人のやり取りの中で、1人ではつくれないものを作っていく。
kaeru2
そうですね。
ディレクターが妥協しないで言ってくれるので「彼の頭の中にこぉいうのが鳴っているんだろうな」という音に近づけなきゃいけないんだろうなと思い始めて。
「いやぁ、ちょっと」
といわれると。
自分の中にない、彼の頭の中にあるものを頑張って作って「ほぅ、こういうのが君の好きなやつか(ニヤニヤ)」と(笑)
miya
ディレクターとして初めてだったのでどの程度まで言っていいのかわからなかったというのもあるかもしれませんね。

▲2人のやり取りの結果生まれたクエスト曲はこの動画の16秒目ぐらいから聴けるぞ。

nama
と言うことは、ディレクターとしてロードラを送り出す経験を経た宮内さんと田崎さんの曲はまた1つ階段を登ったものができてくるのでしょうか。
kaeru2
かもしれませんね。
という事で、前半は終了。
ゲーム音楽の歴史がかいま見られた他、ロードラの音作りの基本がわかる興味深い内容だった。
続きのロードラインタビュー第3回(後編) ではロードラの話が完全にメインになるので引き続きお楽しみに!


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攻略リンク:

ロード・トゥ・ドラゴン攻略(ゲームキャスト)

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