日本で1980年代に流行った遊べる小説本、ゲームブック。
あの『ドラゴンクエスト』シリーズですら当然のようにゲームブック化されていた、というほど流行ったなかでも金字塔と呼ばれ、ブームの火付け役となった『火吹山の魔法使い』が近代的なゲームアプリとしてリメイクされて蘇った。
名前もそのまま『火吹山の魔法使い(原作名:Warlock of Firetop Mountain)』。
冒険者になって“火吹き山“の地下迷宮に挑戦し、邪悪な魔法使いザゴール打倒を目的とする王道のダンジョンもので、今となっては古めかしい粗筋だけに「今さらプレイして楽しめるのだろうか」と不安に思いつつ触ってみたのだが……やっぱり、これは面白い。
App Store から Steam までさまざまなプラットフォームで出ているが、とくに日本語に対応している Nintendo Switch 版はかつて原作を遊んだ世代なら自信を持って勧められるし、そうでなくても楽しめる、と言うほどに良くできているので紹介していく。
さて、最初にゲームブックについてもう少し説明しておこう。
ゲームブックとは、読者の選択で物語の展開が変化するアドベンチャーゲームのような本だ。
1冊の本に短く区切られた物語がたくさん綴られていて、物語での決断のタイミングでは「○○するなら10ページへ、××するなら11ページへ」などと、指定がある。
敵とのバトルや、ランダム性が必要な場所ではサイコロを振って結果によって行くページも変わったりする。
そして、指定されたページに行くと、選んだ行動の結果が示されて冒険物語が続く。
そんな形で行動を選択し続けてエンディングを目指す本である。
▲ゲームブック『ドルアーガの塔』、Amazonのサンプルページより。当時、日本の有名ゲームの多くがゲームブックになっていた。
アプリ版もテキスト主体で冒険の様子が語られ、プレイヤーが選択肢を選んで進んでいく遊び方自体は変化していない。
ただし、現代のコンピューターゲームとして遊べるように、それ以外の部分は大胆に手が入っている。
まず素晴らしいのは、テキストだけで表現されていた火吹山の近辺、ダンジョンが全て3Dジオラマとして表現されており、テキストにあわせて風景が描写されること。
ゲームブック内では一枚の絵として表現されていた場所も……。
この通り、3Dで完全再現。
イラストもカラー化されて収録(原作バージョンもあり)されており、見比べて楽しめる。
複雑な構造だったダンジョンの全体像も、立体的な建物として破綻なく作り上げられている。
ゲームのために作られたというよりも、「俺たちは昔、こんな場所を探索していたんだな」と思える、素晴らしい作り。
これだけで、往年のプレイヤーには買う価値があると言えるだろう。
▲建物として構造が破綻しないように映像が作られている。
ダンジョン探索の面白さは、現代風にライトにされつつ、面白さを引き継いで再現されている。
『火吹山の魔法使い』は広大なダンジョンを探索し、さまざまな選択をして障害を取り除いていくゲームだ。
ダンジョンにはさまざまな困難やイベントが待ち受けていて、1回や2回の探索では攻略が難しい。
敵とのバトルや、ランダム性が必要な場所ではサイコロを振って結果によって行くページも変わったりする。
そして、指定されたページに行くと、選んだ行動の結果が示されて冒険物語が続く。
そんな形で行動を選択し続けてエンディングを目指す本である。
▲ゲームブック『ドルアーガの塔』、Amazonのサンプルページより。当時、日本の有名ゲームの多くがゲームブックになっていた。
アプリ版もテキスト主体で冒険の様子が語られ、プレイヤーが選択肢を選んで進んでいく遊び方自体は変化していない。
ただし、現代のコンピューターゲームとして遊べるように、それ以外の部分は大胆に手が入っている。
まず素晴らしいのは、テキストだけで表現されていた火吹山の近辺、ダンジョンが全て3Dジオラマとして表現されており、テキストにあわせて風景が描写されること。
ゲームブック内では一枚の絵として表現されていた場所も……。
この通り、3Dで完全再現。
イラストもカラー化されて収録(原作バージョンもあり)されており、見比べて楽しめる。
複雑な構造だったダンジョンの全体像も、立体的な建物として破綻なく作り上げられている。
ゲームのために作られたというよりも、「俺たちは昔、こんな場所を探索していたんだな」と思える、素晴らしい作り。
これだけで、往年のプレイヤーには買う価値があると言えるだろう。
▲建物として構造が破綻しないように映像が作られている。
ダンジョン探索の面白さは、現代風にライトにされつつ、面白さを引き継いで再現されている。
『火吹山の魔法使い』は広大なダンジョンを探索し、さまざまな選択をして障害を取り除いていくゲームだ。
ダンジョンにはさまざまな困難やイベントが待ち受けていて、1回や2回の探索では攻略が難しい。
しかし、イベントの多くには解決方法が存在し、何度もダンジョンを潜っていると「あの強敵は、別の部屋にあるアイテムを使えば簡単なのではないかな」とか想像が働く作りになっており、ダンジョンを何周もまわることでプレイヤーの経験が蓄積し、攻略できるという冒険と繰り返しの面白さは今になっても通じる、と感じた。
同時に、1回の冒険で3度まで復活することができるため、即死な選択(好奇心で選んだら即死の展開がある)に関してはやり直しがきくようになり、理不尽さも軽減。
不思議なダンジョンを探索するアドベンチャーRPGとして、今もって楽しめる形で提供されている。
同時に、システム面でもアプリとして楽しむための変化が行われている。
原作では自由に冒険者を作れていたが、今作では貴族や傭兵など18人のキャラクターから1人を選んで冒険に出る形となった。
各キャラクターは能力値が異なるだけでなく、トラップに気づく「鋭い目つき」や、学問に強い「教養」など異なる(そして原作にない)特殊能力を持っている。
自作キャラで遊べないことを残念に思うプレイヤーもいるかもしれないが、これはアプリとしては良い方向に働いている。
先に書いたとおり、本作は何度もプレイしないとダンジョンの攻略が難しい。
ここで周回プレイ時にキャラクター変更すると、同じ場所に行っても情報が変化し、毎プレイ少し違う冒険が楽しめるわけだ。
また、初期キャラクターを除いて冒険を通じて“魂”を獲得して解放する必要があって、それがやり込み要素にもなっている。
また、原作サイコロの振り合いだったバトルはコマンド選択型のタクティカルバトルに改められていて、これもまたキャラクターによって使用できるコマンドが変化する。
あるキャラクターでは簡単に倒せる敵が、あるキャラクターでは強敵になったりもする。
全ての敵にはきまった行動パターンが設定されており、それに気づけば無傷で戦いを切り抜けることもできる。
これは初心者には手応えが感じられ、慣れれば簡単になるとうところで、何度もダンジョンに挑んで攻略を最適化していく本作の面白さに寄り添ったバトルと言えるだろう。
全体として、懐かしい記憶を呼び戻しつつ、古典に触れてみたい新規プレイヤーも楽しめるリメイクとなっていて、感心するばかり。
往年のプレイヤーならば触ってみる価値のあるゲームと言えるだろう。
なお、本作は Nintendo Switch 版のみ日本語に対応しており、日本語で遊びたいならそちらをお勧めする(初期はバグと日本語翻訳の大きなミスがあったが、今は修正されている)。
ただし、Nintendo Switch 版は起動時とコンテニュー時のロードが長い欠点があり、英語で遊べるなら Steam 版か App Store 版がお勧めだ。
プレイ動画:
概要:
ゲームブックの金字塔を、今風のゲームアプリとして再現。評価:7(要チェック)
おすすめポイント
ジオラマ風グラフィック
映像で表現されることで、シーンが想像しやすい
何度もプレイすることで攻略の糸口が見えるダンジョン
気になるポイント
何度もプレイすることで攻略の糸口が見えるダンジョン
Switch版はロードが長い
Switch版を除いて日本語に対応していない
Switch版の翻訳は不自然ではないが、雰囲気があるものでもない
定価で買う場合、価格に対してボリューム不足は感じる
アプリリンク:
定価で買う場合、価格に対してボリューム不足は感じる
アプリリンク:
開発: TIN MAN GAMES(オーストラリア)
販売:コーラスワールドワイド(日本、Switch版のみ)
レビュー時バージョン:1.0.5
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中。