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2020年、Apple Arcadeは密かに大きく変わっていた。2020年で見えた長所と大きな短所、2020年に起きたサービス存在価値の転換

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Spotify などの音楽聴き放題、Netflix などの動画見放題などんに続き、ゲームの世界にも会員制・定額遊び放題の波がやってきている。
たとえば、プレイステーションのオンラインサービスと統合された『プレイステーション+』は2020年9月30日時点で4,590万人の加入者(※1)がおり、SIE の主要な収益源となっている。また、マイクロソフトの最新作を含む新作が発売日から遊べる『Xbox Game Pass』も同時期に1,500万人を達成(※2)し、存在感を示している。

盛り上がりを見せる定額ゲームサービスのなかで、2020年、Apple の定額ゲームサービス Apple Arcade は目立たず、こっそり変化指定飛躍に備えていた。


まず、Apple Arcade について改めて紹介しておこう。
Apple Arcade は Apple が提供する100以上のゲームが遊び放題となるサービスで、下記の特徴を持っている。
1.広告なし、オフライン動作するモノ多数、買い切りゲームの体験を提供。
2.ゲームはスマホでは Apple Arcade 独占。
3.マルチプラットフォームの場合、Apple Arcade で最初にリリースされる。同時発売は可能。
4.Apple Arcade のゲームは、他の定額ゲームサービスで提供されない。
5.サービスの家族共有が可能。
6.クラウドセーブ対応し、Mac、Apple TV、iOS端末で同じゲームを遊べる。
定額制サービスの中でも Apple Arcade は異質だ。
定額制のゲームサービスは古くから存在するが、過去の小さな定額サービスはミニゲームの寄せ集めか、基本無料ゲームのようにステージ追加が容易なゲームを集めたものになりがちだった。
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▲フィーチャーフォン時代は月額ミニゲームサービス全盛だった。画像はアタマスイッチ!プレスリリースより

これは簡単な話で、時間が有り余っているか、特定の人気ゲームだけを遊び続けたいプレイヤーも多い。
そういったプレイヤーの需要に対応するためにはステージを簡単に追加できる『キャンディクラッシュ』とか『探し物ゲーム』形式が都合が良いため、最初は面白いサービスもだんだんと焼き増しになっていくという理由による。

近年は UBI や EA が定額サービスを開始したが、それらは自社看板タイトルで集客し、残りのタイトルは比較的小粒になり、他所のサービスで無料配布・定額サービスで提供されている実績のあるものだった。
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▲EAの定額サービスEA Play。EAの看板タイトル・過去タイトルがずらりと並ぶ。

ところが、Apple Arcade はそのどちらでもない。
Apple Arcade には、ほかのプラットフォームで発売されていない新品のインディータイトルだけ。
マルチプラットフォームタイトルでも、世界で一番最初に遊べる場所は Apple Arcade と決まっている。
ミニゲームではなく、独占新作インディーゲームだらけの他にない豪華サービスである。
しかし、同時にインディーゲームばかりで誰もが話題にするキラータイトルが存在せず、伸び悩んでいるというのが2019年の Apple Arcade だった。
余談になるが、私は『Infinity Blade』の新作が Apple Arcade で出ると予想していた。
Apple Arcade のキラータイトルは絶対必要で、Apple 製品を触っている人々に協力に訴えるのは iPhone の進化の歴史とともに成長してきたこのシリーズしかないと思っていたからだ。
実際にはキラータイトルは用意されず、それどころか2020年は Epic Games と『フォートナイト』を巡る訴訟に入って、それは二度と実現しそうにない様子を見せている。がっかりした事件だった。
で、2020年はどうだったかというと、基本的にはそのままだった。
しかし、この1年で Apple Arcade を取り巻く状況が変わり、2021年は勝負をかける体制が整いつつある。
2020年に1年間契約して遊び続け、プレイヤーとして新たに気づいた Apple Arcade の長所と短所、それを踏まえた上で2021年は Apple Arcade が飛躍する可能性があることをここに書いていく。

まず、新たに見つけた Apple Arcade の長所を2つ。
1つ目は、Apple Arcade でしか遊べない独占ゲームタイトルが多く、それが他の定額サービスよりも早く蓄積されること。
多くの定額ゲームサービスは少数の独占タイトルと、他所でも遊べるゲームで構成されている(入れ替えを伴うこともある)。
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▲Xbox Game Passでは頻繁にタイトルが入れ替わる。

しかし、Apple Arcade は今のところすべてが独占タイトルで、過去に出たゲームもすべて遊べる。
すると「これが遊びたいけど、1本だけじゃ契約したくない」というプレイヤーも、いつかは遊びたいゲームが増え、加入するときがやってくる。
考えてみれば当たり前なのだが、独占タイトルだけで構成される Apple Arcade ではこの力が強い。
何か1本キラータイトルが出たとき、「あれも、これも Apple Arcade でしか遊べないから、この機会に加入するか」となる。

続いて、アップデートも魅力だ。
『グラインドストーン』や『Bleak Sword』のような Apple Arcade 内で人気のゲームはアップデートで拡張もされる。
エンディングがある買い切り形式のゲームでも、サービス内で人気だとアップデートされるのは Apple Arcade の特徴と言えるだろう。
このあたりも、工夫次第でセールスポイントにできそうたと感じた。
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▲GOTYモバイルにノミネートされた『グラインドストーン』。ステージが追加されてまた話題になった。

続いて、短所。
一番の不満は、Apple 独自のゲームSNS『Game Center』が足を引っ張ることだった。
Game Center はオンラインマッチング機能なども提供しているが、普段は使わないからフレンドを探せない。
また、オンラインでフレンドと遊ぶときも面倒な手順があるし、接続も切れやすくて最悪。
ベルトスクロールアクション『SCRAPPERS』はマルチプレイが面白いのだが、Game Center を利用しているせいで接続が切れやすく、途中で遊ぶのをやめてしまった。
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サービスを継続する理由がないのも、1年間会員を続けて強く感じたところだった。
1ヶ月に4本程度が追加され、その中の1本ぐらいは積極的に遊びたいと思えるゲームがある。しかし、定額はたくさん遊べることが売りだし、600円あればスマホでは欲しいゲームが1本買える。
ならレンタルに近い定額サービスなら毎月2本分は遊びたいゲームが出て欲しい。
そうでなければ、めぼしいゲームを遊び終えた後に解約し、遊びたいゲームがたまった数ヶ月後に再契約するスタイルになってしまう。
これでは継続契約する理由が薄い。

以上が1年遊び続け、新たに感じた長所と短所だ。
長所は数年サービスを続けたら決定的な長所になると思うが、短所は今すぐ致命的な欠点たり得るというったところで、だいぶ良くない。
が、それでも2021年、Apple Arcade は飛躍する可能性があるのではないか、と私は考えている。
その理由は、Apple Arcade のタイトルラインナップ改善と、サービス自体の立ち位置の変化にある。

確かに、2020年の Apple Arcade は苦戦していた。
Apple は会員数を公表していないが、Apple はサービスが成功していれば、WDC などの自社イベントでその数字を発表する。その Apple が数字を出さない時点で苦戦していることは想像される。
これを読んでいる方の周囲で Apple Arcade に加入している人がいるか、その話題があがるか考えれば、「マイナーな存在ではないか」と推測できるのではないだろうか。

しかし、2020年後半の Apple Arcade には改善の兆しが見らた。
Apple はそれまで月に必ず4タイトルを追加していたが、追加作品数が少ない月が出るようになってきたのだ。
そのかわりなのか、SIE や Microsoft が目玉インディーゲームとして紹介していた『THE PATHLESS』や『Samurai Jack』など、比較的大きめな作品が Apple Arcade に登場した。
とにかく独占新作が数あれば良いという状態から、品質を重視し始めたように感じられた。


2020年7月に Apple が方針を変更し、プレイヤーがサービス加入を継続するタイトルを求めていることが報道されていたが、その通りの方針変更だと思う。

また、Apple Arcade はサービスとしての立ち位置も変えようとしている。
これまで、Apple Arcade は月額600円のサービスだった。
欠点の項目でも書いたが、600円はアプリなら好きなものを1本買える価格だから、今のゲーム追加ペースでは不満が出る。
しかし、2020年後半に Apple Music や Apple Arcde、Apple TV+がセットで安く楽しめるセットサービス Apple One が始まって話は変わった。

Apple Music をすでに契約しているユーザーにとって、Apple Arcade は「Apple Music のついでに200円払うとゲームも遊べる」おまけ……付加価値サービスだ。
200円で毎月新しい遊べるサービスと考えるとお得度が違う。
2019年6月時点で Apple Music の会員数は6,000万人。ここに波及すれば、一気に拡大していく可能性はある。

そして何より大きいのは、その拡大のきっかけが2021年にあるだろう、ということだ。
Apple Arcade の発表以来、長らく目玉作品とされた独自キラータイトル『ファンタジアン』が完成間近であると報告され、2021年に発売されそうな気配を見せている。


『ファンタジアン』は『ファイナルファンタジー』生みの親と言われる坂口さんによるRPG作品で、これが出ればさすがにニュース性は高い。


これが出たとき、Apple Arcade 加入者は一時的に増える。
そのときどれだけ人を増やせるか、そしてそのときに Apple Arcade が契約を継続させられるか。
あまりにひどければ縮小して Apple One のおまけサービスに成り下がってしまうかもしれないが……2021年はそういった流れを決める勝負の年になることだろう。

なんて書いてきたが、独占タイトルの多い Apple Arcade はスマホゲーマーなら現時点でも要チェックのサービス。
2020年にリリースされた Apple Arcade 作品のおすすめ10選も記事にしてみたので、「2020年のラインナップはどうだった?」と気になるゲーマーの方は、そちらもあわせてチェックして欲しい。