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ダークソウル系の面白さ全部入り『Pascal's Wager』レビュー。世界観、物語、歯ごたえのあるアクション…やっと、スマホゲーはここにやってきた。

Pascal's Wager (App Store 860円 / GooglePlay 860円)
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やっと、スマホでも『ダークソウル』が遊べるようになった。
その昔、最先端だったアーケードゲームを家でやりたいがため、性能・操作性の異なるゲーム機向けに必死に移植が行われていた時代があった。そして、現代ではスマホでそんな挑戦が続いている。
『コールオブデューティー』をスマホで遊びたい人たちが『モダンコンバット』を遊び、『PUBG』ライクゲームを遊びたい人たちが『荒野行動』を遊ぶ(あとから『PUBG』本家も来たが)。

そして、この『Pascal's Wager(パスカルの賭け)』は、そういった試みが結実した到達点の1つで、『ダークソウル』ライクなゲームをスマホに持ってきた1つの記念碑的作品と言えるだろう。

『Pascal's Wager』は、絶望の世界を旅するダークファンタジーRPGである。
汚穢と呼ばれる黒い霧により、人間生き物たちが次々と異形の怪物と化していく世界。
わずかに生き延びた人間たちは”巨像”と呼ばれる守護神が発する光によって汚穢から守られていたが、その巨像たちも謎の病に倒れ、人間の世は終わろうとしている。
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タイトルにもある『パスカルの賭け』とはフランスの哲学者ブレーズ・パスカルが提唱した「論理的に神がいないとしても、信じていたほうが信じないよりも前向きでいられる」というような言葉である。
人間の希望が次々と消えていく世界で、それでも神を信じるべきなのか。
そんなテーマを交えつつ、主人公テレンスの贖罪の旅が描かれる。
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物語の語り方は練られており、探索を通じて人間社会が崩壊している様子が描かれ、厳しすぎる世界で生きること、絶望の世界の成り立ち、その中で目的をもって生きる主人公の物語が提示される。
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また、道中で仲間になる3人のキャラクターたちも何かを背負っており、ステージを行き来する馬車内の会話、ステージに隠されたアイテムを手に入れて”契約”することで絆が深まったときの会話など、プレイヤーの想像力を刺激する形で上手に物語を語っている。
日本語訳が甘い箇所のは気になったが、少しずつ世界の構造が見える興味深さに、私自身はゲームのエンディングまで一気に遊び、分岐もあったので2週してしまった。それぐらいの魅力がある。
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そんな物語がのるメインゲーム部分は、立体的3Dフィールドを探索しながら敵と戦うアクションRPG。
全部で7つマップがあり、それぞれを探索してボスを倒すと次のマップに移動できる。
1度クリアしたマップは基本的に行き来可能で、メインストーリーに関わる例外を除き、サブクエストや取り逃したアイテムをあとで回収可能。

操作に関してはバーチャルスティックで移動し、弱攻撃・強攻撃・回避(結構長い無敵時間がある)・特殊行動・アイテム・ポーションの6ボタン操作を採用していて、ややボタンが多い。
が、使用頻度に応じて大小・位置関係が工夫されて配置されており、タッチパネルでもかなり操作しやすい(コントローラーにも対応はしている)。
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▲頻繁に使わない操作、特定の条件を満たすと出るボタンは使いづらさもある。ただ、歩く(走るは簡単)操作を除いて問題はない。

敵との戦闘はかなり手ごたえがあり、攻撃などの戦闘行動にはスタミナを消耗し、無駄に連続攻撃などしているとすぐに息切れして動けなくなる。
敵から受けるダメージがとても大きいので、スタミナ切れを突かれたり、ミスすればすぐ死んでしまう。
だから、攻撃パターンを見切って適切に反撃することが重要になる。
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ボスに至っては2~3発もらえば簡単にプレイヤーを行動不能にしてしまうので、まさに死んでパターンを覚えるゲームとなっている。
ただし、その作りに合わせて敵の行動パターンは見切りやすくもなっており「難しいけど、それが楽しい」王道の死にゲー構造を持っている。

と、ここまでは過去にゲームキャストで紹介したスマホ・ダークソウル系にも存在する要素なのだが、この先から本作の大きな魅力、広くて立体的な3Dフィールド探索について紹介しよう。
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フィールドに関しては、見た目からして頭一つぬけている。
もともと『Pascal's Wager』はAppleが「最新のiPhoneではこんな美しいゲームが動く」というデモに使用していたアプリだけに風景の美しさはバッチリ。

見た目に惹かれて遊んでみると単に高低差を上手に使ったプレイして楽しいマップになっていてまた驚く。
ボスを目指す単調な一本道ではなく、サブクエストや寄り道もガッツリ用意されていて、フィールドを歩いていて楽しいのだ。
しかも、視線の誘導やマップで迷わない工夫ができていて、大きく迷うことは少ない。
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▲上に端が見えているが、もちろんそこまで行ける。基本的に敵がいたり、目立つ場所には到達できるしっかりしたフィールドになっている。

また、この手のゲームには進むたびに近道が開放されて、過去に行った場所を簡単に行き来できるようになる仕組みがあるのだが、そういった省力化に関わる要素は多めに用意されていて、ちょっとした空き時間でもちゃんと探索の遊びができるようになっている。
スマホの画面で複雑なマップを、ストレスなく楽しめる作りに驚かされる。
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▲高低差があって立体的。でも見やすい。

フィールド探索とバトルもゲームとしてきっちり融合していて、敵に気づかれずに背後から近づくと”奇襲”ができたり、場合によっては敵を無視して突き進んだりと、頭を使えば厳しい戦いの難易度をさげることもできる。
フィールドを戦うだけの場所ではなく、探索し、駆け引きする場所として成立されているのだ。
総合してみて、Steamやゲーム機に移植しても楽しめるほどのフィールドは良い感じと言えるだろう。
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さらに、本作ではここに”理性”と呼ばれるオリジナルの仕組みが絡んでくる。
『Pascal's Wager』の世界では、何者も正気でいられない。汚穢にまみれた怪物と戦うとキャラクターの理性が削られていく。
理性が減るとまず“異常”状態となり、視界がブレてキャラクターの耐久力や回避能力が落ちる。一方、戦いに高揚してか攻撃力は上がる。
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▲超上級者はわざと理性を下げて攻撃力を上げて戦うが……基本的には異常状態はマイナスが多くて辛い。

さらに理性が減少すると“崩壊”状態となり、キャラクターの影が登場して襲ってくる。これはかなり致命的で、この状態になると助かりようもないことが多い。
が、理性が減って異常状態になったときは敵が良いアイテムを落とすので、ゲームに慣れるほどギリギリの理性値で探索するようにもなり、プレイヤーが難易度をコントロールする面白さが生まれている。
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▲中央に見えている半透明のものが主人公の影。めちゃくちゃ強い。しかも、自分自身なのでプレイヤーが持っている回復ポーションなどを勝手に使ってしまう。おまえのモノは俺のモノ

ちなみに、ボスキャラクター相手に理性を失うと画面が赤く染まり、ただでさえ強いボスがさらに強くなって攻撃パターンまで増えてしまう。
この状態でしか狙えないドロップアイテムもあり、やりこみ要素となっている。
元ネタに当たる『ダークソウル』は人間性を保つと能力が高くなる仕組みがあったが、本作は理性を低くギリギリで保って苦戦しながらレアアイテムを狙うようになっているわけだ。
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▲漫画『ベルセルク』でいう触状態。たぶん、世界観に関する影響としては『ベルセルク』がかなりでかい。

ストーリーよし、バトルよし、探索要素よし。
まさか、スマホで本当にダークソウル系といわれる要素の全般を、楽しいと言えるレベルで作り上げられると思ってもいなかった。
ダークソウル系のインディーゲームとして申し分なく、家では『SEKIRO』や『ダークソウル』を遊び、出先でもそれ系を遊びたいという死にゲー野郎には間違いなくおすすめだ。
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▲キャラデザも媚びがなくて良いと思う。

とはいえ、読者の方にはダークソウル系と呼ばれる高難度ゲームは手を出しにくい。そう思う方もいることだろう。
だが、意外にも『Pascal's Wager』は比較的プレイしやすい。
もちろん、ゴリゴリの高難度死にゲーとしてプレイすることもできるし、どうプレイしても手ごたえがあって何度か倒れてしまう歯ごたえのあるゲームだと思う。
しかし、ものすごくテクニックを磨かないと攻略できないかというと、そうでもないのだ。

冒険中はテレンスに加えて3人の仲間が登場するが、素早く銃で戦うビオラ、ほとんどの攻撃を防御できる戦士ノーウッド、無限に体力を回復できる技を持つベニータなど、どれも個性的な能力を持つ。
各ボス・雑魚的に合わせて使用キャラクターを選んでいくと、道中はかなり楽になる。

また、ボスに勝てないときは敵を倒して手に入る骨でレベルを上げることもできるし、装備を変更してボスに合わせることも可能。
素材を集めて薬をクラフトすれば、大量の薬を使ってボスに競り勝つこともできる。
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▲アイテム強化、クラフト系の要素で強くなれる。

システム的にもイージーモードと通常モードが用意されており、イージーモードは単に簡単になるだけでなく、ミニマップなどが表示されて行き先がすごくわかりやすくなる。
また、通常モードでも「難しすぎる」と思えばステージ1の終盤に登場する卵を手に入れると敵から受けるダメージが大きく減少する。

難易度を変更することに抵抗がある方もいるかもしれないが、物語の先が気になるものだし、世界観も良いので「ダークファンタジーの物語と世界観を結構歯ごたえがあるアクションとともに楽む」ゲームと思って遊ぶのも良い。
「ダークソウル系は面白そうだけど、大変そう。買ったら高いし」と、この系統に興味を持っていて足踏みしている方にもおすすめできる。

ただ、このゲームには1つ大きな欠点がある。
ゲームシステムの説明が甘く、普通にプレイしていると仕組みがわからずに理不尽と感じられるシーンがあることだ。
それは説明して解決できるものなので、ネタバレにならないように「ゲームの説明書」記事を作らせていただいた。
逆に言えば、説明以外のゲーム本体の面白さは十分以上で、そういったものを書いてでもおすすめしたいほどのゲームなので、ぜひ試して欲しい。

ボリューム的にも公称20時間、実際に私が1周目をクリアするまで十数時間かかったので、フルプライスのゲームに近い内容を誇って定価860円。
iOS版もAndroid版もセールで買えば500円以下。
正直、お得としか言えないので今(セール期間中)がお買い得だ。

概要:
厳しい戦いを死にながら復活しては切り抜け、絶望の世界を旅するハード・ダークファンタジーRPG。ベルセルクの影響を強く感じる

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
立体的な3Dフィールドを楽しめる
手応えのあるバトルと、フィールド探索
キャラクターの背景が気になるストーリー
設定を変更すればiPhone6sなど数年前の端末でも軽快に動く

気になるポイント
説明不足でゲームを楽しめない部分がある(説明記事を用意したので、見ればOK)
日本語が怪しい(これが直ったら評価9)
歩く操作など頻繁に使わない操作はやや使いづらい

アプリリンク:
Pascal's Wager (App Store 860円 / GooglePlay 860円)

販売:Giant Network(中国)
開発:TIPSWORKS(中国)
HP:https://pw.giant.games/
レビュー時バージョン:1.2.3
課金:衣装、追加ダンジョン(120円)

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中