日本のゲームが衰退していると言われて久しい。
確かに世界的にはオープンワールドRPGやFPSが人気で、この分野では日本は弱く、技術的な面でもすでに遅れを取っている。
だが、筆者がどうしても欧米を信頼できないゲームジャンルがある。
"シューティング"だ。
欧米のシューティングゲームは当たり判定が大きく、敵弾を回避しきれないが、耐久力と回復力はやたら高く、ガンガン被弾しながら無理やり突き進んでいくものが少なくない。
私はこれを"欧米型ゴリ押しシューティング"と呼んでいる。
そしてまた、スマホにそんなゴリ押しシューティングが爆誕してしまった。
『Aces of the Luftwaffe - Squadron』だ。
「Luftwaffe」(ルフトヴァッフェ)とは第二次世界大戦中のドイツ空軍の呼び名だ。
「エース・オブ・ザ・ルフトヴァッフェ」という名を聞いた諸君の中には、総統のためにフォッケウルフを駆って米英軍と戦ったり、シュトゥーカで無数のロシア軍を鉄くずにできるのかと胸を躍らせた者もいると思うが、残念ながらゲームの舞台は戦後のアメリカであり、ハリウッドなストーリーで、アメコミな登場人物が、アメリカンなシューティングを展開する、カモンベイビーアメリカなゲームである。
一応、開発元はドイツのメーカーだが、今のかの国でルフトヴァッフェを賛美しようものなら逮捕尋問打首獄門になりそうなので致し方のないところであろうか。
誤解の無いよう先に述べておくが、ゲームはなかなかに楽しめる。
欧米のシューティングの中では間違いなく上位であろう。
しかし紛う事なき"欧米型ゴリ押しシューティング"の権化であるこの作品を日本人が、特にケイブや東方のような弾幕シューティングを愛する者が見たら、不満と違和感が心の奥底から際限なく湧き出てくることは必定である。
それはそれで異文化遭遇的な浪漫であるかもしれないが、つまりはそういう作品であることをご承知おき願いたい。
価格はiOS版860円、Android版900円。
SteamやNintendo Switchでも販売されており、スマホ版は2018年に発売されたPC版の移植となる。
縦スクロールのシューティングゲームであるが、見ての通りの横画面である。
元がPCのゲームであったことを考えると仕方ないのかもしれないが、すでにこの時点で違和感は天を突く。
画像はiPadのものだが、スマホだとかなり窮屈に思えるだろう。
操作も相対移動ではなく、指を置いた場所に自機が位置するタイプである。
操作性は悪くないが、これだと他の指がボタン以外の場所に触れると、その位置に自機がすっ飛んでいく誤操作が起こってしまう。
そもそも指の位置に自機なんて10年前のスマホシューティングの操作であり、もはや古き良くなきノスタルジーさえ漂ってくる。
※アップデートで相対コントロールやジョイスティック感度調整が追加されたため、操作については改善されています。
こちらが硬いのと同様に敵もやたら硬く、序盤のザコさえ数発撃ち込まなければ倒せない。
シューティングにあるべき爽快感や無双感など全力で投げ捨てられており、倒しきれない敵編隊との濃厚接触をひたすら避け続けねばならない。
ただ、プレイを繰り返すことで経験値が溜まってレベルアップし、攻撃力などを強化することができる。
パワーアップしないとロクに敵を倒せないゲームだが、ツリー形式の豊富な強化項目はプレイヤーのやる気を促してくれることだろう。
難易度にもよるが、敵弾は結構多く、相応の弾幕が展開される。
弾幕と言っても綺麗なものではなく、ただ弾をバラまいてくるだけの美意識の欠片もないものが大半だが、ゴリ押し型とはいえ相応の回避能力も必要とされる。
とは言え、耐久力+残機制で、ステージクリアごとにメニューに戻る、つまりライフも残機もクリアごとに回復する形式のため、難易度はそこまで高くはない。
しかし画面下に敵が陣取り、斜め下から敵編隊が出てくるなど、指で画面が隠れてしまうスマホシューティングの問題点を清々しいほどに無視した、配慮の欠片も血も涙もない攻撃が次々と現れるため、そこは覚悟して頂きたい。
特に中盤以降のボスは初見殺しであり、欧米シューティングでおなじみの前兆のないビームなど、無茶で理不尽な攻撃を無慈悲に繰り出してくる。
高度な弾避けのテクニックは要求されないが、ボス戦ではパターン化が必須となるであろう。
パワーアップ画面。レベルアップで得られるスキルポイントを消費して強化を獲得する。
行き詰まってもクリアできるステージを繰り返して育成することが可能。
アクティブスキルとパッシブスキルがあるが、アクティブスキルは択一となる。
ボタンのスライドで切り替え可能だが、個別に発動できず、スキルポイントの無駄なので、使うものをひとつだけ強化していこう。
後ろに張り付いた敵から攻撃を受け続けるステージ。これで当初は自機の下には必ず指があったのだから呆れるほかない。
現在は相対コントロールにして側面に指を置いてプレイすれば何とかなる。横から敵が出てくることも多いが……。
なお、僚機がビームを撃っているが、味方のアクティブスキルは自動で発動する。
強力なものもあるので、仲間の強化もお忘れなきよう。
即死極太ビームを出しながら回転する凶悪ボス。もちろんビームは突発的に出してくる。
回転速度も速く、しかもいきなり回転方向を変えたりする、これでもかと言うほどの初見殺しぶり。
幸い、このゲームのボス戦に道中はないので、何度も挑んでパターンをつかもう。
この作品の最大の特徴は、4機編成の2つのチームがあることだ。
ひとつはアメリカチーム、もうひとつは元ルフトヴァッフェ、つまりドイツチーム。
それぞれステージ構成はまったく異なり、個性的な連中がジョーク混じりに破天荒な戦いを繰り広げる。
登場機体は史実をモデルにしているが、タイトル画面でハウニブ(ナチスUFO)が飛んでいることからわかるように、まともな歴史観を期待してはいけない。
いかにもアメコミ風の超常的で勧善懲悪なストーリーだ。
主人公機以外は僚機で、自機の近くに位置して共に攻撃してくれる。
『1943』のサイドファイターに仲間が乗っていると思えば良いだろう。
被弾して早々にやられてしまうことも多いが、退場しても一定時間で戦線に復帰する。
ただしこのチームメンバー、ことごとくあり得ない問題児ばかりである。
高所恐怖症だったり戦闘中に熟睡するのはまだマシで、突然発狂して他機に衝突しながら暴れ回ったり、急に豹変して味方を撃ち始めるなど、"キャラ付け"や"個性"を高高度に超越した奇人変人しかいない。
毎ステージ誰かがバッドステータスを発症し、大迷惑をかけ始めるトラブルメーカーの博覧会であるため、プレイヤーは敵と戦いながら仲間のお守りもしなければならない。
頻繁に会話シーンになるが、特にドイツチームは会話も奇天烈である。
ゲームは5つのエピソードに分かれており、それぞれにボス戦を含む5ステージがある。
作戦の内容はバラエティーに富んでおり、欧米STGによくある"攻撃せずに逃げ回る”という面白味に欠けるステージもあるが、全体としては飽きずに遊べる構成になっていると言えよう。
仲間を攻撃し始める仲間。もはや敵でしかない!
主人公を含めた全員がマイナス特性を持つ、キャラが立っているどころか逆立ちしている厄介なゲームである。
なお、言語を日本語にすると「通信を傍受されないように日本語で喋っている」という設定になる。
ボス撃破後にはちょっとしたムービーシーンが。演出はかなり凝っている。
米独両チームを合わせると計50のステージがあり、ボリュームは十分だ。
日本の常識がことごとく通用しない、まるで海外旅行のようなシューティングである。
だが、この風変わりさこそが日本人にとって、この作品の魅力でもあろう。
例えば、常識的で踊らないインド映画に何の魅力があろうか。インド映画は無意味に踊ってお馬鹿な展開が連発されるから良いのである。
中途半端だと辟易するが、この高品質なゴリ押しシューティングにはアメコミ的なパワフルさがある。
そうした違和感と異文化を大らかな心を持って楽しむのも、また乙であろう。
なんだかんだ言って遊べるゲームである。
少なくともオペレーションドラキュラよりは、だいぶマシである。
特に弾幕が苦手な方、派手な21世紀シューティングより90年代以前のシューティングが好みの方には、悪くないはずだ。
気が向いたらシューティングの異文化チャレンジに挑んで頂きたい。
概要:
欧米的な、あまりに欧米的な縦スクロールシューティング
評価:7(シューティング好きにはお勧め)
おすすめポイント
日本の常識から外れたシューティング
ふたつのチームに5章の物語がありボリューム十分
豊富な強化スキルがありしっかり遊べる
気になるポイント
ありすぎる
日本の常識から外れたシューティング
アプリDL:
Aces of the Luftwaffe - Squadron (iOS 860円 / Android 900円 / Steam 3360円 / Switch 3443円)
※スマホ版はSteam版のExtended Editionに相当
開発:HandyGames(ドイツ)
開発:THQ Nordic(オーストリア)
HP:https://handy-games.com/en/games/aces-of-the-luftwaffe-squadron/
レビュー時バージョン:1.0.10 / 1.0.13
課金:なし
動画: