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剣ではなく、ルールで殴り合え。ゲームルールを書き加え、変更して戦うローグライク・パズルRPG『Seven Scrolls』レビュー

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君の装備は剣でも鎧でもなく、このゲームのルールだ。
魔法の巻物によってゲームにルールは変わっていく。ゲームルールを自分に都合よく(簡単にはいかないが)を書き足して、ダンジョンの奥深くを目指せ。
今回紹介する『Seven Scrolls(7枚の巻物)』は、タイトルの示す通り7枚の巻物によってゲームに新しいルールを書き加えて攻略する“ゲームルールと戦うローグライク・パズル”だ。

人によっては本作に名作パズル『Imbroglio』の影響を見て取るだろうが、実際、本作はその作者に意見を聞きながら作られた公認の作品であり、同時に異なるプレイ感覚も提供する新しいゲームになっている。

まず、基本となるルールはシンプル。
ゲームを始めると5×5の盤面が表示され、プレイヤーが操作はスワイプすると上下左右に1歩、修道士(主人公)が移動する。
その後で魔物(敵)もまた1歩移動し、プレイヤーの手番が巡ってくるターン制のゲームとなっている。
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修道士は、視界が届く直線状に魔物がいると、その方向へ移動する代わりに攻撃を行う。
ダメージを与えて魔物のハートがゼロになると、魔物は消えて一定確率で決まったアイテムをドロップする。
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魔物のドロップアイテムのなかでも重要なのが“鶏”が落とす“鍵”。
これを拾うと階段の錠が開き、次のフロアまで移動できるようになる。ひたすら進んでダンジョン最奥を制覇することがゲームの目的となる。
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ところが、ゲームを少し進めると上で説明したルールの枠内では倒しきれないほど大量の魔物が出現し始める。
そして、そこで出番となるのが冒頭に語った“ゲームルールの書き足し”だ。

『Seven Scrolls』では、魔物のドロップアイテム“巻物”を取得するたび、ゲームに新しいルールが追加される。
ルールは、“発動条件(〇〇をしたら)”+“対象(誰が)”+“効果(どうなる)”で示され、「魔物を倒すと、もう1体の魔物が倒れる」とか、「修道士がダメージを受けると、魔物もダメージを受ける」とか、そんな内容になる。
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▲膨大な組み合わせでルールがランダム生成される。

巻物は最大7つまで持ち歩くことができ、持っている間はずっと効力を発揮する。
プレイヤーに都合の良いルールが書かれている巻物を集めれば、「魔物を倒すと、もう1体の魔物が倒れて、魔物がダメージを受けて、修道士が特殊能力を得て……」と、無双の強さを発揮でできるわけだ。
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が、巻物にはプレイヤーに不利なルールが記されていることもある。
「魔物を倒すと修道士がダメージを受ける」とか、「修道士が鍵を手に入れたら魔物がクローンで増える」とか。
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こうした不利なルールを排除するために、画面上の巻物ストックをタッチして「巻物を使って消す」ことができる。
ところが巻物を消すのが絶妙に難しい。
「魔物が回復する」なら魔物が傷ついていないと使えないし、「魔物が弾を撃つ」なら修道士に魔物の弾が当たるタイミングでないと使えない。
つまり、不利な巻物の効果を打ち消すためには、必ず1回は不利な効果を受けなくてはいけないのだ。
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こういったシステムは目新しいし、ゲームとしてもうまく成立していて序盤の時点でもすでに面白い。
が、ゲームが進むと“ルール書き足し”の結果は派手になり、さらに面白くなる。
まず、修道士側はアミュレットによる能力強化でよりルールの組み合わせに幅が出る。
ダンジョンを7階層降りるたびにアミュレットが置いてあり、これを取得すると巻物と別に“爆発無効化”や“氷結無効化”など強力な守護の力が得られる。
すると、不利なルールですら有利に使用できるタイミングが生じ、戦術が変化していく。
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▲さらに、7階層ごとに巻物が1つを残して全部消えるリセット要素も。引き継ぐ強力な巻物を探すのも重要。

不利なルール側だって、もちろん派手になる。
ゲームが進むと「鍵を取ったら修道士が殺される」などの即死ルールも登場し、手持ちの巻物のルールを逆転させる魔物まで登場する。
逆転効果を受けると「魔物を倒したらもう1体の魔物が倒れる」というルールが、「魔物を倒したら修道士が殺される」などと効果対象が変化してしまう。こうなるともはや絶望しかない。
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▲魔物を倒したら修道士は殺される……完全に詰み。

……勘の良い方なら、これを利用して不利なルールを逆転させることを考えつくだろう。もちろん、それもできる。それを思い付いたあなたはこのゲーム向きだ。

そうして有利も不利もルールはインフレしていき、最後になるとプレイヤーが何かするたびに爆発が発生し、魔物が倒れるようなスティーブンセガール真っ青な超インフレ世界が生まれることもある。
後半になるほど7つの巻物のルールはカオスに絡まり合い、思いもよらぬ結果を作り出す。それが楽しいし、攻略しがいもある。
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▲分身能力で修道士を増やし、数の暴力でフロアを一層の図。1フロアに10人単位の修道士を配置することも可能。

『Seven Scrolls』は、ゲームのルールを書き足して攻略する新鮮なローグライク・パズルRPGとなっている。
ざっと十数時間以上は楽しめるだろうし、価格も370円(Android 340円)。興味を抱いたら試せる程度のお安い価格。
決して簡単ではない(とくに慣れるまでは全然進めない)が、パズル好き、論理的にルールを解釈するロジカル・シンキングができるプレイヤーならば存分に楽しめるはずだ。

概要:
ランダムに生成される5×5マスのダンジョンで、魔物を倒しながら階段を目指すローグライク・パズルRPG。ゲームルールが次々と加わり、その解釈と調整が楽しい。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
ゲームルールを足して(引いて)進むゲームプレイ
知恵と決断力が試されるゲームバランス
慣れるほど先に進める手ごたえ

気になるポイント
運要素がやや高め

アプリリンク:
Seven Scrolls (itunes 370円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 340円)

開発:Venbrux(日本)

HP:http://simogo.com/work/sayonara-wild-hearts/
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中
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