![WS000257](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/iPhonegamer/20230703/20230703060718.jpg)
1月23日にUnity本社で行われた「ハイパーカジュアルナイト」のレポートをお送りする。
今回のレポートにおいてメインで紹介する登壇者は、芸者東京の代表取締役CEO田中泰生さん。
今回は「ハイパーカジュアルを2年弱ぐらいやってみて、思っていることを語る」とのことだったが、語っていること、その後の懇親会で聞けたことが興味深かったので、その中で気になった部分を書いておく。
ハイパーカジュアル商売とは?
まず、当ブログ読者には“ハイパーカジュアル”という単語自体が耳慣れないものかもしれないので、ここで説明しておく。
ハイパーカジュアルゲーム商売とは、プレイ対象を限定しないシンプルなゲーム(ハイパーカジュアル)によって多大なプレイヤー数を獲得し、薄利多売で儲ける商売方法だ。
![ss1](https://is3-ssl.mzstatic.com/image/thumb/Purple128/v4/5d/bd/ec/5dbdec4a-259c-79cd-fce4-fafd7f01a28e/mzl.rsjccgqx.png/360x480bb.png)
▲説明不要、シンプルで短時間にハマれるゲームを作る。画像はハイパーカジュアルのヒット作『Stack』
基本無料ゲームの課金商売、有料ゲームによる販売と異なり、口コミやゲーム媒体による宣伝を前提とせず、動画やバナーなどの広告ネットワークで大規模な宣伝をかけ100万、500万のプレイヤー数を獲得することを前提とする。
例えば、1DLにつき$0.5程度儲かるアプリを作成し、広告を出してアプリ1ダウンロード当たり$0.4でプレイヤーを獲得できれば、差額で1DLあたり$0.1儲かる。すると100万DLに達すれば$10万(およそ1,000万円)の売り上げとなる。
ハイパーカジュアルで1回当たると、当たったハイパーカジュアルゲームに自社の別のハイパーカジュアルゲームの広告を出すことで客を大量獲得でき、効率が良くなるのも特徴。ゲームの中の「お知らせ」機能がメディアの役割を果たすようになる。
VOODOOやKetappなどによって有名になったが、日本は広告で獲得できる収益が高かったこともあり、2012年ごろからGoodiaなどのカジュアルゲームメーカーが同様の商法で売り上げていた(アプリマーケティング研究所へ)。
![ss1](https://is5-ssl.mzstatic.com/image/thumb/Purple4/v4/aa/8d/04/aa8d04da-b626-e47b-0ff3-e2307c6cc8ac/mzl.vqnndmxu.png/360x480bb.png)
ハイパーカジュアルゲームが世に出るまで
では、実際にハイパーカジュアルゲームが世に出るまではどのような経過をたどるのか。セッションでは田中さんが具体的な数字と共に紹介してくれた。
芸者東京では、毎朝3~4本のゲームアイデアが出される。、アイデアだけで没になるものもあれば、1日開発して没になるものもある。
週に15~20本のアイデアが提出され、その中から3本ぐらいが毎週Facebookテストまで到達する。
Facebookテストとは、Facebook広告などで出稿し、どこかの国のマーケットでテストすること(いわゆるソフトローンチ)。
$0.4ドルで1ダウンロード獲得できればまあOK。継続率が1日50%、3日30%、7日15%維持できる事を確認できれば、勝負になる。
このように書くと「データだけ良ければいいのか」と聞こえるかもしれないが、DL効率が良いのは「魅力的に見えるから」だし、プレイの継続日数が長いものは「面白いだろう」と推測できる。データは、重要なことを教えてくれる指針だ。
そして、そこから厳選したタイトルを3カ月開発して磨き上げ、正式リリースされる。
ただ、ヒットの予感に関しては感覚的なものもあるようだ。
まず、ゲームの魅力に関しては4つのステップがあると考えられており、
「1.聞いて面白い→2.見て面白い→3.触りたくなる→4.伝えたくなる」
つまり、聞いて興味を惹かれ、見て面白くければ触りたくなり、触った後は伝えたくなるループを重視しているという。
面白くなるものはプロトタイプを見たときに「ワオ!」という驚きがあるという。その驚きとは「すごい」でもいいし「ゲラゲラ」でもいいし、感情を動かされることが肝要だという。
セッションの話を聞く限り、最初は「感情を動かされるゲーム」という曖昧なところをもとにして、それが本当に面白いかどうかはデータで判断するように聞こえた。
分業が進む芸者東京
セッションの中で最も印象的だったのは「ハイパーカジュアルにもリッチ化の波が訪れている」と聞こえることだった。
ハイパーカジュアルゲームと言えば、肥大化したソーシャルゲームなどに対して「アイデア次第で1人でも行ける」というイメージがあったが、芸者東京ではそういった開発体制は終わっていた。
ハイパーカジュアル参入時から2019年初めごろまで、田中さんは「ハイパーカジュアルは各自が好きに作る」と語っていた。しかし、現在ではそれが変化している。
1年以上ずっと開発している中で、企画力が高い、アイデアを実装するのが早い、ゲームのチューニング(バランスとり)が上手いなど、開発者の得意分野がはっきりし、現在の芸者東京では分業体制が生まれている。
自分の企画より他人の企画が優れていることを認めて手伝うことは、素直にできない。
しかし、1年作って何も当たらなかった開発者は、自分が特定分野で劣っていることを認めて無条件降伏し、他の人のアイデアに乗って開発できるようになるのだという。
田中さんは「漫画でも原作者としてすごい人がいて、そういった役割分担が重要になってきている」と考えており、そういった特化した人と何か一緒にやりたいと思っていると語ってセッションを終えていた。
恐らく、今回のセッションに登壇したのも「一緒にやる仲間」を探すためだったのだろう。
以上がセッションで気になったところ。その後にUnityから「ハイパーカジュアル制作で役立つアセット」の紹介があったが、それはこちらでまとめられているのであえて書かない。
そして、田中さんにはセッション後に質問する機会があったので、その内容もここに書いておく。
![nama](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/iPhonegamer/20230701/20230701155331.jpg)
ソーシャルゲームの世界でも、家庭用ゲームの世界でも、競争が激しくなるほどにグラフィックや音などがリッチになり、肥大化して開発コストが大きくなってきた経緯があります。つまり、ハイパーカジュアルも1人で開発する時期が終わり、リッチ化する時期に来ているということでしょうか。
田中:
競争相手が多いので、目立つために見た目を良くしたり、そういったコストは増えていきますよね。そういった意味でリッチ化は当然ですし、芸者東京でも1本のハイパーカジュアルゲームを数人で作ります。
実装が速いヤツがいないと、アイデアを出しても先に出されてしまうかもしれないし。実際、考えていたものが何度も先に出てしまったこともあります。見た目でも目立つに越したことはないですよね。
![nama](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/iPhonegamer/20230701/20230701155331.jpg)
芸者東京のアプリを見ていると、他のハイパーカジュアルと比べてややキャラクター数が多かったり、音が出たりとリッチなイメージがあります。
そこも差別化なのでしょうか。
田中:
そういうところもあります。
![nama](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/iPhonegamer/20230701/20230701155331.jpg)
ハイパーカジュアル系ゲームを遊んでいると音がついているゲームと、音のないゲームがありますが、ハイパーカジュアルは極限のデータサイズ軽量化のために音をなくすイメージがありました。
芸者東京のゲームで音が鳴るのもリッチ化でしょうか?
![ss2](https://is1-ssl.mzstatic.com/image/thumb/Purple123/v4/1e/b0/58/1eb058e1-8cd7-912c-6c19-0033e12a3c3a/pr_source.png/576x768bb.png)
▲最近、Twitterでも話題になった『Woodturning 3D』も木を削る音がない。
田中:
これは流派のようなものですかね。
世界には人のいる場所でアプリを起動した瞬間に音量を下げること自体が面倒で、起動時に音量を下げる操作があるだけで「カジュアルじゃない」と考える人もいる。
そこに配慮するか、しないかだと思います。芸者東京では音を鳴らしますね。![nama](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/iPhonegamer/20230701/20230701155331.jpg)
最後の質問になります。
昨年でいうと、HABBYの『アーチャー伝説』がヘビー級ハイパーカジュアルとでもいえそうな内容でヒットしていました。
今後、ハイパーカジュアルもリッチ化し、コストを回収するためにそういったヘビー級路線に移動すると思いますか?芸者東京はそういった方面に挑戦するのでしょうか。
田中:
ハイパーカジュアルが市場を広げて、普及するなかでミッドコア向けのタイトルは増えていくのは自然だとおもいます。
しかし、ハイパーカジュアルがすべてその方向に行くと思っていません。ミッドコア向けも、今のライト向けもあり続けると思いますし、市場として存在すると思います。
芸者東京としては、いろいろとやっています。
いまちょうど、多様化して特化した人たちが協力して活躍する状況の中で、私たちもいろいろな人とやっていきたいと思っています。
ハイパーカジュアル当てたい、やりたいなぁと思っている方は、僕らの所にきてくれれば、確度は上がるところまできていると思うので、ぜひ気軽に門戸をたたいてください。
![nama](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/iPhonegamer/20230701/20230701155331.jpg)
ありがとうございました。
以上。
私が抜粋したり、私の印象を載せて書いていったが、後々Unityからセッションの様子が動画で公開されることになっているし、他メディアも取材に来ていたので、動画か他メディアのレポートを待つといいだろう。
また、この記事を見てハイパーカジュアルに興味を持ったなら、芸者東京のヒット作2本のリンクを用意したので、下記からぜひ試してほしい。
アプリリンク:
Dinosaur Rampage (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 無料)
Traffic Run! (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 無料)
Traffic Run! (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 無料)