「先輩、俺のカノジョを紹介させてください、凛子って言うんですけど……!」
学校の後輩に紹介された彼女は、ゲーム機の中にいた。10年前、『ラブプラス』というゲームがNintendo DSでリリースされた。それは、ゲーム機の中にいるカノジョと絆を深め、会話するゲームだった。音声認識機能を備えていて、後輩たちが「りんこー!」とゲーム機に語りかける様子は異様だった。
その様子を見て、私は「ヤバそうだから手を出さないでおこう」と心に誓ったのだが……10年の時を経て、スマホ版の『ラブプラスEVERY』が出たのでついに手を出してしまった。
で、今回はそんな『ラブプラスEVERY』が、一部で「カノジョがガチャから出てきて、強いカノジョでデッキを組まないといけなくて、カノジョが披露するからカードがたくさん必要で……」というような悪意のある書き方で紹介されているが、実態としては異なると感じたので、インプレッションという形でゲームを紹介しておく
男性向けの恋愛ゲームの多くは、相手と出会い、恋人として結ばれるまでを描く(女性向けだと、結婚がゴールだったりすることが多い)。
ところが、『ラブプラスEVERY』は意中の相手と付き合ってからの生活を描くことに重点を置いた作品である。
このゲームには、3人のヒロインがいる。
序盤ではヒロインとの出会いと内面、仲良くなるまでが描かれて、誰か1人と仲良くなって告白をOKすると、以降はカノジョと学校での甘酸っぱい会話や、デートなどが繰り返されるゲームとなる。
なお、残りのヒロインと出会うことはなくなるし、浮気はできない。
『ラブプラスEVERY』とは、一途な恋愛のゲームなのだ。
プレイヤーはスタミナを消費してデートスポットの下見(ゲーム内ではスクールと言われていて、うまく学校生活を過ごせたか判定するものだが、実質的には下見だと思う)を行い、LPと呼ばれるデート用のスタミナを使ってカノジョとデートする。
恋愛の谷や山を描くノベル系のゲームと異なり、そこにはドラマチックな展開はない。
学校で出会えば「一緒に帰る?」という選択肢出てきて、いつも何気ない会話が繰り返され、デートも地元を中心に同じように繰り返される。
しかし、何度も会話するとカノジョはプレイヤーの好みを学習し、髪型を変えたり、微妙に服装を変えたり、微妙に受け答えが変化したり……わずかな変化が生まれる。さて、概要を述べたところで「ガチャからカノジョは出てこない」ことを書いておく。
しかも、本作は課金ゲーといわれるが、私がプレイしている限り「課金がいらなすぎるゲーム」である。
まず、『ラブプラス EVERY』のガチャからはカノジョのブロマイドが出てくる。その効果は、主人公のあらゆる能力の決定である。
各カードには部活や趣味など、学校生活を送るうえで得意な行動が(効率+10%などの形で)決められている。
この効率はレアカードほど高いが、現在出ているスクールは最高レア度のカードがなくとも達成できるようになっている。
つまり、レア度の高いカードがないから行けないデート場所は存在しない。
さらに、カードには「名前を呼ぶ」とか「肩を抱く」とか、デート時にプレイヤーがとれる行動が設定されている。同じ行動を持つカードが複数あるので「レアカードがないと特定の行動ができない」ことは現在ないようだ。
ただし、レア度が高いカードで行動するほど彼女の親密度が上昇し、早くカノジョと仲良くなれる。
「カノジョは疲労するからたくさん強いカードが必要」というように言われているが、何度もデートして同じ行動をすると成功率が低くなる。
ただし、1回デートに使用しなければ成功率は回復するので、効率の良い連続デートを強要されなければ何も問題は起きない。
少なくとも現在はレア度★3のカードを上手に組み合わせれば何とかなるバランス。それでいてゲーム開始時に1枚、開始後に1枚最高レア度の★4確定ガチャが引けて、プレイを通じても大量に課金通貨が手に入る(急いでプレイしたのもあり、2日のプレイで60回はガチャを引けている)ので「ガチャが渋い」ってこともない。
カノジョへ送るプレゼントも、課金ではなくプレイを通じて購入するようになっている。
ガチャシステムが導入されることでショックを受ける旧作ファンの気持ちはわかるが、少なくとも開発側は「金でカノジョを買う」ゲームとして作っていないように見える。
ただ、その理由付けは上手くいっていなくて、ガチャから出るカノジョカードの存在自体が浮いて見えるのは残念だが。
とはいえ、課金の必要もなく、気前よくガチャも回させてくれる『ラブプラスEVERY』に関して、現在のところ私自身の評価は辛い。
クエスト(スクール)をこなすとデートスポットが増えて、新しいテキストが読めて……これは、2013年ごろに出てきたスタミナソシャゲ+シナリオの仕組みに毛が生えた程度のシステムに見えてしまっている。
ゲーム全体から『ラブプラス』と現代的な基本無料RPGの中間を行こうとして、コンセプトが統一されていないような粗も感じてしまう。
10年前、友人たちが熱狂していた理由がまったくわからない。このゲームは皆が熱狂していた『ラブプラス』の要素を受け継いでいるのだろうかと疑問に思いながら遊んでいる。
とはいえ、まれにカノジョの変化に「おっ」と思わされる時もあったので、長くプレイすることでカノジョの変化が増え、楽しくなってくる可能性もあると感じている。
いずれにせよ、このゲームは長い時間をかけてカノジョの変化を見るゲームで、少なくとも1週間~1ヵ月程度プレイして変化を見ないとレビューなどとても書けない代物だと感じている。
今回は「課金がひどいゲームでもなさそうだし、カノジョがガチャから出てくるわけでもない」、「システムは古い基本無料ゲームっぽく見えるが、化ける可能性もある」という印象と書いておく。
「課金がひどそう」と思いながら遠巻きに見ている方も、「ガチャからカノジョが出る」と思っている方も、そういった印象に惑わされず、とりあえず遊んでみたらいいと思う。
なお、カノジョはプレイヤーの名前を超えに出して(一般的な名前なら)ので、ぜひ本名でやってほしい。
ラブプラスって入力した名前をボイス付きで呼んでくれるのか。
— 寺島壽久/ゲームキャスト管理人 (@gamecast_blog) October 31, 2019
本名プレイしていたのでドキリとした。わりと破壊力ある pic.twitter.com/Fbx2B0e5JY
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