台湾からやってきた、どこか懐かしくも美しいファンタジーゲームの序章編。
それが『Heroine Anthem Zero』である。
“ファンタジーゲーム”とは聞きなれないジャンルだと思う。
実際、私も初めてゲームを紹介したときは“横スクロールのアクションRPG”と表現したが、ゲームを終えた今となっては「ファンタジー世界の表現が本作のメインである」と強く感じているから、あえてこの表現をした。
メイン部分の説明に入る前に、『Heroine Anthem Zero』の概要を説明していこう。
本作の基本システムは、横スクロールのアクションRPGである。
プレイヤーは辺境の平和を守る森の番人となり、友人と交流したり、人々と話して情報を集めて故郷の村に迫る異変を調査する。
操作としては左右移動とジャンプで移動し、剣を振り、お供の妖精による飛び道具、特殊攻撃ボタンなどを組み合わせて敵と戦うものとなっている。
ボタンはオプションでサイズ変更もでき、この手のゲームの中では操作性も良い方だろう。
マップはかなり広いのだが、キャラクターの移動が小気味よく、走っていることが楽しいのでストレスは感じない。
隠し通路や宝箱なども存在するし、ゲームが進めば新しい装備を買ったりもできる。
ゲームとしてはレトロなつくりで、要所では手ごわいボスが登場し、これらを倒すには何度か死んでパターンを覚える必要がある。
が、スマホ版はいつでも難易度を変更できるため、きつければ“Relux”モードで遊べばよい。
標準的なアクションRPGの仕組みを備えており、セーブポイントも頻繁に用意されており、ときおり即死トラップなどもあるが、セーブを忘れなければおおむね快適に遊べる。
これだけでも安いアクションRPG程度には楽しめる。が、「ファンタジー物語の表現」がこのゲームを特別なものとしている。
オープニングからして、ビジュアルと弦楽器とピアノをメインにしたノスタルジックがプレイヤーを一気に引き込むし、ゲームが始まってからも緻密に描きこまれた背景だけで世界観を感じられる。
物語中にイベントが発生すれば、何枚ものCGを利用して状況を描写する。
普通のゲームなら1イベントで1枚のCGを使う程度だが、このゲームでは2~3枚のCGが用意されているのが普通なのである。豪華すぎる。
物語としても短気な妖精モモリアと主人公たちのコミカルな会話は面白いし、展開も王道で(やや古いテンプレートにのっとっているのは気になるが)十分面白い。
また、日本人スタッフが関わっていることもあり、翻訳はスラングに至るまできっちり訳されている。
RPGとしての世界の表現もまたすごい。
村に行けばたくさんの人がいて、それぞれ異なる台詞で世界を案内してくれる。
しかも、ほとんどのモブキャラクターには個別の立ち絵が用意されているこだわりようだ。
▲かわいい女の子の立ち絵を見る(※男も立ち絵がある)ために遊ぶ、なんてプレイヤーもいるほどモブキャラもしっかりしている。
私はすべてのキャラクターに話しかけたくなってしまったし、それで世界観が頭に入ってきて楽しかった。
だが、本作最大の売りは上記の内容ではなく「歌と共に語られる物語」とされている。
実際、美しい絵にのせ、神秘的な歌と共に語るシーンは圧巻だ。
物語としても「大昔、厳かな催事で吟遊詩人の語りを聞いた人はこんな感じだったのかな」と思ってしまうほど引き込まれる。
うれしいことに、最大の見せ場では日本人が日本語で歌っているので、日本語を理解しているプレイヤーが最も楽しめるものになっていると思う。CG枚数は多いし、使いまわしもないし、音楽も各シーン専用に用意されているし、480円のゲームがこんなに豪華でいいのか。
わけが分からない。
難点があるとすれば、イベントシーンが長めで見ている時間が長いことなのだが……まあ、「ファンタジーを感じるゲーム」と思っておけば問題ないと思う。
『Heroine Anthem Zero』は全体の物語の1章ということで、物語自体はこれからというところで終わるのだが、ファンタジー大好き、世界観ゲー大好きな私はかなり満足できた。
物語が途中なので評価は6とするけども、最終章が良ければこれも上げることだろう。
ネットで検索すると先行リリースされたSteam版の悪評が出てくるが、iOS版に関して言うなら、価格に対して安いゲームと断言できる。
また、調べてみると初期バージョンは即死トラップが多くて難易度が現在より高く、ゲームは序章(短く遊べば6時間程度、主人公も成長してきたところで終わる)で終わるのに、それが明記されていなかったのが悪評の理由のようだ。
尻切れトンボ感は否めないが、それ以外の部分に関しては改善され、難易度も抑えめになっているので安心して欲しい。
尻切れトンボ感は否めないが、それ以外の部分に関しては改善され、難易度も抑えめになっているので安心して欲しい。
次に各ハードの違いだが、価格で言えばiOS版が一番安いが、難易度は通常と簡単の2段階のみ。
ゲーム機版はハードモードが追加されている。
また、SteamとPS4版はお色気規制がない(SwitchとiOSではお色気イベントの露出が低い)。これらを勘案して、お好みのハードでファンタジーを味わってほしい。
概要:
独自神話を持つ世界を表現したアクションRPG。アクションは普通程度だが、世界観目的で遊ぶなら素晴らしい
評価:6(面白い)
おすすめポイント
ノスタルジックな音楽
コミカルな妖精とのやり取り
吟遊詩人の語り
豊富なイベントCG
気になるポイント
会話の内容は良いがときどきスキップしたくなるテンポ
CGモードが欲しかった
物語は序章でしかない
アプリDL:
Heroine Anthem Zero (itunes 480円 iPhone/iPad対応 / Steam)
開発:Winking Skywalker Entertainment Limited.(台湾)
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし
ライター:ゲームキャスト トシ
課金:なし
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: