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作者を憎むほどストレスが貯まる。しかし面白くて止められないインフレSTGゲーム『塔をかける少女』レビュー

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ほんと、作者を憎むほどストレスが貯まるのに、ゲームをやめられない。生まれて初めてそんな経験をした。
『塔をかける少女』は、死ぬほどストレスがたまるが、ゲームが進んだときの気持ちよさが格別なインフレゲームである。
本作のゲーム画面はシューティングのように見えるが、敵を倒してレベルアップしきっていないと絶対に先に進めない。そんな理不尽によるストレスを抱えている……のだが、その奥に面白さを秘めた素晴らしいゲームだ。

本作は、特殊な能力を手に入れた少女と、ニャーバルという猫が塔を駆け上がる様子を描いた作品だ。
ステージクリア型のゲームで、スタミナなどは一切ない。
無料の代わりに、プレイのたびにランダムに広告が挟まれるほか、広告動画を見て一時的にパワーアップする要素搭載されている。
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ゲームシステムとしては、画面の左右が足場になっていて、主人公が左右の壁を行き来して戦う縦スクロールのシューティングとなっている。
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ステージが始まると少女はまっすぐ上に走り続け、画面をタッチすると反対側の壁に向かって弧を描きながら移動する。
このとき、進路はまったく制御できない。決まったコースを移動するのみである。
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ただし、ジャンプ中に画面をタッチすると主人公が弾を撃ち、そのときだけは空中で停止が可能だ。
弾を使い切る(もしくは画面から指を離すと)と少女はまた動き出すので、永遠に止まってはいられないが、この停止を使って敵弾を避けるのは重要なテクニックになる。
なお、一度着地すると弾は全回復する。
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そうして何度も左右を行ったり来たりしながら敵を撃ち、ボスを倒せばステージクリアとなる。
以上が基本ルールだが、これはとてもよくできている。

敵は容赦なく足場に向けて弾を撃ってくるからジャンプせずにいられない。
しかし、ジャンプ中は起動を変えられない上に少女の当たり判定は見た目通り(つまり弾幕シューティングのようなすり抜けは厳しい)ので、適当にジャンプすると敵弾に当たってしまう。
また、少女を狙う弾を上手に誘導しないと、いとも簡単に「回避不可能な弾幕」ができてしまう。
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▲この状態でジャンプすると岩弾にぶつかってしまう。一方で丸型の弾が少女に当たる軌道で高速に迫っており、ジャンプしないと死ぬ。つまりこのスクショは詰み状態。詰みを作らないように動かなければいけない。

つまり、画面に存在する弾を見るだけでなく、敵弾のパターンを考えて弾を撃つ前から有利な位置に移動するパズル的な思考が必要となる。これは戦術シューティングゲームと呼ぶべき面白さで、オリジナリティが高く、かつスマホの操作にも合致した素晴らしいシステムだ。

……なのだが、途中まで私は本作を「なんてクソゲーだ!」と思いながら遊んでいた。
冒頭に書いた通り本作の基本はインフレゲームで、シューティング部分は付属品だ。
敵弾を回避できようが、できなかろうが敵を倒してレベルを上げればショットの力が上がり、一瞬で敵を殲滅できる。逆にパワーが足りなければほぼ敵は倒せない。
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パズル的に敵弾を回避する高度なシステムは理解が難しく、単に理不尽で避けられないシューティングに見えてしまうのだ。
何度も倒れ、広告(5秒見ないと飛ばせない動画)が頻繁に出るストレスがありつつも、インフレゲームとして優れていて成長して敵を蹴散らす気持ちよさで遊んでしまう。
つまり、序盤は「理不尽シューティングにすごく楽しいインフレが付いている」状態でゲームが進む。操作できるのに操作の意味がない状況……普段からテクニック重視のゲームをプレイしているほどストレスがたまることだろう。
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▲火力が上がって敵を一掃する演出は本当に気持ちいい。

私自身、ストレスが貯まりすぎてゲームをやめたいのに、それでもインフレが爽快すぎて止められない状態に陥っていた。今考えると異常だが、間違いなくそうだった。
「(やめられない中毒状態にして)広告だけを見せるためのアプリかよ!」
よくよく考えれば、この中毒性の時点でインフレゲームとして優れているのだが、間違いなくストレスもたまっていた。

ところが、後半になって状況は劇的に変わった。
難易度が急激に上がって敵弾回避がさらに難しくなり、火力が足りていても敵弾を避けられないと先に進めなくなったのだ(敵を瞬殺するほど火力があれば別だが)。
インフレゲームだと思ってプレイしている人間をいともたやすく裏切るこの調整。だが、それが良かった。

ここで先ほど書いたパズル的思考が重要になり、敵弾を誘導して生き延びる意味が出てきて面白さが増えたのだ。弾数と敵の性質を計算し、テクニックを駆使して10秒生き延びれば1匹強敵を倒せて少しインフレする。30秒生きて2匹倒せばかなりインフレする。
そんな形で「テクニックで避けられるほどインフレを呼ぶ」感覚が出てきた。

「くそ、この無茶な弾幕、作者は何を考えているんだッ!」
「課金したのに広告が消えなくて辛い……」

そんな風に悪態をつきつつも、ひたすらプレイを続けてしまった。
おそらく、後半はゲーマーほどやめられないのではないだろうか。そして気づけば……。
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世界ランキング8位になっていた。
ギリギリのストレスを与えて解放する気持ちよさも見事ながら、やはりカジュアルなインフレゲームの奥にマニアックな戦術シューティングを練り込んだ面白さは秀逸。
インフレゲームが基盤にあることを前提に、「テクニックでできる限り生き延びて成長するゲーム」と捉えられると俄然面白くなる。
単なるインフレゲームに飽きた方、ある種スマホらしいゲームを探している方はぜひプレイしてみて欲しい。
……しかし、理性でそんなゲームだと思っていてもなんだか作者が憎い。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント

やめられない気持ちよさ
戦術シューティングと言うべきシステム
ストレスがたまるから敵を倒したとき爽快

気になるポイント
広告が多く、消せない
避けられない弾幕にストレスがたまる

アプリリンク:
塔をかける少女~かけあがり殲滅アクション (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発: Lucky Punch Stream(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:少女の強化アイテム購入、少女やお供キャラの強化(なくても遊べるが、120円のパックでライフを買うと快適かも)
公式ページ:http://luckypunchstream.jellybean.jp/
ライター:ゲームキャスト トシ

動画: