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これがスマホ最高の『ダークソウル』リスペクトゲームだ。『アニマス - アイア 番外編』あるいは、あるインディ開発者の勝利

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君のスマホに死と破壊をくれてやろう。
『アニマス - アイア 番外編』は、『ダークソウル』+『モンスターハンター』をコンセプトに作られたヘビー級のダークファンタジーアクションである。
モンスターハンターのように重量感たっぷりの武器を振るい、少しでもミスをしようものなら即死してしまうほど凶悪な敵と戦う体験はまさに「スマホの本格ダークソウル系」。
また、ランダムに能力が付加される装備アイテムを集めるトレハン要素もあり、繰り返しのプレイに報酬が与えられる仕組みもある。

『アニマス - アイア 番外編』は、その名の通り『IRE(アイア)』というゲームと同じ世界観を使ったスピンオフにあたる……のだが、精神的にはこの『アニマス』が『IRE』の本編ともいえる。
少し長くなるが、この経緯を説明するには、開発会社の10Birdsの説明をしなければならない。かつて、この会社のメンバーは8,000時間以上も『ダークソウル』をプレイしたうえで「スマホで『ダークソウル』+『モンスターハンター』なゲームを作りたい」という構想に至った。
そうして10Birdsは、2014年にハードなハック&スラッシュ『IRE』をリリースしたのだが、この発表時は「ダークソウル系をなぜ有料にしなかったのか」とゲーマーコミュニティからの反発もあった。
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▲IRE。

それに対して10Birdsは、「有料ゲームは作りたいが、スマホで有料ゲームを売るには知名度がなければいけない。投資家も無料ゲームにしか金を出さないから、今のわれわれの資金力も考えると無理だ。まずは基本無料で最大限のゲームを作りたい」と語り、インディーの厳しい財布事情でコアなゲーマーたちの希望も、10Birdsの夢も実現されずに終わった。

……かに見えたが、10Birdsは希望を捨てず、『IRE』の成功をステップにして当初の目標通りに有料の『ダークソウル』リスペクトゲーム『アニマス』をリリースしたのだ。本作の登場は、インディーゲーム開発会社の勝利ともいえる夢のリリースなのだ。
これが『アニマス - アイア 番外編』が精神的には本編と言える理由である。
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そして世に出た『アニムス』だが、スマホという端末に10Birdsの執念と容赦ない難易度をぶち込み、かつステージクリア型にして『ダークソウル』のバトルを切り出した作品になっていてかなり面白い。
画面こそバーチャルスティック移動、縦切りと横切り、防御と回避ボタンを駆使して戦うバトルアクションゲームで、スマホでもよく見る「本格アクション系」の作品に見える。
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しかし、ゲームから発せられる殺意はスマホのゲームとは思えないものがある。
武器を振り続ければスタミナが切れ、回避ボタンはわずかな距離しか移動せず無敵時間も少ない(もちろん、回避にもスタミナは必要だ)。
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攻撃をガードしようとしても、多くのボスキャラクターはガードの上から大ダメージを与えてくる。いや、ガードするとキャラクターが衝撃でしびれ、追加ダメージを受けることすらある。
多くのプレイヤーは、最初のステージのボスにすら苦戦し、何度も負けることだろう。
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▲巨大ボスの攻撃の多くは、ガードしても死につながるほどのダメージを受ける。

雑魚相手であってもパターンを見切らなければ大きなダメージを受けてしまうし、雑魚を倒してボスにたどり着いても、ボスの攻撃の前にプレイヤーが即死する。そんな光景が何度も、何度も繰り返される。
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私は最初のステージのボスですら倒すのに30分かかってしまった。
何度も攻撃することでチャージがたまって特殊技が使えるが、それすら敵の即死攻撃で簡単につぶされる。敵の攻撃を回避すると画面下のゲージが溜まり「強力な攻撃」コンボが使えるが、これも最後まで出すと反撃を受けるタイミングの方が多い。
回避の出始めにしか無敵時間がないこと、ガードできそうな攻撃とそうでない攻撃、さまざまなことを体で学んでようやくこのゲームのスタートラインに立てる。この感覚は、まさに『ダークソウル』系だ。
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▲あと、ポーションが毎ステージ補充されるのも覚えておくべし。

とはいえ、本作は厳しいばかりではない。多少の救済策も用意されている。
チェックポイントは豊富でボスの直前からやり直せることもそうだし、プレイのたびにキャラクターが経験値を得て、レベルアップすればスキルを覚えて多少の能力アップができることもある。
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次に、敵がドロップした装備を付け替え、強化してステージに臨むこともできる。ステージで死ぬと「今ここで出ると財貨がなくなる」と言われるが、アイテムは保持されるようだ。
ただし、その時点で最強の装備を整えてもうかつに攻撃を受ければ即死するのは書いておく。あくまでプレイヤーの腕を磨く前提の救済である。
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中盤からは双剣やランスなども登場し、ステージによって武器を選ぶような戦術も出てくる。シールドが大きいほど強力な攻撃を防げるため一部のボスは武器によってはすごく楽になるし、リーチの差も見極められれば強い。
このあたりからは単に腕を磨くだけでなく、敵に合わせて武器を選ぶ“1人モンスターハンター”感が出てくる。
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ステージは全部で23。さらに、トレジャーハント用のボスクエストやサブミッションも存在する。
ストーリーも日本語で楽しめるし、ダークな世界観は良いし、何より歯ごたえのあるゲームがスマホでできるのがうれしい。何度も倒れながら必死にプレイして、エンディングに到達したときは「これが買い切りゲームの醍醐味だ!」と、ガッツポーズをとってしまった。
いや、これは本当によくできている……って、3周しないと真エンディングにたどり着かない上に、2周目3周目は異なる敵配置と、異なる攻撃パターンが待っているだと……なんというボリューム!
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2周目はすごかった。中ボスは道中にガンガン出てくるし、敵の雑魚アーチャーは3本方向に同時に矢を撃つ(1周目は1本の矢を撃つだけ)し、難易度が桁違い。
しかし、恐ろしいことに2周目はもっと楽しかったのだ。というのも、2周目、3周目になるにつれてドロップするアイテムのレアリティが上がっていくからだ。
レアリティの高いアイテムは「毒攻撃耐性」とか「風属性攻撃を強化」とか、ランダムな特殊能力を持っている。つまり、アイテムの組み合わせで戦術の幅が大きく広がって新しい遊びが可能になる。
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毒属性武器で敵を小突いて逃げ回って勝利することもできたし、のけ反り値を伸ばしてごり押しもできた。ただ、同じ戦術が通用しない敵も多く、こんどは装備の組み合わせが悩ましくなってくる。
2周目からはトレジャーハンティングの楽しさがぐっと上がった。
当分、このゲームは終わりそうにない。
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「スマホならカジュアルでいい」
なんてよく言われるが、私はスマホでもできる限りハードなゲームがあるべきだと思っているし、PCでもスマホでもハードなゲームを遊びたいし、そう思ってブログを運営している。
そんな私にとって、『アニムス』は天からの贈り物と言えるハードコアゲームだった。しかも『ダークソウル』リスペクトでありつつも、武器の操作感は『モンスターハンター』をモチーフにしていたりして、オリジナリティもある。
iOSでハードなゲームを探しているなら、本作は絶対にプレイすべきである。

なお、課金要素として“コンテニュー”やゲーム内通貨の入手はあるが、少なくとも2周目までは課金は一切必要なかったし、唯一の課金アイテム“血のマント”もゲーム内で普通に買えてしまう。課金ゲーではないので安心してプレイしてほしい。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
何度も死んでは上達するプレイ
ダークな世界とグラフィック
ドロップ装備を使い分ける楽しさ

気になるポイント
難しい。難しさも面白さだが、難しい。
ダメージを受けたことが少しわかりづらい。

アプリDL:
アニマス - アイア 番外編 (itunes 960円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)


開発:10Birds(韓国)
レビュー時バージョン:1.0.3
課金:ゲーム内通貨、なくても十分遊べる

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: