基本無料ゲームとして制作されたのに、レビューサイトで「買い切りゲームのようだ」とレビューされまくったことを理由として、バランス調整して有料ゲームになってしまった珍しいゲームがある。
イギリスのファンタジー小説『Beast Quest』の世界を箱庭RPGとして作った……その名も『Beast Quest』だ。
累計1,400万部を超える原作の人気をベースに、本作は2015年のリリース後1カ月で約300万DLを記録し、Amazonで原作がランキング上位に飛び出すほどの盛り上がる。
そんな順調そうに見えたゲームが、なぜ急に有料化したのか。プレイしてみて理由はすぐにわかった。失敗しすぎて有料化するしかなかったのだ……。
本作のつくりは、本当に買い切りゲームと同じサイクルだ。
原作本の世界が再現され、その中を自由に歩いて回れる。その中でクエストをこなすとストーリーが進行してゆく。
マップ上には宝箱が隠されているだけでなく、雪ウサギを追ってみたり、薬草を採取してHPを回復するようなギミックも用意されている。
宝箱は壁に埋め込まれて隠されているものもあって、宝探し感覚で探せる。
▲ん、何か壁が光っているような……?
▲お宝だッ!
また、新しいマップに行けば必ず新しいギミックが登場するようになっており、ビーチでは釣りを楽しめるし、火山ではアーチェリーで虫などを射抜くギミックが登場する。
児童向けだから子供だましなのではなく、マップが変わるたびに新しい遊びを提供しようとしている姿勢が素晴らしい。
フィールド上には敵もうろついており、敵のテリトリーのそばに近づくとバトルが始まる。
バトルは攻撃ボタンで剣を振り、シールドボタンと回避ボタンで敵の攻撃を避ける簡易なアクションになっているが、意外にも白熱する。
まず、敵の攻撃が児童向けと思えないほど激しい。序盤こそ簡単だが、少し進むと仲間を呼んで攻撃してくるので手数がすごく多い。
その攻撃を縫うように攻撃するわけだが、大きな隙を見つけられるようになると攻撃ボタン長押しでチャージ攻撃を叩き込むこともできる。
チャージ攻撃は隙が大きく出すのにも時間がかかるが威力は絶大。しかも、3段階までチャージできて、最大になると十数倍のダメージを与えられる。そのため、単に防御して攻撃するだけでなく、集中して敵の隙を見つける面白さもある。
▲通常攻撃は30ダメージなのに、貯めて458ダメージ!
また、ボスバトルにもなると独自の攻撃を多用し、QTEなど(時間制限付きのコマンド入力)が頻繁に行われる。
イベントシーンもいい感じにできているし、アップデート後「有料ゲームのバランスにした」と言っているのは嘘ではなく、プレイ中に手に入る(ぽろぽろ落ちる)有料通貨のダイヤをお金に変換すればほぼ詰まらずに進んでいける。
いま、このゲームを『Beast Quest』好きな子供達がやったら喜ぶのは間違いない。
しかし、同時にこれを見て「確かに失敗するわけだ」と納得もできてしまった。リリース時、本作の課金要素はリソース制限にあった。
HP回復が時間でゆっくり回復する方式(現在はすぐ全快する金が手に入る)なので、数バトルすれば進める限界がきてしまう。するとダイヤでポーションを買わないといけない。
敵を倒してレベルアップしても能力の上限があがるだけで、実際に能力を上げるならゲーム内通貨のゴールドが必要で、たまりが遅いのでダイヤで買わないと間延びする。
ゲームが買い切りゲームの作りだったので、売れるソーシャルゲームのようにモチベーションを保つ仕掛けがなく、単に「戦闘が普通の3倍ぐらいあるRPG」になってしまっていた。
しかも、時間がたくさんある子供なら課金しないで遊べてしまう作りだ。
基本無料ゲームは少数の課金者から大金を拾う商売だが、子供向けでもあるためか1人から万を越える大金を払ってもらう作りにもなっていなかった。
結果、本作はダウンロード数に比べて驚くほど売れず(現在までで1,000万近いDLを獲得しているはずだが、まったく売り上がっていない)、当初予定していた6冊分のゲーム化のうち、半分の3冊で打ちきりとなってしまった。
で、こうなると海外のゲームは広告付き無料にして作り直したりする。日本向けのゲームと比べて維持コストが低いため、バランス調整で長く稼動させて稼ぐことが可能なのだ。
ところが、今度は児童向けゲームに広告を入れるわけにはいかない。すると、iOS版だけは有料に(Androidは有料にしても絶望的)……となったのだろう。
ただ、良く作るだけでは基本無料ゲームは売れない。売るものがなければいけない……それを久々に教えてくれるゲームだった。
なお、この話はこれで終わりではなくて、『Beast Quest』で失敗したMini Clipはその経験を活かしてか『War Wings』という基本無料の空戦ゲームを作って今戦えている。
結果として、Mini Clipには経験が残り、子供達には安心して快適に遊べる『Beast Quest』が残り、意外にWin-Winな終わり方になったのかもしれない。
評価:6(面白い)
おすすめポイント
絵本の世界を自由に歩ける
意外にバトルの歯ごたえがある
気になるポイント
ゲームの流れはやや単調
英語のみ
アプリDL:
Beast Quest (itunes 240円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:Mini Clip(スイス)
レビュー時バージョン:1.2.2
課金:ダイヤ(なしでOK)、隠しアイテムが見える機能、クエストアイテムが地図に表示される機能など(各240円)
ライター:ゲームキャスト トシ
気になるポイント
ゲームの流れはやや単調
英語のみ
アプリDL:
Beast Quest (itunes 240円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
開発:Mini Clip(スイス)
レビュー時バージョン:1.2.2
課金:ダイヤ(なしでOK)、隠しアイテムが見える機能、クエストアイテムが地図に表示される機能など(各240円)
ライター:ゲームキャスト トシ
動画: