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知られざるガチャの仕組み。『ファイアーエムブレムヒーローズ』の天井付きガチャは、特別ではない

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『ファイアーエムブレムヒーローズ(以下、FEH)』のガチャシステムには、最高レア度のキャラクターが出ずにはずれ続けると一定の回数で天井がやってきて、必ず★5が出る仕組みが搭載されている。
これについて、「もっとはやっても構わんよ」とTwitterで書いたところ思いのほか多くの反応があり、これに対して「さすが任天堂!」などという誤解を含む反応も多くて驚いた。
せっかくガチャの天井が注目されている機会でもあるし、別途ガチャの記事を書くつもりでコツコツと調べておいた裏話と合わせて「天井があるから任天堂だけが良心的」という誤解を解いておきたい。

そもそも、ガチャの「天井」は形は違えど、いくつものメーカーが実装していて珍しいものではない。
有名なところではBlizzardの『ハースストーン』も40回パックを開封(ガチャを引く)と必ず1枚はレジェンダリーカードが引ける仕組みだし、セガの『チェインクロニクル』なんかRが8回続いたら次はSR以上が出るし、そもそも出現するSSRをある程度限定できるので最上級に良心的と思う。
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▲チェインクロニクルでは、排出率が上がるだけでなく出現するキャラクターの範囲も絞れる

あまりに天井が高額すぎて確認は難しいが、課金しすぎると「持っていないカードが順番にすべて出る」というシステムもあるし、一定金額以上課金したプレイヤーにゲーム中に最も希少なカードが絶対に出る仕組みを仕込んだ話もある。ゲームキャストが調べる限り、かなり多くのゲームに天井かそれに類するシステムが(大昔から)仕組まれている。
そもそも、当たらなすぎるとプレイヤーが嫌な気持ちになるので、それを考慮してこの仕組みを入れているゲームは結構あるのだ。
つまり、FEHがガチャの天井を公言しているのは珍しいと言えるが、天井があるから特別に良心的とは言えない。

しかし、そうすると1つ腑に落ちないことがある。この話をすれば会社もゲームもイメージも上がっていいことしかないはずなのに、なぜ存在が明かされていないのか、ということだ。
これについてゲームキャストが業界関係者に聞き取りを行い、得た回答は下記の4つであった。

1.不当な価格で比べられる
ゲームの課金額はガチャの天井だけで決まるわけではないのに、単純に天井の価格で価値を比べられてしまう。そんな価格競争が起きれば、SNS対策で余計な手間がかかるかもしれないし、単純にデフレを招いてゲームの価格が不必要に安くなってしまうかもしれない。だから、実装しても公表しない。

わかりづらいと思うので、ここはとても単純化した(はずれの当たり率や、途中で当たることなどを考慮していない)例で説明しよう。
同時に出た同じジャンルのゲームAとBがあったとする。Aはガチャ天井6万円で、Bは天井が4万円だったとする。それだけを見るとゲームBが安く見えるから、Twitterや2chまとめ系サイトなどでは「似たジャンルのゲームでもBがオトク。さすがBの開発会社!」などと拡散してしまう。

しかし、ゲームの世界はそれほど単純ではない。
例えば、ゲーム内に限界突破システムがあるだけで話は変わってくる。限界突破とは、同じカードをあつめて強化するシステムである。Aが限界突破を実装していなければ、ゲームAは最悪でも6万円で最強キャラクターが手に入るゲームとなる。しかし、Bが1回限界突破できるゲームなら、2枚同じカードを手に入れてようやく最強になる。つまり、天井までの金額で計算すると8万円は必要になる。
本当はゲームBがお高いゲームなのに、天井金額が独り歩きするとゲームAの方が高く見えてしまうわけだ。

さらに言えば、Aが5枚でデッキを組むゲームなら必要金額は6万円×5枚=30万円、Bが3枚でデッキを組むゲームなら8万円×3枚=24万円となり、オトク度は逆転してしまう。
さらにさらに、ゲームAがシステム上1枚だけ強いカードがあれば問題ないゲームであれば上記の計算はまったく無意味になり、5枚デッキだが6万で1枚最強カードを引けばいいゲームAと、24万で3枚最強カードを用意するゲームBという構図になる。

通常排出率、キャラの扱い、ゲームバランス、対戦の有無…など、多くの条件を考慮しなければ正しい価格は出ない(そして、それはとても難しい)のに、単純に価格を比べられてしまうデメリットが大きい。
「○○のガチャは良心的!」「良く見たらひどかった!」などとゲーム内容よりガチャについて話題になり、肝心のゲームに目を向けてくれない可能性もある。

2.ゲームの仕組みが限られてしまう。
1番の派生。
価格が比べられることによって「安く見える」ゲームのメカニクスが採用され、ゲームの仕組みが限られてしまうかもしれない。それを恐れて実装はしても公表していない。

3.ガチャがエグくなりすぎる
天井が存在することで、そこまでガチャを引くプレイヤーが出てきて課金がえぐくなりすぎる。一見、良心的なシステムに見えるガチャの天井システムだが、当たりが見えていると人間は天井まで金を使ってしまう。
そのため、課金しすぎ防止に実装はしているが公表はしない。

4.他のメーカーが公開していないから
なんとなく。

以上。特に1番と3番の回答が多めであった。

ちなみに、実際FEHのガチャは優しかどうかでいうと、かなりエグイ気配を漂わせていると思っている。
FEHではガチャが最大5回1セットになっており、1セット終わってもガチャから★5が出ない場合に、★5の排出率が0.5%上昇する。
そして、★5が出たセット分のガチャが終了すると、上昇した★5排出率は通常に戻る。つまり、★5排出率が上がった状態になったら、★5が1回出ても1セット分が終わるまでは★5排出率が上昇した状態が続く。
ガチャの途中で★5がでようが、1セット分はお金を払いたくなる仕組みとなっている(ガチャを引くほど安くなるのもある)。

はずれ続ける限り確率は上昇し、120回以上★5が出ないとき、次のセットはすべて★5キャラクターが排出される。確率変動の大当たり。途中まで外れ続けると120回目指してまっしぐら。射幸心を最大限に煽る仕組みと言える。

さらに、ランダム成長が取り入れられており、同じキャラクターでも初期性能と最終性能が異なるように見え(まだ、検証が終わっていないので断言はしない)、能力リセットが簡単でなければ沼のようにヤバいガチャ…という可能性もある。

ただ、そもそもガチャから★5が出る確率は通常★5が3%、ピックアップ★5が3%で合わせて★5排出率が6%もあるし、最大課金時の効率で考えるとガチャ1回250円。ガチャ単体はソーシャルゲーム全体から見ると安めの価格設定(だと思う)ので、FEHのガチャは「射幸心をすごくあおる」が、高額ガチャとは断言できない。
これは、もっとゲームが進んでから明らかになっていくはずだ。

とりあえず、今回は「課金しすぎたプレイヤーを救済するシステムは、公言されていないことが多いが意外にある。FEHや任天堂だけのものではないし、天井があると射幸心も煽られる」ということを覚えて帰っていただきたい。
(ゲームキャストは、それでも天井があった方がいいと思っている)

そして、記事は本来か書きたかった「コンプガチャ時代の真実」に続く(当分先)。

アプリリンク:
チェインクロニクル(itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
ハースストーン (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
ファイアーエムブレム ヒーローズ (itunes 無料 iPhone/iPad対応/ GooglePlay)

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