ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君 (itunes 2800円 iPhone/iPad対応 / Google Play 2800円)
2006年に大ヒットを記録した名作RPG ドラゴンクエストVIII(以下、ドラクエ8)がついにスマホに登場した。
PS2の性能を使い切ったと言われるゲームが、iPhoneでプレイできる日が来るとは驚きだ。
自分はドラクエ8をPS2屈指のRPGだと信じていて、クリアするまでひたすらはまった記憶があるが、そんな自分の目から見てもなかなかの移植ぶり。
特に操作に関してはかなりの配慮があり、値段以上の価値を感じられる物になっている。
が、難点もあり「値段以上の価値があるが最高になりきれなかった」移植というのが結論だ。
それでは元となったPS2版のドラクエ8の魅力と共に、移植の詳細を説明していこう。
先ほども書いたが、鳥山明デザインのキャラクターと世界観を完全再現した広大な3Dワールドはとてもインパクトが大きかった。
キャラクターたちがダイナミックに動き、見た目は当時出ていた他のゲームと比較してもすばらしかった。
バトルは伝統的なターン性のコマンドバトルだが、【テンション】システムを導入で奥の深さをが増した。
これは1ターンかけてためを行い、最大3回までためることで魔法や攻撃の威力が大きく上がる仕組みだ。
3回(条件を満たすと最大4回)ためると最大の効率で攻撃できるが、ためている最中に状態異常になるとためが解除されてしまう。
なので、ボスを相手に状態異常を防ぎつつため続ける攻防が生まれ、バトルに奥深さを与えた。
また、ドラクエでは伝統的に職業ごとに決まった特技・魔法を覚えていたが、ドラクエ8ではスキルポイントを自由に割り振って特技を覚える成長システムを採用した。
バトルが奥深くなったため、プレイヤーが自由に特技を選択して戦術の組み立てを行う楽しさが増している。
アイテムを素材として投入して新たなアイテムを生み出す【錬金釜】で、新しいアイテムや強力な装備を手に入れるシステムも悪くなかった。
▲PS2版ではアイテムを合成してから完成まで時間がかかっていたが、スマホ版は合成したら即座にアイテムが完成するようになっている。
見た目・システム両方が刷新されてがっちりかみ合い、なおかつドラクエらしい味はそのまま。
全てがかみ合っていて、誰にでも勧められる面白いRPGだった。
では、移植はどうだろうか?
まずは見た目。
これは基本的に画面が小さくなっても見た目はPS2版に見劣りはしない。鳥山明のキャラクターや広大なフィールドが完全に再現されている。
それどころか解像度が上がった分綺麗になったようにも思える。
縦画面になると視界が狭くなるが、その分カメラが引いたアングルになっていて視界の窮屈さあまり感じない。
ただし、その影響で狭い部屋の中やダンジョンなどカメラを引くことができない場面では視界が狭く、やや窮屈。
また、バトル時はモンスターの表示が小さくなり、元のゲームと比べて迫力がかなり劣る。
大きいモンスターならともかく、スライムなんて本当に豆粒で悲しい。
ただし、iPadでプレイすると見た目の迫力はかなり補われる。
操作面は先ほど書いた通り快適で、縦画面のまま片手でほとんどの操作が行えるようになっている。
8方向キーで行う移動は操作しやすく、画面下部にあるカメラマークを左右にスライドして視点移動を行う操作もそこそこ快適だ。
▲止まっている時は画面のほとんどが視点移動に使える。
が、そのままでは移動に左手、視点移動に右手、と片手プレイはできない。それを解決するのが自動で前に進むオートラン機能。
視点移動をするだけで移動する方向も変わるので、慣れると片手でかなりスムーズに動ける。
また、オートラン中は画面ほぼ全体が視点移動になるので、視点移動操作自体も楽になる。
物を調べたり、人に話しかけるときはときは対象に近づいてアクションアイコンをタッチだ。
キャラクター下に表示される円に入って立ち止まるだけで会話がスタートし、移動を開始すると会話を切り上げられるお手軽なシステムも用意されている。
扉を開ける時は体をぶつけるだけで開くし、頻繁に利用するルーラはショートカットで使用できるなど、片手で操作するということに対してちゃんと配慮されている。
ドラクエ8といえば広すぎるダンジョンが少し不評だったが、今回はマップが常に表示されるようになっており、少し探索がしやすくなった。
操作だけでなく、いろいろな面でも改善を感じる。
戦闘の操作もあまり不満はない。
ちょっと気になるところとしてはターゲットを直接タッチして指定できないぐらいだ。
事前に設定した【作戦】を元に半オートで進めることができ、ある程度余裕が出てくれば自分で細かく指示しなくても、問題なくすすめることができる。
▲モンスターをタッチして攻撃対象を決めたかった…。
ゲームのバランスは多少調整されているようだが、体感ではほぼそのままだ。少なくとも、自分は難易度の調整はほぼ行われていないよう感じる。
スキル取得時の攻撃力上昇幅が下がっていたりするが、キャラクターの能力上昇も変わっているようでトータルして元のゲームと比べても難易度が大きくいじられている感じはしない。
スマホのRPGなのに、ボスに苦戦して死ぬドラクエ8バランスそのままだし、演出もほぼそのままを楽しめる。
操作快適、グラフィックもだいたい素晴らしい、そしてゲーム内容は名作を引き継いでいる。
なので基本的には面白いゲームだ。
ロード時間に関してもiPhone5ではPS2版より気持ち長い程度で、気になるほどではなかった。
が、先ほど完璧ではないと書いたとおり、気になる点がある。
一番大きいのは家庭用そのままの敵の攻撃演出が、スマホゲームの戦闘としてみると少し長く感じてしまうことだ。
その上、スマホ版ではダメージを受けると文字で「9の ダメージを うけた!」と表示されてからキャラクターのHPが減る演出が追加されている。
この演出のせいで家庭用よりもダメージ演出に時間がかかってテンポが悪い。
※現在はアップデートで戦闘のテンポも改善されている。
▲この後、さらにHPゲージが出てきて減る演出が…。
その上、家庭用版同様にレベル上げ作業も必要になるので戦闘回数も多い。
同じスクウェアエニックスの FINAL FANTASY V なども含め、最近のスマホRPGでは倍速機能が用意されているのが普通なのでストレスを感じてしまう。
また、セーブについてもやや不親切に感じる。
セーブには協会での【記録】と、ダンジョンを除くフィールド上でいつでも行える【中断】、戦闘や場面の切りかわりでおこなわれる自動セーブの3種類がある。
ただし、【オートセーブ】は成功したり失敗したり(検証してみたところ、中断を行った後にオートセーブの条件を満たしてもオートセーブされないことがあるようだ)不安定なのでできるだけ【記録】と【中断】を使用した方が良い。
※現在はアップデートで気軽に中断でき、オートセーブも強化されている。
不意に中断してしまうことがある携帯向けでセーブが不安定なのに、長いダンジョンでは【中断】できない。
特に後半のダンジョンはかなり長く、1時間以上かかることも珍しくないため、時間を作らないと怖くてプレイできない。
ただ、全体をまとめてもドラクエ8の面白さを台無しにするほどではない。
元々面白いRPGだし、2800円で超大作RPG(スマホのRPGを同じ値段分買って合計してもプレイ時間などで及ばないだろう)が遊べると考えれば十分おすすめできる。
動作については iPhone5、iPad 4、iPad mini Retina 以上の推奨機種ならばスムーズにプレイできる(非推奨機種では落ちるという報告があるので、プレイしない方が無難だろう)。
それにしても、それ以上に専用ゲーム機への移植をすっとばしてドラクエがスマホにくる展開には驚いた。
携帯ゲーム機の勢いがない海外では珍しくないのだが、今回の移植は日本のゲームメーカーが「一番ゲームが売れると市場はスマホ」と決断をしたことを意味する。
時代の変化を感じて、嬉しいような寂しいような、ちょっと奇妙な気持ちになる。
最終評価:3.0(面白い)
おすすめポイント
片手で楽しめる操作性の追求
面白い家庭用大作ゲームがスマホで楽しめる。
気になるポイント
スマホゲームとして見るとバトルのテンポが悪い(現在は改善されている)
狭い場所では視界が窮屈
キャラが小さく元のゲームに比べて迫力が薄い
セーブが気軽にできない。オートセーブ条件が不明確(現在はアップデートで気軽にセーブ可能)
課金について
なし
(バージョン1.0.1、GCドラゴン)
アプリリンク:
ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君 (itunes 2800円 iPhone/iPad対応 / Google Play 2800円)
動画: