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『デーモントライヴ』ディレクターインタビュー、世界初を2度作った男。ドリキャスから12年越しの挑戦

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ついにリリースされた『デーモントライヴ』。
MOBAというジャンルに挑戦し、スマホゲームとしては数少ない大規模なプロモーションが行われているこのゲーム。
いったいどんなスタッフが、どんな思いで、どのように作ったのか?
どんなゲームを目指しているのか?
今回は前回のインプレッションに続いて、ディレクターの山田理一郎氏のお話しを皆さんにお届けする。 dt
ーよろしくお願いします。まず、山田さんの経歴を教えていただけるでしょうか?


山:ディレクターの山田理一郎です。
昔はドリームキャストの『ハンドレッドソード』をつくっていて、ネットワークとか対戦部分とか、バトル部分を。
『パンツァードラグーンオルタ』のメインシステムとサブシナリオ。
その後『サカつく』関連を色々やりつつ、『龍が如くOF THE END』ではメインプランナー、『サカつく6』『サカつく7』、『サムライ&ドラゴンズ』のプロデューサー。
『デーモントライヴ』ではディレクターを担当しています。
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▲パンツァードラグーンオルタ。スコアアタックで帝国市民証をもらったのがゲーキャストシの数少ない自慢。

ー有名タイトルばかりですね!では、『デーモントライヴ』を作成するきっかけを教えて下さい。

山:『Kingdom Conquest』というスマホでのヒットタイトルがセガにあって、その次をつくろうという話があって、多くの企画があり、その中に『デーモントライヴ』がありました。
企画のお題はすでに決まっていて、『League of Legends』のようなDota系(MOBA系の別名)が海外で人気で、すごく面白い。
それをスマホに持ち込もうというところでした。
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▲記録的なヒットを飛ばした『Kingdom Conquest』


ー単なる移植ではなくて、世界で初めてスマホ向けに落とし込んだDpta系をつくっているということですね。製作に当たって意識したことなどはありますか?

山:なにが落とさないといけない要素なのか、なにが残さないといけない要素なのかという苦労がありました。
Dotaという面白いゲームの要素を取り込みつつ、スマホのゲームとして成立させなくてはいけない。
Dotaと言っても日本のプレイヤーはやったことがない人も多いし、初めてだと訳がわからないと思うので(システムの)整理も大変でした。


ーご自身が担当された『ハンドレッドソード』でも同じように当時流行っていたRTSというジャンルを、初めて家庭用オンライン対戦RTSとして持ち込むという作業をされていますよね?両タイトルの過程はどのようになっていたのでしょうか。

山:当時は『Age of Empires』が流行っていて、それを家庭用に持ち込む、という流れですね。
メガドライブの『ヘルツォークツヴァイ』がすごい、とか色々なゲームをプレイして研究して、リアルタイム性がある戦略バトルというくくりで、新しいものを生み出す作業でした。

結局、RTSを初めてプレイする人のためのわかりやすさや家庭用ゲームの都合を考えて対戦やストラテジーに寄った、バトルシステムになり、キャラクターという要素とシェル(特殊能力を付加する装備)と言う2つの要素に集約されて落ち着きました。
でも、最初の『ハンドレッドソード』の企画はカードデッキを組むもので、イメージとしては『三国志大戦』っぽいゲームになるはずでした。
だから、上手く消化しきれなかったという心残りはあったんですね。
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▲ハンドレッドソード、家庭用初のオンライン対戦RTSだった

今回、MOBAではビルドアップ(ゲーム中にキャラクターを成長させる戦略)が重要で。
でも、スマホのゲームなので対戦の時間は短くしなければならない。
ゲームシステムに落とすときにどうやっていくか考えたとき、(MOBAにある装備やスキル成長の要素を)デーモンに集約することになりました。

途中ではいろいろなアイデアが出ていて、ミニオン(雑魚キャラクター)がデーモンになるようにしようとか、沢山のネタがあったんです。
しかし、Dotaでは操作するキャラクターは1人、それだは大事なポイントだな、と。
デーモンにいつ変身するか、その能力をどう使っていくか、ユーザーの判断で駆け引きをしてもらう形になりました。
うまく、わかりやすく、奥深さは失われないようになったと思います。


ー『ハンドレッドソード』に始まって、デッキ構築系ゲームをつくろうとしてできなかったところに、なぜか『デーモントライヴ』でデーモンという形でデッキ構築のようなゲームを作っている。前回は家庭用初のRTS、今回は初のスマホ専用Dota系ゲームで。奇妙な巡り合わせですね。


山:自分はサカつく7ぐらいしか『同じ物の続編』をやったことがないんですよ。
ドリキャスという「新しいものを作れ」という時代にセガに入り、『ハンドレッドソード』から始まって、また今回幸運にも新しいものを作れている。そういうめぐり合わせなんですかね。

『ハンドレッドソード』で「どうやって家庭用にすればいいんだ」と苦しんで、今回もスマホ向けにDotaを再構築するところで苦しんでいる。

ー2001年に出たハンドレッドソードから12年越しのリベンジですね。

山:でも、経験を積んだ分、前よりは上手にできていると思います。


ーエージェントとデーモンのバランスはどうなっているのでしょうか?また、スキルにはどんなものがありますか?

山:エージェントの装備は育成パートと密接に結びついていて上手に使えばなんとか戦ったりできます。
でも、デーモンには勝てない。

特殊なスキルとか用意しているんですが(サービス初期は)あまりトリッキーなものを入れないようにしてはいます。


ー対戦ゲームということでバランスが気になるところですが、やはり課金したら勝てるようなものだとやはり興ざめな部分が…。

山:対戦ゲームというのは最終的には動かしてみないと分からない部分はあると思うのですけど、ゆらぎの要素は意識しました。
みんなでワイワイ遊んで楽しいというような。

お金を払ったから勝ててしまうようでは対戦ゲームとして面白くなくなってしまいますが、お金払ったプレイヤーが強くなってもらえないとお金を払っていただくゲームとしては困ってしまうわけです。
課金とプレイのバランスは意識しています。
お金を払っているプレイヤーの方が有利にはなりますが、駆け引きによって勝敗は変化します。特定のデーモンを強化したからと言って確実に勝てるようにはなっていない。
そこに(勝利の)確実性はない。


ーなるほど。金=力のゲームが多い中で、ゲーマーとしてはどれぐらい腕が発揮できるのか、楽しみになりますね。
続いて、世界観なのですが…秘密結社と悪魔というのはかなり異色かと思いますが、どうしてそのような世界観になったのでしょうか?


山:オリジナルの世界だからということが大きいですね。
みんなの知っている世界観だと埋もれてしまうかなと。
他のMOBAと同じようにファンタジーの世界観を使うこともできますが、新しいIPで、世界を狙うからには新しい世界観で勝負して展開したい。
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▲アジト…という響きも最近聞かないので逆に新鮮。


ー設定も世界を意識してのことでしょうか?

山:
日本的なものをつくりつつ、絵やキャラクターも海外の方がプレイしたいと思ってみたいと思わせるものになっていると思っています。
日本的なものでも、やりようによっては世界でも受け入れられると思っているので、海外向けにつくるというよりも日本的なもので考えました。

今回は『ジェットセットラジオ』でアートディレクターを務めた植田と組んでいるのですが、世界観やいろいろなものをどんどん出してくる。
要求も高いので大変ですけど(笑)すごい。
世界で通用するひとってのはあんな人だとおもいましたね。
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▲独特の世界観で世界的にヒットを飛ばしたJSR

ーなるほど、世界観も楽しみの1つですね。しかし、ゲーム内容も世界観もかなり珍しい…言ってしまうと手堅いネタで戦っているゲームが多いAppStore内で、冒険のようにも思えます。なぜ、このような冒険…とまた言ってしまいますが…をしたのでしょうか?

山:一言で言えば、セガだからです。
セガを振り返るとカードソーシャルに対して強みがない。
キャラIPがない、カードソーシャルの仕組みがあって、安価に運用できているわけでもない。

セガの強みを考えたとき、豪華なゲームを作ることができる強みを活かしてネイティブアプリで天下を取れるものを作りたい。
世界を見たときに勝負ができるものを作りたい、ということです。
同じ仕組みで、IPだけを入れ替えて商売するというのもセガがやるべき事ではない。


ーデーモントライヴだけでなく、今後のアプリに関してもワクワクするお言葉ですね。
続いてゲーム内容というよりも姿勢という感じになりますが…。私自身、ソーシャルゲームの運営というものを非常に不安に思っていて、ゲームとしてプレイヤーを馬鹿にしている運営が多いと思うんですね。最初から真面目にプレイしていたらバカを見ました、みたいな。運営の言う事を信じていたら裏切られてしまうとか。そのあたりはどのように考えてらっしゃるでしょうか。


山:まず、最初に来てくれるユーザーはすごく大事だと思っています。
スマホのゲームタイプのアプリで最初に来てくれるユーザーってすごい熱を持ってきてくれている。
彼らが遊んで全然ダメだと思うと、ダメ。
まずいことがあってはいけないし、少なくとも彼らがやって「面白い、このゲームは」と思うものじゃないけないので、それは意識してますし、ずっとやっていくつもりです。

運営についてはソーシャルゲームとはまた違う運営をすると思います。『サムライ&ドラゴンズ』もそうですけど、デーモントライヴはオンラインゲームだと思ってて、ソーシャルゲームではないと思っています。
このバトルシステムがあれば、ずっと遊んでられるよねというものを用意したので、長く遊んでもらいたいですね。
搾り取るというのではなく、新しいデーモン使いたいからとか、ポジティブにお金を使いたくなるような健全なかたちで長い目で見ていきたいです。
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▲デーモンは全て3Dモデルの非カード形式。


ーなるほど。面白いゲームに、納得してお金を払うというのが理想だと思っているので、プレイが楽しみです。
長くなってしまいましたが、最後にユーザーに向かって一言お願いします。


このゲームは『スマホで協力対戦バトル』という今までにないスタイルのゲームなので、新しい体験とか面白さがあると思うんですね。
友達と3人でチームを組んで一緒に対戦すれば、絶対盛り上がる。
それを楽しんでほしいな、と思います。
また、このゲームはオンラインゲームなので、どんどんブラッシュアップしていくことが出来ます。
ユーザーの皆さんにたくさん遊んで楽しんで頂き、ご意見を参考にしながら一緒に成長していきたいと思っています

あとは、ゲームはカルチャーだと思っているので、カルチャーになるものを作っていきたいな、と。

ーありがとうございました。

お話しを通じ、山田氏のゲームに対する熱い情熱が伝わってきた。
スマートフォンでリッチなゲームに挑戦するセガが、オリジナルタイトルを手がけ続けたディレクターを起用し、オリジナルな世界観で勝負するオンラインゲーム『デーモントライヴ』。

ぜひ、皆さん手にとってみてほしい。

アプリリンク:
デーモントライヴ(itunes) 基本無料

動画: