ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

レビュー:拡散性ミリオンアーサー 期待はずれの話題作

ma02
タイトル 拡散性ミリオンアーサー
ジャンル ソーシャルカードバトルゲーム
価格 無料
アプリ内購入 特別通貨購入(ゲーム内入手不可)
日本語対応 あり
販売元:スクエア・エニックス | Version:1.0.0 | GameCenter:なし | 対応機種:iPhone / iPod touch | レビュアー:トシ
評価:2.0(良くはない)
イラスト・音楽の質は高め
一応ソーシャルカードバトルの基本は抑えている
  スパムレビューを推奨している
  無課金だと展開が異常に遅い
核となるデッキ構築やルールを始め、全体的に説明不足
インターフェースなどの細部が練られていない
ma01
「ソーシャルカードゲームもスクエア・エニックスがつくればカードRPGになる!」
「ライトノベルを読んでいるような気分でゲームできる」

ケイオスリングス』のプロデューサー安藤武博氏がニコニコ動画の生放送で気を吐き(※今作のプロデューサーは岩野弘明氏)、オープニング動画付き、作曲は怒首領蜂第復活iPhoneモードの作曲で有名なヒャダイン氏を採用、シナリオに人気ライトノベル「とある魔術の禁書目録」の鎌池和馬氏、イラストや声優にも有名どころを採用して話題になったソーシャルゲーム。
それが『拡散性ミリオンアーサー』(以下ミリオンアーサー)だ。

まず、このブログでソーシャルカードバトルゲーム系(以下カードバトル系)の紹介をするのは初めてなので、簡単なシステムを説明してから入りたい。

ma05
カードバトル系とは、ミッションをこなし、カードを集め、強いデッキを組んで戦うゲームの総称。
ミッションは時間と共に回復する行動力ポイントを使って進行し、プレイヤーの腕前に関わらず、行動ポイントさえ使ってボタンを押せば誰でもだいたい同じ結果が出る。

ma06
ほとんどのゲームは「合成」と呼ばれる要素があり、カードを合成するとより強くなるため、カード集めと合成のサイクルを繰り返す。

総じてプレイヤーのスキルはゲームの結果に大きな影響を及ぼさず、肝心のカードに付いても強いカードは基本的にお金を払ってランダムに取得する(ガチャ)システムで、ゲーム内での地位は課金しているかのほうが重要になることが多いため「ポチポチゲー」となど揶揄されることもある。

が、何一つ迷わずにゲームに入り込める解説・ヘルプ機能や、友達や他のプレイヤーと同時にプレイしている連帯感を演出する要素があり、ゲームをプレイしない層でもすんなり入り込むことができる。
また、空いた時間でゲームっぽいものをプレイして、コレクション欲を満たすようになっているため、慣れたゲーマーでなければ満足できる面白さもある。

ハードなゲーマーに訴えるものはあまりないが、そうでない単なる携帯ユーザーや、ゲームをしたいがプレイする時間が取れずにゲームから離れていた層を直撃して一大ブームを築いている。
『ドリランド』『ドラゴンコレクション』(以下ドラコレ)『アイドルマスターシンデレラガールズ』(以下モゲマス)などがこれにあたり、ゲームをプレイしなくても1つぐらいは聞いたことがあるのではないだろうか。
ゲームとして薄いと馬鹿にしがちだが、大ヒットゲームは「親切で」「短時間でストレスなくできて」「それでも何かやり遂げた感じになるプレイ感覚」が特に徹底されており、面白く感じなくてもなんとなく続けてしまう不思議な魅力がある。

今回紹介するミリオンアーサーもそんなカードバトル系の1つだが、「不親切で」「短時間でできるけど」「何かやり遂げたと感じる区切りまでが長い」ソーシャルカードバトルゲームである。

ma08
ゲームのシステムについてはチュートリアルを終えた段階で謎だらけ。
デッキを組むゲームなのに、デッキの組み方がよくわからなくて貧弱なヘルプを参照したり、そもそもデッキのためのカード、何が強いのか、何を強化すればいいのかもよくわからない。
多くのソーシャルカードゲームは、強いカードだけイラストが豪華なのでそれでなんとなくわかるのだが、ミリオンアーサーはレア以外でも素晴らしいカードイラストで良いカードと悪いカードの区別がつかないという皮肉な結果に。

ドラコレであれば、特定の属性があって「このキャラは強いから強化しましょう」「同じ属性で固めましょう」までわかるのでそこを見習っていただきたいところ。
説明不足になるほど目新しいシステムを搭載しているわけではないので、なぜこうなったのかわからない。

また、この手のゲームは繰り返しになるので「いかに繰り返しを苦にしないか」というのが重要で、かのモバゲー渾身のスマホアプリ「ニンジャロワイヤル」でも、ユーザーの不評を受けて豪華な演出から簡素なものへ切り替えられたということがそれを証明している。
さて、ミリオンアーサーを見てみると戦闘や合体、連続ガチャ時の長い演出が飛ばせなかったり、スキップ具合がイマイチ。
すごいひどいわけではないが、大ヒットを狙う大作ソーシャルというには配慮が行き届いていない印象だ。


特に連続ガチャは1枚ずつ引く演出を10回繰り返すので、動画にあるドリランドの連続ガチャ(一瞬で10枚引ける)を見習って短縮していただきたいところ。

ma04
インターネットに接続する回数が異常に多く、安定した高速wifi環境であればストレスもないが、3Gでは快適でないことも多い。
なぜメニューに戻るだけでアクセスしなければならないのか。
300MBもダウンロードしてイラスト等の素材を持っているはずなのに、快適ではない。

最後に「何かやり遂げた」と感じるまでが長い。
ミッションを進めてもあまり良いことはないので、このゲームではシナリオを読むというのが「何かやり遂げた」に該当するだろう。
が、シナリオを読むにはレベルアップしなければならず、そのレベルアップまでの道のりはかなり長い。
9LVあたりから急激に長くなり、ゆっくりプレイしていると1日1レベルが限界だ。
その先についてはどんどん遅くなり、無料プレイだとレベルが上がる頃には前のシナリオまで忘れている。

ma09

普通のソーシャルゲームだとカードを少し入手して「やった」感があるが、このゲームはストーリーに凝っているので、これが進まないと「ストーリーが進まない!」というストレスを生む。
関ヶ原演義のようにミッションをこなす=ストーリー進行であれば、他のゲームと同じようにストレスなく進行したと思うのだが…。
1プレイごとにストーリーが進むのであれば長所となったと思うが、現在の形式では厳しいと思われる。

ma07
オープニングアニメや綺麗なイラストは掴みとしてはいいが、実際にプレイしていてそれが恩恵のあるシーンはまずない。
ストーリーを用意したことは注目できるが、上で書いたようにシステム的には失敗しているように思え、キャラの組み合わせて用意される特典、サブストーリーで美麗イラストのキャラに焦点を当てて掘り下げるかとおもいきや、キャラが2回ぐらい喋って終わりと短すぎて意味不明。
それとも、最近の若い人は「この短いセリフから萌えを感じるぜ!」とかなるのだろうか…。
個人的に「おっ」と思わされたのは効果音や音楽があることぐらいで、それ以外は既存のカードバトル系どころか、二線級のカードバトル系。

更にいうと、「まったく同じコピー品」と馬鹿にされつつも、最近ではモゲマスがキャラクターに愛着がわく描写に、関ヶ原演技はストーリーを、老舗ドラゴンコレクションも様々な新システムを導入に力を入れて「第1.5世代ソーシャルカードバトルゲーム」と言ってもよい進化をしてきている。
このなかで見ると、ミリオンアーサーは明らかに1.5世代のなりそこねに属する。

ma01
最後にもう1つ、このゲームの印象を大きく悪くした点を書いておく。
スクリーンショットにある通り、レビュー欄に招待コードを書くことを推奨しているのだ。
確かに、この方法だとレビューが増えるし評価も上がるが、レビュー自体は中身のないスパム。
AppStore全体で見るとレビュー数や星の数がアプリの質の指標に使いづらくなってしまうし、関係ないアプリの解説文にまで割り込んでくるような問題も発生している。
これをやるかどうかはモラルの問題だが、スクエア・エニックスほどの大企業がこれをやってしまうとは思わなかった。

ということで、スクエア・エニックスのイメージにも、今後出てくるはずのゲームの質にも大きな不信を抱かせたこのゲーム。

「スマゲ(スマートフォンゲーム)を舐めるなよ!」

という意味の言葉を安藤氏がよく口にするが、スマートフォンゲームである以前にソーシャルゲームとして質が高い方ではない…というかはっきりとB級。
どこにでもあるカードバトル系の演出が豪華になった、という意味では楽しめるが、現時点では声優やイラストレーターのファンにしか勧められない。

「ソシャゲ(ソーシャルゲーム)を舐めるなよ!」

と言ってやりたい。

拡散性ミリオンアーサーの詳細・DLはこちら(itunes)

ちょこっと攻略
さんざんこき下ろしたあとだが、このゲームの一番のネックであるバトルと「デッキ編成」について説明しておく。
これがわかればまあ、楽しめるとは思うので。

ma13
まず、バトル時のHPはデッキに入っているカードのHPの合計、ATKは攻撃力の合計となる。
プレイヤーと敵、交互に攻撃を行い、先にHPが0になった方が敗北。
プレイヤーの攻撃時は3枚のカードがデッキからランダムに出現し、出現したカードの攻撃力で敵にダメージを与える。
この時、一定確率でカードの「スキル」が発動する可能性がある。
なお、カードは最大12枚まで、合計コストがBC以内になるように抑えるのがデッキを作成するときの制限となる。

ma12
では、どんなカードを成長させ、デッキに加えるべきなのか。
答えは明快で、1枚のコストが高くても攻撃力重視で3枚以上の編成にするべき。
コストが低いキャラクターは手軽にHPを増やせる反面、攻撃時に出てきてしまうと相手に与えるダメージが下がってしまうので、「HPをちょっと増やして攻撃力を大幅に下げる」結果になる。
とすると、攻撃力もHPも高いカードでなければ戦力にはならない。
コストが高くても能力が高いカードだけを使おう。
慣れるまで特技は気にしなくていいが、基本的に攻撃力アップ系が使える。

ma11
まず、この画面で「デッキセット中」となっているものが実際のバトル時に使用されるカード。
バトル時の仕様カードは合計がBC以内となり、かつHPとATKの合計が高くなるように自動で選ばれる。
この時、コストが低くて攻撃力がそこそこのキャラクターが選択されてしまうので、一見強そうに見えるけれども、実はベストではないデッキ構成になっていることが多い。

ma10
では、どうするかといえば画面上のカードをタップして錠前マークにすることで自分の使いたいカードをデッキに強制的に加えることができる。
「デッキセット中」となっているカードはCPUが自動で選んだものであり、錠前マークがプレイヤーが選択したものなので勘違いしないように注意。
コストほぼ丁度になるように複数枚のカードに錠前マークをつけると、他のカードが黒くなる。
これは「残りコストではそのカードは選べない」という印。
自分が選択していないカードが全部黒くなるようにデッキを組もう。
少しでもBCとデッキに入れるカード枠が余っていると勝手にCPUがコストの低いカードをデッキに加えてしまう。
レベルアップでBCを上昇させた時なども勝手にCPUがコストの低いカードを入れ手デッキを弱体化させるので注意。


ということで、「強いカードはコストが高くても能力が高いもの」「自動で選ぶと大変なことになるので必ずデッキに入れるカードは指定する」ということを守っておけば大体OK。
ゲームを楽しんで欲しい。