Final Fantasy III (itunes 1,600円)
FINAL FANTASY III for iPad (itunes 1,700円 iPad専用)
開発:SQUARE ENIX
評価:3.5(かなり面白い)
個性豊かなジョブ
練られたファンタジーの世界観
FF3ファンに配慮したリメイク
楽しめる戦闘
セーブポイントの無さが辛いことも…。
人気RPGシリーズ、ファイナルファンタジーの3作目のリメイク作品。
元となったDS版のグラフィックを強化し、タッチパネルに最適化してある。
ファミコン版の雰囲気を残す形でリメイクしており、現代的にしてある部分もあるがその魂は間違いなくファミコン版。
今のRPGプレイヤーも、旧作プレイヤーも楽しめるように配慮が施されている。
オリジナルFF3
ファイナルファンタジー(以降FF)IIIは1990年にファミコンで発売されたRPG。
当時としては非常に広大なマップ、世界観、クリアしないでも進める隠しダンジョンなど当時のファミコンRPGとしては新機軸の嵐。
派手な召喚魔法やクリスタルの設定など今日のFFシリーズに通じるものを作り、FFシリーズ初のミリオンセラーとなった記念碑的作品。
と同時に癖の強いRPGでもあった。
いまや伝説とも言えるラストダンジョンはクリアまで3時間程度要するにも関わらずセーブポイント一切なしで全滅したら最初からやり直し。
当時はシビアなゲームが多かったが、その中でもFF3ラストダンジョンは群を抜いていた。
それでもその魅力的な世界とやり甲斐のあるゲームプレイは多くのプレイヤーを魅了し、ストーリー性やキャラクター性が薄いオールドスタイルFFの中でも最高作に挙げる声も多い。
移植されないFF3
時が経ちハードの性能が上がり、FFシリーズは携帯機へ次々と移植されていった。
FF1~2がワンダースワンへ、FF4~6がゲームボーイアドバンスへと移植されていく中、なぜかFF3だけは移植もリメイクもなかった。
最初に移植の話が出たのは2000年頃、ワンダースワンカラーへFF1、2、3が移植されるとして報じられたもの。
実際公式HP(web archive)で画面写真まで出ていたにもかかわらず、ハードウェアの終焉によって無期限の延期となった。
その後、ゲームボーイアドバンスへの移植が発表されたものの、ついに移植されることはなかった。
その原因はFF3に関わった天才プログラマー、ナージャ・ジベリのプログラムが複雑すぎて解析できなかったためとも言われているし、開発中にハードの寿命が尽きてしまったからとも言われているが、実際のところは複合的な要因と思われる。
結果的にFF3は15年以上が経過した2006年のDSへのリメイクが初の移植となり、2011年iPhone用にDS版を修正して2度目の移植がなされることとなった。
FF3らしさを追求したDSリメイク
iPhone版はDS版の最適化移植なので、まずはファミコン版とDS版を比較したい(ただし、都合により画面写真はiPhone版を使用)。
「世界観」「ゲームシステム」「ゲームバランス」を現代風に多少のアレンジを加えつつ「FF3らしさ」をきっちり移植しているということ。
見た目は3Dだが魂はファミコンのFF3。
ここでそれぞれに解説していこう。
「世界観」
FF3は様々な作品の影響を受けつつも、独自のファンタジー世界を構築していた。
個性的なダンジョンのグラフィックや、演出で当時の少年達をファンタジー世界へ誘った。
ある時は小人になって戦い、ある時は不思議な神殿へ。
DS版でも全体のストーリーの流れは完全に再現されており、当時を懐かしめるのは間違いない。
現代でもファンタジー好きなら十分ハマれる完成度。
世界を再現するグラフィックについても、キャラクターはドット絵を懐かしめるディフォルメキャラだし、ダンジョンやマップのグラフィックも新規にきっちり書き起こされ、小人になったときのマップなど場所によってはより世界観を感じられる箇所も。
また、元々主人公達のキャラクター性が薄かったFF3だが、今回は現代風に直されて多少しゃべる。
と言っても、現代のFFのようにあからさまなラブストーリーやドラマはなく、あくまで味付け程度。
ここを許容できるかどうかはプレイヤー次第だが、個人的にはそこまで違和感は感じなかった。
「ゲームシステム」
FF3の特徴は『ジョブシステム』と呼ばれる職業(ジョブ)システム。
これは戦士・黒魔道士・モンクなど豊富な『ジョブ』から、状況に応じてプレイヤーの好みでキャラクターの『ジョブ』を選んで変更できるというもの。
選んだ『ジョブ』に応じてキャラクターの能力や装備できるものはガラリと変わる。
DS版では豊富な『ジョブ』はそのままに、どのジョブを使ってもクリアまで使い続けられるようにバランス調整が図られ、おなじ『ジョブ』を使い続けると『熟練度』がたまってパワーアップするシステムになっている。
ファミコン版は様々な職業がありつつも、『モンク』の上位版は『からてか』で、最終的に前衛は『にんじゃ』が最強、後衛は『けんじゃ』と決まっていたのに対し、プレイヤーの好みの『ジョブ』と戦術で戦い抜けるようになった点は改良と言えるだろう。
また、ファミコン版ではCPという値を消費して変更していたものが、DS版は自由に変更可能。
その代わりに職業変更後は数回戦闘を行うまで能力が低めになるように変更された。
これはファミコン版はゲーム後半にCPがあまり、転職がほぼ無制限になった点を修正した結果と思われる。
他の面ではほぼ変りなく、オーソドックスなRPGスタイルと言える。
「ゲームバランス」
FF3が発売された頃はゲームの黎明期でもあり、「ちゃんとやれば楽にクリアできる」タイプのゲームは一般的ではなかった。
それは大ヒットしたFF3であっても同様で、思えばFF3は多くの理不尽に溢れていた。
・『逃げる』コマンドを使うと逃げ腰になって敵から受けるダメージが4倍になって全滅
・突如敵の『バックアタック』で全滅
・ダンジョンが長すぎてクリア前にTVを家族が使い始める
これらは形を変え、ややマイルドになって引き継がれている。逃げるときのダメージは2倍になったが、相変わらず厳しい。
バックアタックも前ほどではないが、防御軽視パーティーだと全滅の危険性がある。
全体に長すぎたダンジョンは短くなったが、悪名高きラストダンジョンはなんとそのまま。
戦闘バランスは大幅に変わったが、手を抜けば全滅。
それどころか一部の戦闘では理不尽な死もあり得る(セーブできるので問題ないが、ガルーダ線でかみなりを2連続されると間違い無く全滅である)。
パーティー構成を考える楽しさがあるゲームになっている。
全体として、昨今のRPGよりは厳しめで昔のFF3よりは遊びやすい。
しかし、「昔のFF3が怖かった」ところを残しており、FF3らしさは残っている。
神は細部に宿る
FF3と言えば飛空艇でかけずり回る広大なマップ。
これは3Dになってもきっちり移植されている…どころか、ファミコン版をそっくりそのまま3D化している。
ファミコンの攻略本の地図とマップを見比べても差が殆ど無いぐらいだ。
ダンジョン、街、隠し通路など、一部は変わっているものの当時のまま。
隠しアイテムのある場所が光るので、昔より見つけやすいのが違いか。
他にも海賊のアジトで大砲を撃てたり、殆どにおいて細かいところまでオリジナルの要素を再現している。
ゲームバランスも大きく変えているはずなのに極力オリジナルを残し、多少でも旧作を覚えていれば必ず懐かしくなる場所がある。
この再現度は「愛」を感じた。
このリメイクには間違いなくFF3愛が注ぎこまれている。
DS版リメイクは1つの良い形
上記までの事柄に加え、完全オリジナル要素がDS版にはある。
モンスター図鑑、モグネット(NPCからの手紙が見られる)、wi-fiを使用した手紙のやり取り、隠しダンジョンとボス、そして目玉がDSとは思えない美麗ムービー。
ムービー以外はFF3らしさを損ねない範囲でのやり込み要素追加程度。
これらはゲームを変えるほどではなく、控えめなのもFF3愛が注がれた結果と言えるだろう。
全体として、旧作ファンでも初体験でも遊べる落とし所を見つけた非常によく出来たリメイク作品だと思う。
ゲーム的に改善しつつもFF3っぽさを出そうとする工夫が垣間見られ、1つのリメイクとして良いものになっている。
ジョブのバランスについては(オリジナルは完全に上下関係があったし、今作は召喚魔法が弱め)賛否両論あるだろうが、そこまで完ぺきを求めるのであればWiiのバーチャルコンソールで遊ぶという選択もある。
iPhone版はグラフィックを強化
先にも書いた通りiPhone版はDS版の移植である。
基本的にはDS版と変わらないのだが大きな変更点がある。
それは「グラフィックの強化」。
DSからiPhoneへ移植するに当たって、背景はすべて描き直し。
背景オブジェクトの細かさは誰の目にも明らかなほどだ。
また、DSの荒い画面からiPhoneの高精細な画面に移ったため、全体に線がなめらかになり綺麗に見えるようになっており、特に文字の綺麗さは素晴らしい。
演出面もDSの縦主体から、1画面を使用したものへ変更。
グラフィックに関しては一足飛びに綺麗になったと言っていい。
ゲーム的にもダンジョンの表示範囲が広くなり、多少プレイしやすくなっている。
操作も最適化だが…
もちろん、操作もiPhoneに最適化。
ケイオスリングスでも使われた、「画面のどこにでも出る仮想スティック」を導入し、通常操作はiPhoneのRPGではかなり快適な方。
メッセージもこの通り。
さらに、画面のどこでもいいからタップすると自動的にコマンド決定(たたかう、を画面連打だけで行える)する、標的を直接タップして目標を選択するなどファイナルファンタジー1・2で面倒だった戦闘操作を大幅改善。
同じファイナルファンタジーでも、3は操作性が圧倒的に1・2よりよくなっている。
ただし、DS版と比べてしまうと細かい場所に入る操作がしづらいし、十字キーではないのでどうしても動かしやすさは劣る。
それ以外でもiPhone版特有の難点が2つ。
1つはDS版は調べられる怪しい箇所が少し光っていたのが、iPhoneではそうではなくなったこと。
わざわざピンチイン操作で画面を拡大しないとわからない。
せっかくiPhoneの画面で見られる範囲が広くなったのに、拡大して画面を狭く使うなんて面倒だし、無駄の極み。
大きなことではないのだが、長くプレイしていると気になる。
もう1つは「調べる」操作。
調べられるもののそばに来ると「!」マークが出現し、画面から手を話してタップすることで調べられるのだが、それが曲者。
タップのつもりが指が滑ってまた移動してしまったり(指を滑らせると自動的に仮想スティックが出現して移動になってしまう)、移動中に調べようとしたりしてしまう。
ここはさすがに専用のボタンを用意して欲しかった。
iPhoneのRPGとしての評価
ここまでオリジナルとDS、そしてiPhone版を比べてみたが、iPhoneであれば比べるのはケイオスリングスだろうか。
1つのRPGとしてみると使い回しもなく、ボリュームも非常に大きく、ゲームとしても楽しめる。
はっきり言って現時点ではケイオスリングスを超えていると言える。
そう考えると1800円という価格は納得出来る。
iPhoneで日本語でプレイできるきっちりした和風のRPGが欲しいならケイオスリングスかこれしかない。
そう言い切れるだけの完成度が確かにある。
FF3の昔のファンにも訴えるだけの作りも持っている。
オリジナルファンから新規層まで広くオススメできるRPGだ。
トシの評価
その他にはムービーが削除された、敵図鑑が見やすくなった、モグネットでのwi-fiを使用した要素がなくなったなどがあるが、結論としては現時点では1800円の価値は十分ある。
私はFF5、3、4、2の順に好きな旧作派だが、その目から見てもFF3として受け入れられる。
そして1800円のRPGとしても「かなり面白い」の評価を与えられるでき。
どうしてもタッチパネルの操作性が嫌なら中古で安く売っているDSのFFを。
原作に手を加えてあるのが許せなければWiiのバーチャルコンソールをどうぞ。
3Gまでが対応機種だが、3Gでもプレイできるぐらいには動いてくれる。
もちろん、3GS以降はサクサク。
(Ver1.0.0 トシ)
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