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スマホで最高の実績を持つ開発者を独占したアップル。Apple Arcadeラインナップの異常な豪華さを説明する

 
Appleが新たに発表した定額ゲームプレイサービス“Apple Arcade”。その発表が、あまりにすごかったので、今回は記事でそれを説明したい。
そもそも「あのサービスは本気なのか?」と考える方もいるだろう。それに関しては「間違いなく本気だろう」と言っておく。
一説によれば、ソニーはPS Plusの会員サービスだけで4,340億円を2018年で売り上げたという。
mobile indexによれば、『Fate/Grandorder』の2018年の売上が1,050億円。
最も稼ぐソーシャルゲーム以上の売上を期待できる分野がゲームの月額サービス。だからこそ、GoogleもMicrosoftも必死になってそこに向かっているわけだ。
Appleだってそこに向かっていくし、その本気度はゲームのラインナップから完全に伝わってきた。
さてApple Arcadeは本来は有料で、課金なしのゲームを、定額で好きに楽しめるサービスである。
スマホの有料ゲームで有名なゲームと言えば……そう『Monumen Valley』だ。
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▲世界で一番売れた有料ゲームだと思う。

アップルは、その開発会社であるustwoを抱き込んだ。ustwoの新作『Repair』は、Apple Arcade独占だから、サービスに加入しないと遊べない。
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完璧な独占だが、1つ困った問題がある。ゲーム業界は人材の流動が激しい。
『Monument Valley』のリード・デザイナーを務めたケン・ウォングさんは、すでにustwoから独立してしまっている。
しかも彼が独立後にリリースした『Florence』は、GDCなどで“2018年最優秀スマホゲーム”として表彰され、2018年No1ゲームともいえる。
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こんなとき、本気の会社がやることは1つ。
両方をApple Arcadeに引っ張っぱればいい。アップルはケン・ウォングさんを支援し、独占の新作を開発させている。
スマホ有料ゲームNo1の開発会社と、2018年のNo1ゲーム制作者、どちらもApple Arcadeがそろえた。

しかし、アップルの本気はこれで終わらない。
これまでゲーム機やPCで発売してからスマホにやってくるゲームが多かったが、Apple Arcadeには未発売の新作もずらりと並んだ。
ディストピアな機械都市を冒険する『Beyond a Steel Sky』。ここまでくればPS3並。
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『風ノ旅ビト』にアートで参加し、『ABUZ』を開発したMATT NAVAさん最新作『THE PATHLESS』。


スマホのゼルダこと、『オーシャンホーン2』。これらの新作は、見るだけで心が躍る。
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続いて、アップルはかつてのエースたちを呼び戻して見せた。
『Canabalt』でヒットを飛ばした(ランゲームの始祖だ!)BEKAH SALTSMANの新作ロードトリップゲーム『Overland』。
これはゲーム機・PC向けのゲームだったはずが、これをApple Arcadeにも持ってきた。
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アップルの方針と合わずに「次回はゲーム機にする」と離脱を宣言したSimogoの新作、『SAYONARA WILD HEARTS』の映像が流れたときは、死ぬほど驚いた。
Apple Arcadeにこれが出るなら、Simogoは何かの交渉を受けたのだろう。
もはや、「ゲームに消極的」と言われたジョブズ時代のアップルはない。


独占の新作ゲームに関しても、一線級のインディー開発者による作品が次々発表され、強烈なインパクトがあった。
Where Cards Fall』は、芸術性が評価される『Alto's Adventure』のSnowmanがアートを監修し、人気パズル『Where is my Water?』のディレクターの所属会社で制作する夢のプロジェクトである。

PCとiOS向けの作品だったが、PCの文字が消えてMacに。
Apple Arcadeの独占ゲームとなっていた。アップルは囲い込みに動いていたのだ。
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溶岩の床に触れないように進むアクロバティックアクション『Hot Lava』。
これは、あの『Don't Starve』のKlei Entertainment開発。
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『GNOG』のKO_OP Mode最新作『Winding Worlds』。
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過去からアップル独占ゲームを作ってきた開発会社もきっちりわきを固める。
粒子パズル『FROST』の作者の新作、『Lifelike』の美しさはため息が出るし……。
iOS向けARゲームを作りまくっていたDirective Gamesの『Enter The Construct』は世界観で他を圧倒していた。
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また、看板作品への投資にも余念がない。
アップルはNetflixがオリジナル番組を作るように、独自にゲームを用意したようだ。
『テラバトル』生みの親の坂口さんによるジオラマを背景とした『FANTASIAN』、『Sim City』のウィル・ライトさんの新作など、数十人の開発者が新作を開発中だという。
プラットフォーム競争により、本来ありえなかった大作などが開発される……これぞ競争によるゲーマーへの恩恵だ。
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興奮するまま書いたので長くなってしまったが、ここらでApple Arcadeに来るゲームをまとめてみようか。

・ゲーム機などで出る話題の新作が古くなる前にやってくる
・かつてヒットを飛ばしたが、スマホを去った開発者の作品もやってくる
・一線級のインディー開発者に加え、近年で最も評価の高いスマホゲームの開発元を2つ独占
・坂口さん、ウィル・ライトさんなど、伝説級クリエイターを支援して新作を用意している

アップルは今回、これらが発表できるほどの準備をしたわけだ。
有料ゲームに関して、これ以上のラインナップを用意するのは難しいだろう。
今から秋のサービス開始が楽しみでしかない。