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映像から脳内に物語を組み上げる”見る小説”ゲーム『Gone Home』レビュー。

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そこにあるのは、人がいなくなった家だけ。
ゲーム『Gone Home』の世界には、脱出ゲームのようなパズルも、激しいバトルもない。
しかし、家に残された人の痕跡から断片的な情報を得て、脳内で整理すると小説のようにストーリーが組み上がる。その体験にもだえるのだ。
小説を読むようにゲームが進む……そう、「映像作品から読み解くアドベンチャー」とでも言うべきか。
この面白さは、普段から小説を読む方にぜひ体験してもらいたい。ゲーム好きが、本好きにオススメするとっておきの1本である。

場所は米国、ときは1995年6月7日午前1時15分。1年ぶりに海外から戻ったケイティを待っていたのは、明かりが消え、家族も消えた家だった。
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「お姉ちゃんと会えなくてごめん。でも無理なの。どうか私を捜したりしないで」
玄関にはそんなメモが貼り付けられ、扉には鍵がかかっている。
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いったい、ここで何が起きたのだろうか。
『Gone Home』は、ケイティを操作して家の中を歩き回り、その真相を知る作品だ。
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本作の操作は、非常にシンプル。
バーチャルスティックで歩き、画面右をスワイプして周囲を見回し、気になるものがあれば視線を合わせれば簡単に手に取って調べられる。
敵も出てこないし、時間制限も謎かけもないから、普段ゲームを遊ばない方でも楽しめるはずだ。
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▲家の中にはトロフィーから旅行のお土産まで、様々なものが置いてあり、自由に手にとってみられる。

敵も時間制限も、謎もない。ついでに言うなら、物語は興味深かったが私には合わなかった。
しかし、私はこのゲームを始めるとすぐ夢中になり、2時間ほどで一気にクリアしてしてしまったのだ。
本作の面白さは「ストーリーの良さ」とか、「駆け引きの面白さ」とかではない。ただ、ストーリーを追って組み立てることが楽しかった。

家の中ではケイティのほかは登場せず、ただ歩き回って探索する作業が続く。
このため、『Gone Home』は“ウォーキングシミュレーター”なんて呼ばれることもあるが、歩くだけでめちゃくちゃ楽しい。
本作の家は、1995年ごろのアメリカの家をリアルに再現しているそうで、そこにまず面白みがある。古い映画の中に登場していた家が見て回れるのだ!
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▲トイレまで再現。生活感あふれる描写が普段遊ぶゲームの無機質な家とは正反対だ。

そうして興味深く家を見ていると、次は情報の洪水がプレイヤーを待っている。
家のいたるところに、ケイティの家族の情報がちりばめられており、プレイヤーはそれを見ることで断片的に家族の情報を手にしていくのだ。
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▲家族の肖像画。仲が良さそうな家族だが…?

父と母の職業とそのやり取り、好きな音楽、興味を持っている小説、住民カード……父の仕事部屋を探すと、真面目な小説の下にセクシーな本があったりもする。
それらすべてが見知らぬ家族の人物像へつながっていき、断片的な情報がまとまることで家族関係が判明し、そこから家族の問題、地域とのかかわりなどが見える。
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未知の家族に思いをはせ、情報を組み立てる作業は見知らぬ人の家に忍び込んで、家主の人となりを想像するような……自分にしてみればやや背徳的でゾクゾクする体験であった。
さらに、そこから物語の核心に触れていく流れは実にスムーズ。
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▲家の見取り図と現在地も出る。

家族が読んでいた雑誌や日記などは、すべてプレイヤーに探しやすい位置に配置されており、それもう順路のない博物館を見ているように情報が手に入る。
ゲームと小説の中間とでも言おうか。
ストレスなく物語に入り込み、自分の意思で物語の断片を探し、脳内で小説のように組みあげる体験はとても興味深いし、すごく楽しかった。
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さらに、2時間ゲームが終わった後はオーディオコメンタリー付きで、作者の解説を聞きながら家をめぐることもでき、「豪華な限定映画DVD」のようにも楽しめる。
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ネットを見ると、本作の舞台が1995年の米国でライオットガールというムーブメントを知っていた方が楽しめるとか、そういった記事を多く見る。
ただ、私としては「小説とゲームの中間」な体験だけで価値があるし、現代の日本はちょうどこのゲームで描かれている物語について考える時期にもあるし、今なら背景を知らずとも物語自体を楽しめる方も多いと思う。
ゲーム機版は2,700円で高いと言われていたが、スマホ版は600円。レンタルで映画を観たと思って、ぜひ体験してほしい。

概要:
無人の家を調べ、消えた家族に起きたことを知るアドベンチャー。ただし、迷わず一気に遊ぶ物語作品

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
1995年代の米国の家を再現している映像
断片的な情報から家族の状況が組み立てられていく物語体験

気になるポイント
物語内容は人を選びそう(私はテーマは好きだが合わなかった。それ以上に楽しかったが)
情報を与える都合で、わずかにゲームっぽい構造もある

アプリDL:
Gone Home (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / Steam)

開発:The Fullbright Company(US)
販売:Annapurna Interactive(US)

HP:https://gonehome.game/
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: