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グリー、不具合を隠蔽してスマホゲームのガチャを不正プログラムで制御していたことを認める。ただし「問い合わせは沈静化傾向にある」と根本的な対処の発表はなし

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グリー傘下の Wright Flyer Studios(現WFS) のスマホRPG『アナザーエデン 時空を超える猫』にて、一定条件化でガチャの排出キャラクターを変更する不正プログラムが組み込まれていた事件に進展があった。
これまで、グリー・WFS側は「プレイヤーの公平性のため」善意で行った過失としていたが、株主総会において「不具合対策」であったことを認め、ガチャ不具合について認識があったととれる発言を行った。
これにより、今回の事件は「問題がありながらプレイヤーに伝えなかった」グリーと系列会社のコンプライアンスの問題にまで発展したと言える。

この事件は、10連ガチャの“運命の出会い”から★5、もしくは★5に進化するキャラクターのみが排出される時間帯があり、それが大きく騒がれてグリー(WFS)は公式に不具合を認めたところに始まる。
この時点では、単に「サーバー負荷の影響で★3、★4が上限のキャラクターが抽選対象データから欠損したため★5が上限のキャラクターのみ登場する」とされた。

しかし、この発表を受けてプレイヤーは騒然となった。この説明では、今回のガチャ結果のすべてが説明できなかったからだ。
“運命の出会い”では★5キャラクターが1体確定するが、本来★5キャラクターがいるべき位置に★5キャラがいないことが説明できていなかったのだ。さらに、★5キャラの排出が最大3枚までに押さえられていて、この現象も不可解であった。
そうなってようやく『アナザーエデン』運営は追加調査の実施を発表する。
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そして、9月19日、ガチャに特定条件で再抽選を行うプログラムが入っていたことが発表される。
『アナザーエデン』ではガチャのプログラムを根本的に修正することになり、それまではガチャを回すためのアイテム“クロノスの石”購入、ガチャ運用を停止(システム的に引く初期のガチャなど除く)した。
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以下、報告より引用。

1.発生期間:2017年5月12日〜現在
夢見の10連において、同じ仲間(同一ID)が4体以上含まれる場合に再抽選される

2. 発生期間:2017年6月29日〜現在
夢見の10連において、★5クラスの仲間が4体以上含まれる場合に再抽選される


1.
「★3クラスの仲間が極端に重複して排出される」とのお問い合わせにより、確率としては発生する可能性はあるものの、お客様の不利益に繋がると危惧し、暫定措置として「同じ仲間(同一ID)が4体以上含まれる場合に再抽選が行われる」プログラムを実装した

2.
「★5クラスの仲間が大量に排出される」とのお問い合わせにより、調査をおこなった結果、原因特定に至らなかったが、ゲーム内の公平性を維持することを目的に、暫定措置として「★5クラスの仲間が4体以上含まれる場合に再抽選が行われる」プログラムを実装した
1、2ともに善意から行った修正であるように書いているが、1はともかく、2は確実にプレイヤーに不利になる隠し要素であり、基本的には公開されていなければならない。
そもそも、プレイヤーにとって良い要素であれば1、2ともに公開しておいて良かったはずだ。と、ここまでが以前の記事の内容。

その後、グリーの株主総会で驚くべき発言があった。
2のプログラムについて「不具合対策として」実装されていたことを明言したのだ。
荒木取締役「調査により不公平感の低減や不具合対策を目的として、最も価値の高いアイテムが10個中4個以上排出されると再抽選がかかるプログラムがあることが判明」
プレイヤー向けには「公平性を維持する」と言いつつ、実態は「不具合対策」であった。さらに『アナザーエデン』を好きだったから黙っていたプレイヤーを尻目に、この問題に関して「沈静化傾向にある」と見解を示してしまう。
この発言から、以下の問題点が浮き彫りになる。

1.プレイヤーに不都合な「不具合対策」という事実を知らせなかった。
株主に対しては「不具合対策」と伝えたが、プレイヤーに対しては正確な情報を伝えず、印象が良いように操作しようとしていた。
本来、グリー、 Wright Flyer Studios(WFS)は不具合対策と明示的に伝えるべきだった。

2.不具合を否定し、そのまま1年間隠していた。
実は、この不具合が報告されたのは初めてではなく、以前よりプレイヤーからはガチャ不具合について指摘が行われていた。それに対して、プロデューサーとディレクターを兼任する高大輔さんは「調べたところそういう記録は見つかりませんでした」と2017年6月25日に否定。

しかし、現実にはその4日後の6月29日に「★5が4体以上でない修正」をガチャに加えて不具合対策を行っていた。そして、不具合の存在について問い合わせたプレイヤーには「不具合はない」と回答し、対策後もプレイヤーに知らせていなかった。

3.ガチャに不具合があることを知りつつ、1年間も対策を怠っていた。
本来、課金に繋がるガチャの不具合はサービスを一時停止してでも徹底的に調べるべき重大事だ。
しかし、場当たり的な対策を行い、その正当性を検証しないまま1年間もサービスを継続していた。
グリーの監査体制は、それを見抜けなかった。

1~3、いずれもプレイヤーを裏切る重大事件である。
さらに9月27日に開示された報告では、「不正プログラムを入れいていたが、結果的にこれまでのガチャ結果は表示されていた確率通りだったので問題ない」とする報告が出された。
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確率とはその通りにならないランダムなものだから、この言い訳は正しくない。これが通るのであれば「特定の★5の排出率を半減しましたが、数を見れば確率通り排出されたから問題ない」という言い訳が通ってしまう。
「不正プログラムを入れていたけども、確率通りだったから問題ありませんでした」という言い訳は間違っている。
これは、グリーがガチャ不正操作の問題点を理解するリテラシーに欠けている可能性を示唆する。
また、この情報自体も信用できない。1年も不具合情報を隠し、都合の悪い情報をプレイヤーに表示しない運営の調査が正しいことを信じられるだろうか。

この事件は「ギャンブルの胴元が、バレないようにイカサマをしていたことが発覚した」という性質のもの。
バレたら「みんなが公平になるようにイカサマをしていた。私の持っている情報によれば、誰も損していなかったはずだから、イカサマしていたとしても問題ない」と開き直っている。
イカサマをしていたこと自体が重大な問題で、イカサマを行った責任者を明らかにし、利用者から見えない場所でイカサマができてしまった体制を改める必要がある。

さらに言うと、グリーがこの手の問題を公表しないのは今回に限ったことではない。
有名なものでは、2013年に未成年者への課金制限が機能していなかったことを、有名ブロガーが大きく取りあげるまで対処しなかった問題がある。

最近で言えば、『シノアリス』のガチャアイテム消失問題もひどかった。
グリー傘下のポケラボのゲーム『シノアリス』のサービス初期、ガチャを引いたときに有料アイテム魔晶石だけが消費され、ガチャアイテム消失する不具合が発生していた。
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サービス開始から指摘されていたにもかかわらず『シノアリス』側は騒ぎが大きくなるまで発表せず、ガチャも継続。
6月11日に「不具合は解消した」と宣言したものの、その直後からガチャアイテム消失が確認されていた。
これについて私は企業窓口でスクウェア・エニックスに確認し、「ポケラボにすべて任せている」と言われ、スクウェア・エニックスより指示されたポケラボの広報窓口に不具合を報告して対応を確認したが、返事はなかった。
不具合解消宣言の直後から不具合が発生していたと企業窓口に伝えたはずだったが、ポケラボがガチャ不具合を発表したのは再び騒ぎが大きくなった6月16日。
このときも課金額にして1万円相当の魔晶石を配り、沈静化を図っていた。

これまでの経緯から、私はグリーと系列のポケラボ、Write Flyer Studios(現WFS)に関して以下のように考えている。

・プレイヤーに対して不利な情報を隠し、証拠が出るまで公表しない
・不正プログラム混入を大問題と思わないほどコンプライアンスが欠如している
・課金システムに致命的なミスがあっても、検査する態勢がない
・大きな問題が発生しても、検査態勢の改善と責任者についてプレイヤーにアナウンスしない

オンラインゲームの課金サービスは、業者の表示を信頼することを前提に成り立っている。
それを大きく破ったグリーは、第三者による調査委員会を作って問題を徹底的に調べ、対応をするぐらいを調査する必要があると考えている。
さもなくば、パチスロのようにガチャ確率を専門機関で検査したゲーム以外はリリースできないような仕組みを作るしかなくなってしまうのではないか。

さらに、今回はもう1つ問題がある。
グリーの加盟する業界団体の CESA は、健全なオンラインゲーム運営のために CESA のガチャに関するガイドライン を示している。
だが、『アナザーエデン』の問題ではそれを守っていない。
6. 検証に関する事項
(1) 有料ガチャの運営を担当する部門から独立した部門によって、ガチャの仕様の検証を行う
(2) 不適切な事実や不具合が発見された場合、速やかにその事実を表示し、改善策と防止策を実施する。
今回の件では、(2)の規約を考えれば改善策(ガチャプログラムの入れ替え)に加えて、防止策を実施しなければならないが、それが提示されていない。
また、(1)の規約の通り仕様検証を行う部門があったのなら、ガチャの不正プログラム混入を防げなかった時点で、ガチャを検証する部門が機能していなかったことになる。

悪いことにグリー社長の田中良和さんはゲーム業界団体 CESA の理事を務めており、ガイドラインを守らせる側のはずだが、完全にガイドラインを逸している可能性が高い。
それに対して何も対応できないのであれば、ゲーム業界の自浄機能がまったく作用していないことになるし、ひいては CESA 会員すべてのゲームが疑わしいと言うことになってしまう。

ゲームキャストでは、ガチャの詳細確率明示が示されてから半年後にガイドラインを守っていないゲームを見つけたので、CESAに「ガイドラインを守っていないゲームに、CESAはどう対応するのか」とメールしたが、回答を得られなかった。
そして、今回の件についても同様に対応を質問したが回答は得られなかったし、何かをしているように発表するでもない。
CESA と会員企業は、この件について動く必要があると考えている。
(なお、CESAは機能していなくても、個別の企業ではまともに対応するところもある。WFSにゲーム開発を担当させているフォワードワークスは、独自に検証していることをはっきり回答してくれた)

さて、長くなったが書いてきたことをまとめよう。グリーの抱える問題は4点。

・『アナザーエデン』にはガチャでプレイヤーに不利な修正を行うプログラムが1年以上混入していた。
・ガチャの不具合を知って応急的な対処を行いながら、プロデューサーは「不具合はない」と否定し、そのまま運営していた。
・プログラムの混入はグリーのコンプライアンスを疑われる問題だが、グリーにその意識は薄い。
・同じ系列会社の『シノアリス』も不具合を隠して運営し、グリー本体も以前問題を起こしているが、それに対する予防策や責任のありかが示されていない。
・グリー社長が理事を務める業界団体 CESA ガイドラインを破っている恐れがあるが、おとがめなし

問題が多すぎる。ゲーム業界がこの問題に対処しなければ、業界全体の信用、そしてただでさえ低いガチャシステムの信用がより低下する。
プレイヤーから見れば、今後なにかの問題が発生しても「善意のプログラムだった」「我々が持つデータによれば確率的には正しかった」でやり過ごされることになり、当然良くない。

私自身としても、ゲーム業界にいたときはきっちりガチャをチェックする様子を見て(ときには検証に参加して)いたから、業界内で一定の努力をしていることは知っているし、信用したいと思ってきた。
しかし、グリーの問題を放置するようでは『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の確率操作疑惑の調査のときのようにゲーム会社を信用した記事を書けなくなってしまうと思っている。

グリー傘下の運営体制、『アナザーエデン』のガチャ問題は、個別のゲーム会社の問題にとどまらず、業界団体 CESA の問題でもあり、ゲーム業界全体で対処すべき問題でもある。
グリーは第三者による調査委員会で膿を出し切り、今後の体制を発表して安心して遊べるように環境を整え、その上で今運営しているゲームを続けるのがプレイヤーに対する責務だろう。

当然、ゲーム業界の方がいまも水面下で動いていると思ってはいるが、我々プレイヤーにもできることはある。それは消費者センターに連絡をすることだ。
グリーの株主総会では「沈静化傾向にある」と発言されたし、3万円相当の有料アイテムをお詫びにしたことで一部のプレイヤーは沈静化しているように見えている。
しかし、この問題はいま静かに燃えている。
私が消費者センターに連絡を入れたときの様子では、株主総会で「不具合だった」「問題は沈静化した」とグリーが発表したことで、グリーに裏切られたと感じがプレイヤーからの苦情が増えているようだった。

消費者センターは、こういった課金の問題に敏感に反応する。
苦情が増えるほど、消費者庁が動いてくれる可能性は大きくなる。もし、不満を感じていたら連絡してみて欲しい。
直接の被害者でなければ、この記事をTwitterで共有するなどしていただければありがたい。

最後に1つ。私の意図するところは、グリーの正常化であり、ゲームを潰すところにはない。
『アナザーエデン』のゲーム自体は気に入っていたし、私自身課金もしてきた。
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「みなさまに愛される 最高のゲームにして行きます。今後ともご支援のほど よろしくお願いします。」と、アナザーエデンの開発チームは言った。
私自身、エンディングまで『アナザーエデン』を遊びたいと思っていたし、いずれそうなると思っていただけに今回の件はとても残念に思っている1人だ。
グリーは、詫び石でその場しのぎの対処に終わらせず『アナザーエデン』を安心して遊べるように体勢を改めていただきたい。
そのため、まずはプレイヤー向けのお知らせで「調査継続中、対策を今後発表すること、責任のありかを明示すること」などを知らせて欲しいと思う。

最後に、私がゲームをまた支援できる日がきて欲しいと願って、この記事の締めとさせていただく。

関連リンク:

2018.10.09、修正
・ガチャ不具合に問い合わせたプレイヤーに「不具合はない」と回答したことを追記しました。
・アナザーエデン詫び石に関する表現を簡略化しました(課金額に関して言っていたプレイヤー属性を削除し一部のプレイヤーへ変更)
・意味が変わらないてにをはの修正。
・バグ→不具合と表記変更
・株主向けに「再発防止策も含めて、安心して遊べるようなゲーム運営をしていきたい」としていることを受け、プレイヤー向けのお知らせを出して欲しいことを末尾に追記