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『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の確率操作疑惑の調査結果報告と、ネットにおける誤解に対する回答

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『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』(以後、ドッカンバトル)のガチャ排出キャラクター表示画面に表示されるキャラクターがプレイヤーごとに異なり、『ドッカンバトル』でプレイヤーの状況に応じた排出キャラクターの操作(以後、確率操作)が行われているのではないか、とされる事件について、ゲームキャストではいったんの結論を出して調査を終えることとした。
呼びかけに応えて『ドッカンバトル』の記事を拡散し、情報を寄せてくださった皆さんにまずは感謝しつつ、今回は寄せられた情報と、それをもとにした結論の報告記事となる。
※ドッカンバトルでいうガシャのシステムは、ゲームキャスト内でガチャと呼んでいる

今回の事件を時系列順に並べると以下のようになる。
11月14日22時10分:ドッカンバトルアップデート後、排出キャラクター一覧がプレイヤーによって異なることが発覚し、5ちゃんねるを中心に「プレイヤー個別に確率操作しているのではないか」という疑いが持ち上がる。

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▲5ちゃんねる有志による症例画像。


11月15日01時03分:メンテナンスへ
11月15日02時16分:メンテナンスの案内にガチャ停止を追記
11月16日00時45分:お知らせにて対応と現象の発表。メモリ管理プログラムの欠陥による表示不具合であり、ガチャの排出率は正常であったことをアナウンス。
「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」一部ガシャの「出現キャラ一覧」及び「出現キャラ提供割合」表示に関する不具合につきまして
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11月16日12時55分:お知らせにてソースコードと詳細発表

さて、結論を出す前に事件の過程で出てきて、目についたネット上の疑問のいくつかに、ソーシャルゲームの現実と異なるものがあったのでいくつか回答しておきたい。

確率ページは単なるhtmlでシステムと連動していないはずという指摘について
確率操作をしているから、お知らせのガチャ排出キャラクターの表示がずれるのではないか、という指摘がネット上で多く見られた。
この誤解のネタは2つあって、1つは基本的にソーシャルゲームの“お知らせ”はhtml(主に手入力など記され、外部データに応じて変動しないページ)だから、ゲーム内データと連動していないはずという指摘が1つ。
これに関しては、長期的に見ると確率を計算して手作業で表示する方がミスが多いし、作業量を減らせるのでゲーム内のデータに連動しているゲームも多くある。
データからガチャ確率画面を生成する会社はあるし、プログラムやデータにバグがあれば、お知らせの表示もくるってしまうのは当然。「お知らせがデータに連動しているから、表示バグがあれば確率操作している」は成り立たない。
もう1つは、ガチャ確率を操作しているから確率に合わせた正しい表示(通常は隠れている操作されたデータ)がたまたま出てしまったのではないか、という推測。これに関しては低確率であり得る。
しかし、今回に関しては同じキャラクターが2体ならでいるような純然としたバグっぽい挙動なのでやっぱり確率は低いな、と思う。
普通はこのようなバグは検証されて表に出ない(テスト用の環境で新しいガチャから新キャラが排出されるかテストする会社も多い)が、最近は本番環境でテスト用のキャラクターがプレイヤーに発見されて、異常アカウントとして報告されて騒がれることもあるので、本番テストは簡単にできないことも……。

ガチャ停止から発表まで時間がかかりすぎるという指摘について
「なぜ、すぐに原因を報告できなかったのか、隠ぺいしたからではないか」という指摘を見たが、今回に関して言えば早い対応だったといえる。この規模の障害(アカツキの株価が瞬間的に200億円も吹っ飛んだ大事件)となると、原因報告するにも承認やチェックがいくつも必要になる。
たとえば、「てにをは」が間違っていただけで文章の意味が変わり、プレイヤーの疑念を生むこともあるから1人や2人の判断ではお知らせすら出せない。
不具合を抱えたままという恐れがあるガチャを即座に停止し、時間をかけて調査して知らせするのは誠実で当然の対応。また、各種お知らせにも「改めて報告する」ことを約束して迅速に報告していると考えられる。
不具合を抱えたままうやむやに続けるゲームもあるなか、誠実な対応をしたといえる。

龍石300配布は、何もしていないのに多すぎないか?
明らかに配りすぎだと思う。私が10,000円程度の課金した直後だったら「課金しなければよかったー!」と騒いでいたと思う。
あ、これは回答ではなくて個人的な意見だった。

提出されたソースコードが使われている保証がない
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この指摘は当然。
この先になにがあるかというと、「全ソースコードを出さないと信用できない」、「全ソース出したが、該当部分だけ書き換えられているのではないか」という疑惑につながって、結局は絶対納得されない悪魔の証明になってしまう。
とはいえ、文章とソースコード2重の説明でちょっとでも穴があればまたつつかれて炎上されるなか、それなりに誠意をもって説明しようとしたのだなぁ、と理解はできる。
なお、この手法は企業の契約によってはソースコードは公開できない(内部が秘密の他社ライブラリにバグがあったときや、開発会社の力が強いときなど)ので、バンダイナムコの力があってできる力技。


脱線したあとで、いよいよゲームキャストの調査報告と結論に移る。
今回、ゲームキャストの情報提供募集に応じて4件ほどの情報提供メールが寄せられたほか、Twitterでこの問題について当事者であると語るプレイヤー2名から事情を聴くことができた。

メールの2通は「障害が発生した時期にガチャを回したがピックアップに存在しないキャラクターが出なかった」というもの。ただし、詳細に確認したところ、その内容は「5ちゃんねるで情報を見てキャラクターが出なかったと思ったので報告した」というもので、スクリーンショットはなかった。
1通は、「ログインして確認するたびに表示が変わった」という証言でガチャは表示不具合を見て回していない証言だった。スクリーンショットは記憶をもとに5ちゃんねるから取得したものから選んで提供されていた。
ただし、その動きはバンダイナムコの公式発表と一致していた。
具体的には5ちゃんねるでの騒ぎを見て確認し、再度スカウターで確認してから内容を見たら表示されていたという。
最後は開発会社のアカツキに関するもので、今回とは別件のため割愛する。

また、Twitter上で「確率操作されたから出なかった」という発言をたどり、2人にDMとSkypeで話を聞くことができた。彼らはピックアップガチャを回していたが、自ら確率表記は見ていなかったため不満を述べる状況であった。心中は察するが、今回のケースでは証拠にできない。

バンダイナムコの報告を正とした場合、ドッカンバトルの規模であれば「ガチャのピックアップ詳細に出ていないキャラクターが排出された」という報告があるはずと思っていたたのだが、意外なことにガチャから出たという証拠も、出なかったという証拠も得られなかった。
事件が発生してから5ちゃんねる掲示板やTwitterを有志とともに確認したが、ピックアップに表記のないキャラクターが登場したという証言は見られなかった。一方で、ガチャからキャラクターが取り除かれていたという証言も裏をとれなかった。

現在は『ドッカンバトル』固有の表記のために情報が少なかったのではないかと推測している。
『ドッカンバトル』では「10連ガチャのピックアップ枠では5体のキャラクターのいずれかが登場する」などという表現をしており、基本的に同一枠内の出現率は均等とされる。5体しかピックアップがいなければ各キャラクターの出現率は均等の20%と容易に類推できる。そのため、バナーなどの告知で確率を類推し、詳細を見てからガチャを回さなかったのではないか、という考えだ。
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過去に『KOF UMOL』のオークションガチャ疑惑や確率表記の有利誤認、『シノアリス』リリース時のバグなどはプレイヤーが疑い、調べ、騒いだからこそ見つかった事件もあるので、プレイヤーが騒ぐこと自体は当然だし、調べることも有意義だと思っている。ただ、その時に記事にするために調べた情報と比べて、今回は確信が持てる情報は一切出てこなかった。
『ドッカンバトル』については情報を探す難易度が高いと想定できたため、今回はここで打ち切り(決定的な情報があれば、再開するかもしれないが)、情報提供を呼び掛けた皆さんに向けていったん結論を出す。

1・バンダイナムコの規模では、この商売はリスクばかりで良いことがない
2・バンダイナムコの障害対応の説明は今回の事象をすべて説明できるし、疑いが残るにせよそこに反する情報が出てこなかった

上記により、「100%ないとは言えないが、現在出ている情報を総合すると確率操作が行われていた可能性は低い」と考えている。
1番について補足しておくと、私はずっとソーシャルゲームを取材している中で、2010年頃に確率操作を行っているソーシャルゲームがあったことはほぼ確信している。大昔はソーシャルゲームを始めて、最初の1カ月で利益を得て、あとは放置なんてこともあった。だから瞬間的に搾り取るテクニックは有効だったのだ。
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▲こんなゲームを出していた時代よりまた前かな…。画像は6本の違うゲームをプレイしているはずが、なぜか同じゲームをプレイしている気分になった怪事件より。

しかし、そういった商売は短期で課金疲れを起こして人が辞めるので、すぐに閉じてしまう。
現代の大企業のソーシャルゲームは出るまでに10億もの費用がかかり、数カ月かけて開発費を回収しなければいけない。だから、せっかくお金を払ってくれるプレイヤーがすぐやめてしまうような仕組みは害になりやすいし、発覚したときのリスクも併せて大企業が行うにはメリットが低すぎる。
現代でも安く権利を買い付けて底辺運営する会社などは事情が異なるかもしれないが、バンダイナムコについてはリスクが大きすぎるというわけだ。

とはいえ、今回の件はソーシャルゲームが信用されていない面を改めて見せつけた事件である。
そもそも基本的にガチャという商売が信用されることはない(確率通りに出しても、はずれたプレイヤーは皆疑うのだ)。また、ガチャがなくともランダムドロップが存在してそれが課金に結びついている限り、この商売が信用されることはない。
確率を1プレイヤーが検証できることはないから、疑われ続けるしかない。
そういった商売をしている自覚があるから、多くのPCオンラインゲームはメンテナンスの状況やゲームの状況などを昔から詳しく報告し続けていたのだが、ガラケー発のソーシャルゲームにおいてはそういった文化が消えてしまった。
これを機会に、すべての会社がお知らせを見直し、サイレント修正を少なくし、マメで迅速な情報提供をする流れになることを期待したい。

もしこの記事を読んでいるあなたがこの意見に納得してくれて、過去に『ドッカンバトル』のガチャ確率操作についてSNSに拡散していたら、この記事もまた拡散してくれればうれしいと思う。

最後になるが、ゲームキャストでは主にソーシャルゲームではないゲームを紹介しているので、ガチャに飽きたら皆さん、ここでスマホゲームを探してくれると非常にありがたい。
最近の記事だと、こんなのがある。
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