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『アズールレーン』などが採用する中国の“間接ガチャ”仕組み。日本産ゲームが悪で、海外産ゲームは優しいは本当か?

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『アズールレーン』のヒット以降、「日本のゲームの課金はだめだ」的な意見をネットでよく見る。
その中でも、「日本のゲームはガチャに頼っているから駄目だ」という話が多く、『アズールレーン』をはじめとする中国・韓国の基本無料ゲーム(以下、中国産ゲーム)の基本にガチャ課金の仕組み用いられていることを無視していることが多い。
ただ、私が見る限り『アズールレーン』はとりわけ優しい神のようなゲームであり、これ1つを指して「日本はダメ」というのに違和感がある。また「アズレンはガチャを重視していない」という言い方にも違和感がある。

そこで、今回は『アズールレーン』など中国産ゲームの用いている間接ガチャの仕組みについて説明しつつ、「日本は終わっている」わけではないと説明したい。
なお、本記事では知名度があるために『アズールレーン』の画像を多く利用するが、というか『アズールレーン』はほんとに優しい。

終盤にあるように日本型ゲームもスタミナ課金はあるし、中国のゲームもガチャの比重はある。単にその割合の中でとメインとする課金方法の問題と思って欲しい。また、ガチャとは「ランダム要素を用いて従量型の課金のキーとしているもの」とする。韓国のPCゲーム発祥の「鍵と宝箱」とか、課金で入れるダンジョンとか、そういったMMORPGの要素はすべてガチャとなる(と言うか、それらがガチャの発祥なので自然とそうなる)。定額制課金は従量ではないので含まない。

まず最初に間接ガチャとはなにか、と言う話からしていきたい。
日本産の基本無料ゲーム(以後、これを日本産ゲームと略す)は、よく「ガチャゲー」といわれる。
これは非常にその通りで、多くの日本産ゲームは直接ガチャに課金して強いキャラクターを当てて、それを育ててクエストを進めるシステムとなっている。ドロップを狙うにしても、最高レアを当てて、そこを起点にゲームをすることになる。
低レアを工夫して使えることはあるが、基本的に高レアにその低レアの必要性をなくすほどの性能を持つキャラクターがおり、ガチャの結果が良ければその後は全て上手くいく作りを指して「ガチャゲー」と呼ぶのは間違いではないだろう。

日本産ゲームの“直接ガチャ”と書いたが、“直接”ガチャがあれば“間接”ガチャもある。
そして、その間接ガチャこそが『アズールレーン』をはじめとして中国産の基本無料ゲームで多く採用されているガチャの仕組みである。
間接ガチャとは、何かのリソース(大抵スタミナなので、ここではスタミナとする)を消費してプレイヤーにクエストをこなさせて、クエスト攻略時にランダムでドロップするアイテムをあさらせる方式だ。
つまり、直接ガチャが“石”などと呼ばれる課金アイテムを用いてガチャを回すのに対して、間接ガチャとは「スタミナ」を利用してプレイを通じて回すガチャになる。

直接ガチャの日本産ゲーム
「イベント→ガチャに課金して→低確率で出た!→イベントは攻略できる!」
※イベントクエストのドロップ率はたいてい海外ゲームよりかなり高いか、必要性が薄い。

間接ガチャの中国産ゲーム
「イベント→クエストをひたすら何回も回す→ドロップした!」
※このほかにノーマルクエストから重要なアイテムが落ちるので、イベントがなくてもスタミナ課金することがある。

という仕組みだ。基本的には、これで日本産ゲームと変わらない売り上げをたたき出すように設計されている。中国政府はガチャレアリティごとではなく、詳細な個別確率の明示を義務化しているが、間接ガチャなら確率の明示も必要がなく、中国的に都合が良い仕組みでもある。
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▲中国のゲームは本国では詳細確率を表示しているが、日本では良くてレア度別の確率表記にとどまる。

「スタミナなら課金なしで誰も持っているし、クエストから落ちるなら努力すればだれでも手に入るから平等ではないか?」と思う方もいるだろう。そこが間接ガチャのえぐいところで、毎日の限界までプレイするプレイヤー、是が非でもイベントドロップなどを集めて金を払うプレイヤー以外には課金が見えないのだ。
しかし、実際にはスタミナに課金される。
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間接ガチャではスタミナ課金に対しては特殊な価格設定を行って課金源とする。
日本産のゲームは課金すると定額でスタミナが全回復するが、多くの中国産ゲームはタミナが最重要の課金ポイントなので一定値しか回復しない。しかも、スタミナは課金を続けると高額になっていく。
だいたいは1回目500円、2回目1,000円、3回目2,000円……と言った具合だ。また、スタミナ回復に制限があって、課金していないとあまり回復できないケースもある。
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▲中国産ゲームは燃料を購入するとどんどん高額になる。一部で「ゆっくり遊んでほしいから」などと誤解されるが、ここが一番重要な課金ポイント。

「そろそろドロップしないと、イベントが終わってしまうかもしれない。でも、絶対に限定ドロップは欲しい」
クエストでドロップせずに確率の沼にハマってしまったプレイヤーや、毎日ログインし損ねてスタミナが足りないプレイヤーに、高額でスタミナを購入してもらう仕組みなのである。
そのため、日本産ゲームのイベントが開始初日のガチャをピークにするのに対して、中国産ゲームは初日に盛り上がった後に落ち着き、ランキング系イベントでなくともイベント終盤になるほどに課金が増えていくことが多い。
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▲アズールレーンのイベント「努力、希望と計画」時の売り上げ。イベント開始の9月28日に大きく上がった後、後半になるにしたがって増えてイベント終了日に最高潮を迎える。この時期にアズールレーンは急速な成長をしていたので厳密にはイベントだけが原因ではないが、成長速度が収まりつつある現イベント「紅染の来訪者」ではよりこの傾向が顕著になっている。

日本産ゲームは直接的にガチャに課金させるのに対して、中国産ゲームはプレイを間に挟んでの間接ガチャでドロップするまで課金させることもできるが特徴、というわけだ。プレイが間に挟まる分はゲーム的とも考えられるが、これが極まるとクエストのオート周回・スタミナだけを消費してのスキップでドロップを手に入れるようになり、後者に至ってはスタミナを買っての直接ガチャと大差はなくなる。
事実、中国や韓国のゲームではオートやクエストスキップがユーザーから求められる機能として存在する。
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▲KOF98UMOLでは、ゲームをプレイしなくてもスタミナを消費してドロップだけを手に入れられる。ここまでくると直接ガチャ。

で、こういった仕組みが全部入りで、実際にイベントの売り上げ推移を見ていてもその傾向が見られるし、というのが、「アズールレーンは根本的にはガチャを否定していない」という論拠である。

で、次に言いたいのは「アズールレーンは特別だけど、別に日本のゲームだって捨てたもんじゃない」ということだ。
まず、『アズールレーン』についてネット上で「日本のゲームと比べて優しい」とされているのは、

・無課金でもキャラクターが揃って限界突破できる
・SSR輩出率が高いだけでなく、SSRキャラクターですらドロップする
・競わないですむ
・メンテナンスのお詫びが多い

あたりか。これらは中国産ゲーム特有の事情と、『アズールレーン』特有の事情両方の要因が重なって優しいゲームになっているのは間違いないと思う。
間接ガチャを採用するゲームの特徴として基本的な戦力は整いやすいというものがある。周回課金してもらうためにはイベントを遊ぶ戦力を揃えてもらわなければならない。キャラクターの装備を得るために周回するモチベーションを持ってもらうためにも、スタミナに次ぐ人気商品の衣装を売るためにもキャラクターは持っていて欲しい。するとガチャの確率などは甘めにする必要が出る。だから、中国産ゲームのガチャ確率は最高レアの出る確率は高くてもいい。
また、SSRが出なくても使えるキャラクターがあればイベントに参加できるので、低レアに強力なカードを配置することも忘れない。
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▲衣装課金は中国のゲームの中でも重要な部類に属する。誰にでも配られたり、ドロップしたりするキャラクターは衣装が多く用意されたり、高額衣装が用意される傾向にある。

ここまでは中国産ゲームの特徴で、この先が『アズールレーン』のすごさなのだが……。
他の中国産ゲームは課金アイテムの衣装を手に入れるとキャラクターの能力自体が変わることも多いが、アズールレーンは外見しか変わらないので購入圧力がない。
また、多くの中国産ゲームはスタミナ課金(プレイヤーレベルが直接キャラクターの能力限界になるなど)の優遇が大きくてスタミナ課金の圧力が高いものが多いが『アズールレーン』にはそれがない。
キャラクターを与えたあとでプレイヤーvsプレイヤー(PvP)やギルドバトルをけしかけ、究極の装備を調えるためにスタミナ課金させるのも中国産ゲームのお約束だが、現段階ではそれもない(PvPはあるが、競うべき限定景品がない)。
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▲アズールレーンでは限定景品がない。そのため、心穏やかに遊べる。

また、キャラクターの欠片を集めて強化するようなゲームと比べると、限界突破最大までのハードルも極めて低い。日本式ゲームでいったんのゴールとされる「キャラクター入手」はおおよそ緩いし、中国産ゲームの苛烈な課金システムも現段階でほぼ搭載されていない。
スタミナを購入するたびに高くなることや衣装の価格を考えると、本当に極めるとしたら日本の普通のゲーム(ランキング無しの中ランクのガチャゲーと)と大差ない金額に行くはずだが、特に無課金と小額課金者にとっては日本産ゲームではありえないほどキャラクターがそろうし、効率よくイベントをこなせばイベントもクリアできる可能性が高いため、すごく優しく見える設計になっている。
さらに、ドロップでハマってスタミナ課金の壁が見えてきても、日本版のアズールレーンはそのスタミナ自体が中国版より若干安い。
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▲イベント燃料パックは中国の40%引き(半額近い)。いいの?

障害対応の良さや広告戦略など多くの要因があるが、この「優しさ」が『アズールレーン』を人気ゲームの座に導いた大きな要因の1つだろう。
『アズールレーン』の課金システムの根底にはガチャ思想がある。しかし、中国産ゲームの中でかなり課金圧が低いし、日本的に見ても現段階では優しいゲームなのは間違いない。
余談だが、日本向けにサービスする中国・韓国ゲームは日本版でバランスが変わってしまうことが多い。具体的には、よりガチャの重要性が増すように設定され、スタミナの課金額が引き下げられる傾向にある。スタミナで課金する設計なのに日本人が直接ガチャを回しまくってしまうのでそこでバランスをとったり、日本に受け入れやすい設計にするようだ。また、単純に日本人が気前良く金を払うので課金アイテムの金額を跳ね上げるゲームもある(ときに海外の2倍、3倍の額面にされる上に、スタミナ課金も残っていて2度おいしく売り上げる)。
日本のゲームでもそうだが、完全にスタミナ課金・ガチャ課金に寄っていることは少なく、中国産ゲームでもスタミナ課金の比率が大きいが、日本に渡ってくるときに直接ガチャ課金の比重を強めるケースも多い。
アズールレーンの場合は中国と大差ないようだが、ガチャが引かれやすい日本の環境が売り上げに良い影響を及ぼしている(ガチャ確率が明記されていないので限定キャラのガチャ排出率が下がっている可能性などはあるが)ように思う。
で、ここに来てようやっと、最初の「日本は終わっているの?」的な話になる。
中国産ゲームのスタミナ課金システムは、基本的なキャラクターやイベント参加のお膳立ては楽にできるけども、「スタミナを使い切るギリギリか、足りないぐらいを計算してイベントを設計する」ため、1度キャラクターを育てても常にスタミナ不足などで課金が必要になる。これは海外で「グラインド型」と呼ばれていて、常に課金圧を感じる上に合計の課金は日本産ゲームよりはるかに課金額が高くなることから「辛くて止めたい」という声も出る。

一方で日本産ゲームの「ガチャで出たものが全て」パターンでは、1回課金して良いキャラクターをそろえると以後のプレイは基本的に無料で進められる。
日本産ゲームは海外ゲームではありえないほどアイテムを配りまくっていて、ほとんどの場合においてゲームに必要な戦力はそろうようになっている。
SSRが報酬にならない『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』で、ゲームを楽しむのにでかい課金は必要だろうか?
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▲特に日本型の音ゲー全般に顕著だが、ゲームを楽しむために必要なものは配布の資材で手に入ることが多い。SR程度のキャラクターで十分に全曲楽しめる。いまだに特攻とかやっているのはガチャゲー。

対戦・ランキングに特別な報酬を持つゲームをのぞき、日常やイベントで配布されるアイテムだけでキャラクターはそろわなくても十分にゲームは楽しめるはずだ。
最高レアはそろわないかもしれないが、そもそも中国産ゲームでは課金しないとイベント衣装意外は手に入らない(課金石を配らないゲームか、現金課金アイテムにするか二分される)からあまり変わらない。

「日本のゲームは課金ばかりで終わっている」的な説を見かけるが、どちらにも(例えば激しいギルドバトルを伴えば辛い課金が待つ)課金圧が厳しいゲームとそうでないゲームがあり、どちらにも長所と欠点がある。
『アズールレーン』は中国のゲームの中でも課金圧が低めにできていて、この例を指して「日本で人気のあのゲームは課金しかない」とか、「厳しい」とか言われることには疑問を感じる。

そもそもとして、国産ゲームでも直接ガチャメインという状況は変化を迎えつつある。
過去、カプコンが「納得課金」というキーワードで取り組んでうまくいかなかったりしたが、『艦これ』にて間接ガチャの仕組みを搭載した国産ゲームをヒットさせることができた。
国産作品のヒットと、海外作品の台頭でちょうど変革期を迎えているなか、中国からいい感じのゲームがいいタイミングでリースされたのが『アズールレーン』というだけで、今後出る日本産ゲームもそう言った特徴を持つものが出るのは十分期待できる。

少なくとも、『アズールレーン』が良いから、そのうわべの仕組みを見て中国産ゲーム全般に適応して「日本終わっている」的な意見は違うと言いたい。

と言うことで「アズールレーンって最高なんだけど、ガチャに疑問を持っている宣言はなんか違うと思うし、一部の日本ゲーを指して日本のゲーム終わったな、と言うのも違う」と言いたかった記事はおしまいです。

21:00.修正:
単にアズールレーンを貶しているととられることが多かったので、アズールレーンは良いもの宣言を強くしました。