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止まらない中毒性。サウンドノベル『9時間9人9の扉 Smart Sound Novel』

9時間9人9の扉 Smart Sound Novel (Ver1.0.0)1000円
9時間9人9の扉 HD Smart Sound Novel (Ver1.0.0)1000円 iPad専用
課金:なし
開発:Spike-Chunsoft CO, LTD.
評価:
3.0(面白い)
ss1
縦横どちらでもプレイができる
色々と考察できる面白いストーリー
臨場感あふれるサウンド
DS版の2画面を生かした仕掛けが成立しない
デモムービーがいまいち
2009年に発売されたサスペンスアドベンチャー『極限脱出 9時間9人9の扉』が、『かまいたちの夜』に続く“スマートサウンドノベル”第2弾として、探索やパズルゲーム部分はカットされ、ストーリーのみを楽しむサウンドノベルとして生まれ変わってAppStoreに配信。
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プレイ前は「謎解きゲームから謎解きパートを取り除いて大丈夫なのか?」などと思っていたが、実際やってみるとストーリーに引き込まれ、夜通しプレイして一気にクリアしてしまった。
ということで、今日はこの『極限脱出 9時間9人9の扉』を紹介したい。
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「制限時間は9時間、船内にある数字の書かれた扉をくぐり抜け、脱出口となる9の数字が書かれた“扉”を発見することで脱出できる」と謎の男に告げられる。
閉鎖空間に閉じ込められた8人の男女とプレイヤーが、ときに協力し、ときに疑心暗鬼に陥りながら生還を目指すというストーリー。
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物語の途中途中に数字の書かれた“扉”が出現し、選択した扉によってストーリーが変化するマルチストーリー・マルチエンドになっている。
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▲自分が入る扉でストーリーが分岐

元々このゲームはそのストーリーの面白さが話題となってロングランし、長い時間をかけてヒット作品といえるまでになった経緯がある。
なので、当然ウリになるのはストーリー。
導入部、主人公は誘拐されて連れて来られるが、スタート地点からきっちり非日常的な空気が漂う演出で引き込まれ、いつの間にか異常な空気に馴染んでしまう。
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そして、伏線の張り方やその出し方がウマイ。
キャラクターたちが不安にかられている中でのオカルト的なお話。
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▲オカルト的な引き

“タイタニック”という誰でも知っているであろう話題での引き、そして科学的で現実的なお話など。
それらが織り交ぜられ、興味をひかれつつすっと読んでいける。
一見、真相と関係無さそうでも、それらの話が最終的に話に絡んでおり、終わってみると「ああ、そうだったのか!」と腑に落ちる納得感。
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▲大人なら聞いたことあるタイタニック

続編がリリースされてはいるが、ストーリーはプレイヤーの想像に任せる部分も含めると本作だけで完結する話になっているし、ルートごとにそれぞれ謎が明かされ、徐々に真相がわかっていくつくりもお約束ながら見事。
仮に1回目のプレイで真エンディングにたどり着いたとしても、他のルートを見たくなるぐらいに話しの全貌が気になる。
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先にも書いたとおり、本作は元々が謎解きゲームだったところ、謎解きゲーム要素を排除してノベルゲームにしている。
が、謎解きがなくなったことによる不自然さは感じないし、これだけストーリーが面白いとむしろ“ストーリーに集中できる”ことがメリットとも言える。

DS版では画面に表示されたキャラが大きく動く立ち絵になっていたが、今回はウィンドウにキャラが表示されセリフが吹出しとなった。
またDSでは2画面を利用してプレイしていく内容だったが、1画面へ。
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▲画像も高解像度化されて綺麗になっている。

また、縦持ちと横持ち両方に対応しているのも特徴。
縦だと上下に黒枠が表示され、いまいち臨場感にかけるが片手でプレイできる。
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▲黒枠があり、表示されるイラストの横幅が狭い。

横持ちだとこのとおり背景が拡大され、画面いっぱいに表示されていて臨場感アップ。
ただ、文字サイズが縦持ち前提の小さな文字で、横持ちでもそれが変わらないため少し見づらいのと、LOGボタンの反応も横持ちだと少し押しづらいことがあり、本来ゲームの魅力フルに楽しめるはずの横持ちを生かしきれてないことが残念だ。
それでも、個人的には横持ちでプレイして欲しい。
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▲文字が小さい。できればアップデートで対応を…。

また、iOS版ではDS版にはなかったストーリーのチャートが用意され、一度プレイした場所にはいつでも戻れるようになっている。
このおかげで、何度もプレイし直してストーリーの全貌を楽しむのが楽になった。
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▲光っている矢印が現在選択されているルート

また、サウンドノベルも第2段ということで『かまいたちの夜』の難点も克服。
『かまいたちの夜』では文章が流れるように表示されているため、プレイヤーとストーリーの進みに一体感が欠けていた。
が、こちらは他のスマホノベルアプリと同じようにタッチするたびに文が表示されていく形式のため、プレイヤーの操作に合わせて展開するリアルタイムな緊張感が損なわれていない。
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もちろん、分岐チャート機能だけでなく、オートで読み進める機能、既読文章を早送りする機能、など基本的な機能は完備。
また、ログを読む機能については読みやすいように色分けされているほか、指定した場所にシーン巻き戻すことも可能。
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▲LOGの文章をタッチしてログからその場面に戻ることも可能。

また、真エンディング以外のエンディングを見た場合、違うエンディングを見るためのルートを教えてくれるため、チャートツリーと合わると攻略サイトなどでルートをチェックしなくてもすべてのエンディングが確認できる親切設計。
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▲真エンディング以外の場合、違うエンディングが見れるルートを教えてくれる。

もちろん、サウンドノベルということで音も気合が入っている。
ヘッドホンをしてプレイするとより緊張した雰囲気を体感できるので、ぜひヘッドホンでプレイしてほしい。
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▲最初の爆発音からぐっと引き込まれる。

難点を挙げるとすれば、デモムービーがなぜか縦持ち専用で、さらに画面の真ん中にちょこんと表示されているため(なんとムービーより黒枠の面積のほうがでかい!)明らかにショボく見えること。
これでは本編は面白いのに、ゲームの入り口でがっかりしてしまう。
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▲デモムービー。黒枠の面積のがでかい!

だが、デモムービーに気後れせずプレイすればあとはひたすら楽しくストーリーに没頭できる。
サウンドノベルや『ダンガンロンパ』などが好きで、まだプレイしたことのない方は、ぜひこの機会にプレイしてもらいたい。
スキップ機能を使っても、すべてのエンディングを見るまでに約8時間ほどでボリュームもiPhoneゲームとしては充分。
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▲なお、DS版は完全攻略まで20時間程度

点数に関しては3.5点をつけたいところだったが、ストーリーの納得感に1役かっていたDS独特の2画面を使ったしかけがないことを考慮して3.0としたい。
どうしても謎解き・探索もプレイしたければ、現在はDSのベスト版が2480円で出ているのでそちらでプレイするのもいいだろう。
とにかく、この手のものが好きならば見逃すのはもったいない。

アプリリンク:
9時間9人9の扉 Smart Sound Novel (itunes)1000円
9時間9人9の扉 HD Smart Sound Novel ((itunes)1000円 iPad専用
かまいたちの夜 Smart Sound Novel (itunes)1000円 + iPhone/iPadの両方に対応

関連リンク:
極限脱出 9時間9人9の扉(チュンセレクション) (Amazon)