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Unity、ゲームのインストール数に応じた追加料金を支払うUnity Runtime Feeを発表。一定の売上・DL数以上のゲームはライセンス料に上乗せした料金支払いが必要に

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開発体制に地殻変動が起きるかもしれない。
Unityは、2024年1月1日より、ゲームのインストール数に応じて料金を支払う従量制の Unity Runtime Fee が導入されることを発表した。
Unity Runtime Fee の導入後、一定の収益とダウンロード数を達成したゲームからは、決められたインストール数ごとに利用料が発生する。

Unityはゲームの開発エンジンとして広く普及しており、これまではUnity利用者の売上規模に応じて『Unity Pro』や『Unity Enterprise』など各種プランを有料で提供していた。今回の料金は上乗せで支払う値上げと言える。
一方で、2023年11月からはクラウドベースのアセットストレージ、Unity DevOps ツール、ランタイム時のAI機能が追加料金なしで Unity のサブスクリプションプランに加わり、機能追加がなされるようだ。

Unity Runtime Fee が適用される条件(売上・ダウンロード数)と追加料金は契約プランによって異なる。
例えば、最も安いPersonalとPlusでは過去12カ月で20万米ドル(およそ2,943万円)かつ、累計インストール数20万回以上でなければ支払いは発生しない。支払い発生時の追加料金は1インストールあたり0.2米ドル(およそ29.44円)まで変動する。

Unity Pro であれば、12か月間の売上100万米ドル(およそ1億4710万円)かつ、100万ダウンロードを超えていなければ支払いは発生しない。支払い発生時の追加料金は1インストールあたり0.15米ドル~0.02米ドル(インストール数に応じて変動)となる。

料金の比較表は以下の通り。
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インストール単価の通常価格の適用対象国はUnited States, Australia, Austria, Belgium, Canada, Denmark, Finland, France, Germany, Ireland, Japan, Netherlands, New Zealand, Norway, Sweden, Switzerland, South Korea, United Kingdom。
ゲーム市場が成熟していない国では新興市場向け価格が適用され、新興国向けは一番高価なプランでも0.02米ドル(およそ3円)と大幅に安くなる。

さらに、詳細は不明だがUnityの広告サービスを利用することでクレジットを受け取ることも可能とされており、ハイパーカジュアルゲームのような広告を主体としつつ低単価・高ダウンロード数で稼ぐゲームについてはある種のディスカウントが受け取れるようだ。

また、今回の発表では「本件に伴い、無料版のPersonalが会社規模にかかわらず利用可能になります。」とある。

これまで、中規模のチーム開発ではUnity Plus(2023年9月12日より新規受付停止予定)か、Proかを選んでライセンス料を支払う必要が必要があった。しかし、買い切りでダウンロード数がそこそこのゲームであれば、無料のPersonal版を利用して1インストール当たり0.2米ドルを払えば1万DLのソフトで2,000ドル、29万4,400円の出費で済む。
Unity Proは1シートで267,960円だから、趣味やちょっとしたチーム開発はより安くなる可能性もある。

今回の値上げは突然かつセンセーショナルなため、色々な憶測を呼んでいる。
たとえば、「リセマラでダウンロード数を稼いだゲームは支払いが多すぎて死ぬのではないか」、「死にかけの基本無料ゲームは、過去のダウンロード数が多すぎてサービス終了になるのではないか」などだ。

そういった疑問を解消するため、Unity公式フォーラム公式DiscordでのUnity担当者回答をまとめたのでここにまとめておく。
以下の回答の後、さらに公式で回答まとめが記されたので、赤字で矛盾点は追記している。

Q.スマートフォンで何度もダウンロードを繰り返したらダウンロード料が何度もかかるのではないか?(※ソシャゲのリセマラのようなこと)

A.
すでにダウンロードされたAndroidやiOSのモバイルタイトルを再インストールする場合、新規インストールとしてカウントされない。その他のプラットフォームに関しては確認中。
回答まとめによると、再インストールは数にカウントされるとのこと。

Q.すでに1,000万ダウンロードされているゲームは、2024年1月1日になったら一気に請求がやってくるのか?

A.
ダウンロード数は2024日1月1日からカウントされる。過去にさかのぼって請求されない。

Q.ダウンロードの金額が「月額」となっているが、ダウンロード数が閾値を超えたら毎月超えた分のダウンロード料金を払い続けるのか?

A.
1ダウンロードにつき請求は1回だけである。

Q.もしUnity Freeを使用していて、20万米ドルの閾値を超えた場合、これまではチーム全員がProに強制的に移行されチーム1人あたり2,000米ドルを払わされた。しかし、今後は閾値を超えた販売ごとに0.2米ドル支払うだけで済むのか?それであれば、素晴らしい変更だ。

A.
イエス。

Q.海賊版などがダウンロードされたとき、どのようにカウントするのか?

A.
1.我々にはAdsテクノロジーで培った不正検知ノウハウがあり、それを利用して対策する(Discord)
2.わからないので情報を待ってほしい(公式フォーラム)

Q.ダウンロード数と売上はどのように計算されるのか。1つの会社が2本のゲームを出したら合算されるのか?

A.
ゲーム / プロジェクト単位で別個に計算する。儲かって閾値を超えているゲームとそうでないゲームがあれば、儲かって閾値を超えたゲームだけに請求が行われる。

Q.ハイパーカジュアルゲームに関しては、1ダウンロード当たり0.02ドルですら大きなインパクトがある。そういった商売をつぶしたいのか。

A.
Unity Gaming Servicesやモバイル広告対応ゲーム向けのUnity LevelPlayメディエーションなど、エディター以外のUnityサービスの採用に応じて、Unity Runtime Feeのクレジットを受けることができる。

以上。


公式Twitterでは、これが値上げであることを認め、急な発表であったことを謝罪しているので合わせてみてみるといいだろう。

現在のところ、Unityのコミュニティ担当者も多くの情報を知らされておらず、Discordとフォーラムで回答が異なるなど現場でも混乱があるようだ。

さて、開発者への影響はどうなのだろうか。
ゲームキャストが独自に聞いたところ、いくつかの感想、上記の情報を踏まえた不安の声が寄せられた。

・基本的には閾値にかかる人は少ないし、収益的に閾値にかかっていれば問題なく払えるはずなので、あまり影響はないのではないか。むしろ、有料ゲームはこれまでより安く作れるかもしれない。
・Unityのダウンロード数計測が正確なのか不安がある。
・ダウンロードし放題のサービス(Apple ArcadeやXbox Game Pass、PlayStation Plusなど)に金がかかるのではないか。
・Unityの広告機能であるUnity LevelPlayメディエーションを利用すれば安くなるというが、そもそもUnity LevelPlayは機能が弱く、全面的に採用できない。他社の方が広告単価が高くなる可能性もあり、単純に厳しいのではないか。

などなど。
現在、Unity側でも不安を解消できていない問題は認識されており、Unityのコミュニティ担当者が回答を集め、全解答者が同じ返答を返せるように準備している(つまり、コミュニティ担当者まで情報が知らされていないほど急なことだったのだと想像される)とのことなので、今後疑問は整理されていくだろう。

しばらく、この問題は見守るしかなさそうだ。

関連リンク:
Unity のプランの価格設定とパッケージの更新 | Unity Blog